プレミアムリッチだけでなく、ノートPCの定番を目指す
今回発表した個人向けPCの「VAIO F16」および「VAIO F14」、法人向けPCの「VAIO Pro BM」および「VAIO Pro BK」で目指したのは「Windows PCの定番」である。
山野社長は「目指したのは、PCに本当に必要な性能を研ぎ澄ましたWindowsの定番PC。より多くのお客様に愛される定番PCを作りたい。そのためには、必要な性能や機能を詰め込んだ良いPCであるだけではいけない。愛着を持って、気持ちよく、長く使えるものが、定番の条件になる」とする。
山野社長は、アップルには「定番」として、MacBook Airが存在するが、Windows 11の環境では、PCメーカー各社が様々な商品を発売し、突出して売れているPCがないと指摘する。「一般ユーザーは、理解できないスペック表とにらめっこしても、どのPCを選んだらいいのかを判断することが難しい。普通にPCを使いたい人にとって、普通に長く使える良い商品や、これを選んでおけば間違いないという定番をつくりたいと思った」とする。
そして、定番を実現するには、手に取りやすい価格で提供することも必要だとする。
VAIO 開発本部プロダクトセンター長の黒崎大輔氏は、「新製品は『VAIOが作った割には、普通のPCだね』ときっと言われるだろう。だが、それはVAIOにとって誉め言葉である。VAIOは、最高といわれる『普通のPC』に挑んだ。スペック表だけを見れば、普通に見えるPCかもしれないが、思考の末の研ぎ澄まされた価値が入っているPCを作り上げた」と自信をみせた。
定番と言っても凡庸なPCではない
VAIOが作る「定番」には、同社製品が持つ3つの本質的価値を盛り込んでいるという。
それは「カッコイイ(Inspiring)」、「カシコイ(Ingenious)」、「ホンモノ(Genuine)」の3つだ。
「カッコイイ」では、「VAIOが格好いいと言うお客様が多いが、これは、見た目のデザインだけでなく、ブランドの歴史や機能性を含めた全体の印象によって生まれるものである」(VAIOの山野社長)とし、「カッコイイの英語の表現に、StylishやCoolではなく、Inspiringを用いたのは、ワクワクする、心が動くいったニュアンスを込め、これをグローバルのお客様にも伝えたいという狙いがあったため」とする。
2つめの「カシコイ」では、「PCは人間の能力を飛躍的に高めてくれる道具である。擬人化すると人生の相棒ともいえる。相棒といることが快く感じるような賢さが商品の随所に詰まっている必要がある」と説明する。ここでは、具体的な例として、CPUのパフォーマンスを最大限に引き上げるための放熱設計や、オンライン会議などで利用する際に、PCの前にいる人の声以外の音を除去できるように精密にチューニングしたAIノイズキャンセリング機能などをあげた。「PCを使いやすくするちょっとした工夫が散りばめられているのがVAIOの特徴である」と語る。
カシコイという表現にはSmartという英語が用いられることが多いが、あえてIngeniousとしたのは、「創意工夫に富む」、「独創的な」という意味が込められているからだという。
そして、3つめの「ホンモノ」では「まがい物ではなく、高い質感や品位を持つこと、長く使っても価値が減らないことを意味している」という。
ここでは、VAIOのパームレストが長年使用しても、プラスチックのようなテカリが目立つことはなく、美しい佇まいが変わらないこと、キートップは長年使っても文字が剥げることがないといった事例をあげながら、「確かな設計品質と、安曇野FINISHに裏づけられた製造品質により、丹精を込めた逸品に仕上げているからこそ、VAIOは、ホンモノを実現できる」と語る。ホンモノについては、英語でGenuineと表現。「神聖な、純粋なといったニュアンスがあり、世界で唯一無二のホンモンを届ける存在であることを示した」という。
こうした3つの要素を盛り込むことにより、常に時代の一歩先を行く「定番」を実現できるとする。
「これらの価値は、言葉で表現すると薄っぺらいものになるが、実機を使ってもらえば、この価値に共感してもらえる。史上最軽量でもなければ、驚くような斬新な機能が盛り込まれたものでもない。平凡に見える商品だが、そこに非凡さを埋め込み、手の届きやすい価格帯で届ける」とする。
「これまでのプレミアムニッチ路線の商品を開発する以上に困難なタスクだった。だが、PCに対して、スペックだけではない価値を追い続けてきたVAIOだからこそ、新たな定番を作ることができる」と語る。
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