ホワイトボックスとの組み合わせでTCOを2割削減可能、NTT Comが商用ネットワークに第一号導入
NTTがネットワークOS「Beluganos」製品化、オープンなインフラ実現目指す
2023年03月29日 07時00分更新
NTTは2023年3月28日、同社が開発したホワイトボックス装置対応ネットワークOS「Beluganos(ベルガノス)」の製品化を発表した。データセンター事業者や通信事業者などを主要ターゲットに、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)を通じて3月31日から販売を開始する。
今回の発表では、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が、自社の商用ネットワークにBeluganosを搭載したホワイトボックス装置を導入し、運用を開始することも明らかになっている。今後もオープンなネットワークインフラの普及に向けて、継続的な開発と進化を進めるとしている。
TCOを2割削減可能、ネットワーク装置の投資効率課題を解消
Beluganosは、NTTが研究開発してきた技術に、IP Infusionの技術を組み合わせて完成させたネットワークOSだ。ホワイトボックス装置にBeluganosをインストールすることで、L2/L3レイヤのルーターやスイッチ機器として動作する。IP Infusionは、NTTグループが構想する次世代コミュニケーション基盤「IOWN」の標準化団体「IOWN Global Forum」に参加している。
Beluganosの特徴は、ハードウェアとソフトウェアの分離を図り、任意のハードウェアを選択可能にしたことで、従来のハード/ソフト一体型ネットワーク専用装置における投資効率の課題を解決できることだ。NTTによれば、Beluganos搭載のホワイトボックス装置は、従来の専用装置と比較してTCO(装置費用や保守などのサービス費用を含む合計コスト)がおよそ2割削減できるという。
「ハードウェアとソフトウェアの分離により、コスト構造がつまびらかにされる。かつての交換機が、サーバー化されたことでオーブン化/汎用化し、コストダウンが進んだのと同じことが起こる」(NTTアドバンステクノロジ IOWNイノベーション事業本部 副ビジネスユニット長の小川光康氏)
またBeluganosでは、ネットワーク障害への迅速な対応を支援する保守/運用/監視機能を強化しており、通信事業者やデータセンター事業者の保守の高度化、運用品質の向上を実現するという。ここではNTTグループにおけるネットワーク運用のノウハウを生かして機能を強化し、実際に自ら利用して必要な機能を追加する取り組みも行われている。
NTT技術企画部門 統括部長の友近剛史氏は、従来のネットワークインフラでは垂直統合型の専用装置を使うケースがほとんどであり、「ベンダー依存度が高いために、軽微な修正や機能開発であっても時間とコストを要していた」と課題を指摘する。
「NTTではオープンで、ハードウェアとソフトウェアが分離されたネットワークインフラの実現を目指している。さまざまなネットワークOSがさまざまなオープンハードウェア(ホワイトボックス装置)上で動作し、オープンなインタフェースを持つことで、運用システムやシステム運用者を共通化することができる。利用者にとっては、用途に応じて高性能なホワイトボックス、安価なホワイトボックスなどと選択肢が広がり、柔軟なネットワークインフラを実現できる」(友近氏)
NTT-ATが販売とサポート、NTT Comでは商用ネットワークに採用
Beluganosの販売およびサポートはNTT-ATが行う。販売ターゲットはデータセンター事業者、通信事業者、インターネットサービスプロバイダー(ISP)などで、技術問い合わせやトラブル解析、復旧支援といった保守サービスもNTT-ATがワンストップで提供する。また海外での販売展開はIP Infusionの販路を活用する。
NTT-ATの小川氏は、まずはEdgecore Networks製のホワイトボックス装置にBeluganosを組み合わせて販売を開始すると説明した。他社製ホワイトボックス装置への搭載も順次検証していくという。
また今回、NTT Comが商用ネットワーク基盤へのBeluganos導入決定を発表している。Beluganosを採用した商用ネットワークの第一号として3月31日から運用を開始し、運用開始後も継続的なフィードバックでBeluganosの品質向上に貢献するという。
NTT ComではこれまでもBeluganosをネットワークサービスに導入することを想定した検証を行っており、そこで高い信頼性が確認できたことから導入を決定した。「商用ネットワーク基盤を拡張するタイミングで、他社製品を置き換える」(NTTコミュニケーションズ クラウド&ネットワークサービス部 部門長の中西和也氏)としている。
次世代コミュニケーション基盤「IOWN」との連携も
NTTグループでは今後、Beluganos搭載ホワイトボックス装置の活用やパートナー共創を通じてオープンイノベーションを推進していく方針。ここでは自らのネットワークを変革する活動と、顧客ネットワークを高度化する活動の両方に取り組むという。それに加えて、Beluganosの継続的な進化を目指してDevOps体制を強化し、開発サイクルを持続的に回していくとした。
また、将来の光電融合デバイス搭載の低消費電力サーバーの提供に向けてグローバルパートナー各社との連携を推進し、IOWNサービスやIOWNプロダクトの開発と社会実装を進める。IOWN構想のなかでは、さまざまなICTリソースを最適化制御する「コグニティブ・ファウンデーション」に取り組んでいるが、Beluganosにおいてもコントローラーから操作しやすい環境の構築や、迅速なリソースの配備、構成の最適化などを図るという。
NTTネットワークイノベーションセンタ PMの大西浩行氏は、BeluganosとIOWN構想の光電融合デバイス技術を活用することで、ネットワークの省電力化と高速化を推進できると説明した。
「IOWN構想では、2026年には光電融合デバイスを搭載した低消費電力サーバーを商用化する予定となっている。そのタイミングをにらみながら、Beluganosと光電融合デバイス技術の活用を進めていく。BeluganosがAPN(オールフォトニクスネットワーク)に直接つながるインターフェースを持つことで、複数のデータセンターにおいて、APNとBeluganosをインターフェースとして接続し、利用することができる」(大西氏)