98%の企業がマルチクラウドを使用/使用予定、その目的や課題についても浮き彫りに
「マルチクラウドは“必須の戦略”になった」オラクルが調査レポート発表
2023年03月28日 07時00分更新
日本オラクルは2023年3月23日、オラクルがグローバルで実施した、企業におけるマルチクラウドの利用状況に関する調査結果説明会を開催した。調査対象企業の98%が複数プロバイダーのクラウドサービス(IaaS/PaaS)を利用/予定していたほか、83%の企業がマルチクラウド相互接続を導入済み/予定、97%の企業がクラウド管理プラットフォームを使用中/予定であることなどが明らかになっている。
説明会では、上記調査結果の詳細やグローバルと日本との結果比較のほか、オラクルが進める「分散クラウド」戦略やソリューションなどが紹介された。
マルチクラウド採用の理由、日本は「コスト」「データ主権」など
「Multicloud in The Mainstream(主流となるマルチクラウド)」調査は、2022年第3四半期に、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋、中東、ラテンアメリカの企業(北米は正社員1000名以上、その他地域は500名以上の企業)に所属する回答者1500名を対象に、業種を問わず実施されたもの。日本の回答者が約3%含まれる。オラクルの委託で451 Researchが実施した。
説明会では日本オラクル 事業戦略統括 事業開発本部 本部長の佐藤裕之氏が、グローバルと日本の結果も比較しながら説明した。
まず「使用している/使用予定のパブリッククラウド(IaaS/PaaS)プロバイダー数」については、「1社のみ」はわずか2%にとどまり、「2~3社」が67%、「4~10社」が28%、「10社以上」が3%と、ほぼすべての企業がマルチクラウドを使用/予定していることがわかった。日本でもほぼ同様で、98%がマルチクラウドを使用/予定していた。
ちなみにSaaSについても同様で、グローバルでは96%、日本では92%が複数のクラウドプロバイダーを使用/予定している。
複数のパブリッククラウドを使う理由は何か。グローバル全体では「データ主権と場所」(41%)、「コスト最適化」(40%)、「ビジネスの俊敏性とイノベーション」(30%)という回答がトップ3だが、国別に比較するとその順位には違いがある。日本では「コスト最適化」(44%)がトップで、次が「データ主権と場所」(33%)、そして「ビジネスの俊敏性とイノベーション」「ベストオブブリードのクラウド活用」「規制対応」(いずれも28%)と続く。
「実際にお客様とお話する中でも、やはりコスト(コスト削減)がクラウド利用全体のモチベーションとして高い。(今回の調査からは)マルチクラウドを使うと言う意味でも、非常にニーズが高いことが見て取れる」(佐藤氏)
マルチクラウドの課題、プライマリ/セカンダリクラウドの使い分けは?
それでは、企業はマルチクラウド活用で直面する/しうる課題は何だと考えているのか。グローバルの結果では「クラウド・プロバイダ管理」(34%)、「ネットワークや相互接続」(30%)、「データ・ガバナンスの課題」(24%)だった。日本では「クラウド間のセキュリティ担保」(39%)という回答が多くトップであること、コスト削減を目的としたマルチクラウド利用が多い反面で「コスト最適化や管理」(28%)に課題を感じる企業が比較的多いことも特筆すべき点だろう。
プライマリクラウド/セカンダリクラウドの用途(ワークロード)の違いについては、業界によっては大きな差が出たものもある。金融サービス業においては「データ処理、分析、BI」がプライマリ82%/セカンダリ30%と大きな違いが出た。通信業でも同様に「データ処理、分析、BI」がプライマリ52%/セカンダリ23%となっている。
「この結果からもうひとつ言えるのは、セカンダリクラウドにも重要なシステムが乗っていることが多いということ。“セカンダリ=2番目”だから重要なシステムではないという状況ではなく、ユーザーはプライマリとセカンダリをうまく使う分けて、両方とも重要なシステムを扱っているというケースが結構ある」(佐藤氏)
複数のクラウドを統合管理できる管理プラットフォームについては、グローバルで56%(日本は59%)が「現在使用中」であり、「今後2年以内に使用予定」を含めると97%(日本も97%)が使用の意向を示している。管理プラットフォームへの期待としては、グローバルでは「クラウドのコスト最適化」(33%)、日本では「一貫したネットワーク運用とポリシー」(38%)がそれぞれトップだった。
パブリッククラウド間の相互接続については、グローバルで40%(日本は49%)が「現在使用中」、83%(日本は85%)が「2年以内に使用予定」としている。
同調査ではハイブリッドクラウドについても質問している。まず、オンプレミスのプライベートクラウドについては、グローバルで45%(日本は25%)が「現在使用中」、2年以内の使用予定を含めると87%(日本は78%)だった。
またハイブリッドクラウドを使用する理由については、グローバルでは「コスト最適化」(54%)、「ワークロード移行」(38%)、「クラウドバースト」(37%)がトップ3だった。日本もトップ3は同じだが、それぞれ50%と需要が高かった。
「オラクル側から“ドアを開ける”」オープンなマルチクラウド戦略
日本オラクル 常務執行役員 クラウド事業統括の竹爪慎治氏は、今回の調査結果をふまえてオラクルのマルチクラウド戦略やソリューションを紹介した。
オラクルではOracle Cloud Infrastructure(OCI)において「分散クラウド」の戦略をとっている。これはパブリッククラウドからデータセンターまで、あらゆる場所にOCIを展開できるようにする戦略だ。
それと同時に「Oracle Database Service for Azure」や「Oracle MySQL Heatwave on AWS」、「OCI Interconnect with Azure」といった他社パブリッククラウドとの連携サービスを展開し、「オープンなマルチクラウドエコシステム」も構築していると竹爪氏は説明する。
「オラクルというと“一社ですべてを提供する”アプローチを想像されるかもしれないが、クラウド領域においてはスタンスを変えており、他社との連携とエコシステム構築に力を入れている。まずわれわれのほうからオラクルのサービスを他社クラウドで使えるようにしていく、われわれのほうから“ドアを開ける”という、従来とは違ったアプローチだ」(竹爪氏)
こうした戦略の背景には、今回の調査でも明らかになったマルチクラウド活用への強いニーズがある。竹爪氏は「マルチクラウドは新たな潮流というよりも『必須の戦略』になっている」と述べたうえで、マルチクラウド活用をはばむ課題を解決するソリューションの提供は、オラクル一社だけでなく他社との連携も重要だと説明した。
「特に日本市場を考えると、お客様のもとで最適なインプリメンテーションを実現するパートナーとのエコシステム構築も重要だと考えている」(竹爪氏)
最後に竹爪氏は、マルチクラウドへの強い顧客ニーズに応えるソリューションを展開していくことで、3つの価値を提供していきたいとまとめた。
「まずは、お客様にとって最適なクラウドベンダーとの組み合わせ、連携サービスの提供による『ITコストの最適化』。2つめは、マルチクラウドの中で統一化された『シームレスなビジネスプラットフォーム』。そして3つめは『クラウドにおけるデータドリブンな業務改善支援、成長領域』。今後も顧客ニーズをきちんと把握しながら、戦略を実行するソリューションの拡大、あるいはエコシステム構築に取り組んでいく」(竹爪氏)