インテルとゴードン&ベティ・ムーア財団は3月24日、同社の共同創業者であるゴードン・ムーア氏が94歳で他界したことを発表した。ハワイの自宅で家族に囲まれながら穏やかに息を引き取ったという。
インテル起業の後は慈善事業にも注力
ムーア氏は、1968年7月に長年の同僚であったロバート・ノイス氏とともにインテル社を設立。1979年に取締役兼CEOに就任。1987年に退任してからは会長、名誉会長と歴任し2006年に退任した。
彼は生涯、環境保全、科学、患者ケアといった慈善事業にも注力し、2000年には72年間連れ添った妻とともに、ゴードン&ベティ・ムーア財団を設立。51億ドル以上を慈善事業に寄付している。
財団理事長のハーヴェイ・ファインバーグ氏は「ゴードンのビジョンと彼のライフワークは、私たちの日常生活を形作る驚異的な革新と技術開発を可能にしました。しかし、こうした歴史的な功績は、彼の遺産の一部に過ぎません。彼とベティの慈善家としての寛大さは、今後何世代にもわたって世界を形作っていくことでしょう」と故人を悼んだ。
「ムーアの法則」はAIにも適用できるか?
ムーア氏は1965年、「半導体のトランジスタ集積率は18ヵ月で2倍になる(10年後に24ヵ月に修正)」と自身の経験を元に予測したことで有名であり、この予測は「ムーアの法則」として広く知られるようになった。
ムーア氏は2008年のインタビューで、「私がやろうとしたのは、より多くのものをチップに搭載することですべての電子機器をより安くすることができるというメッセージを伝えることだけだった」と語っている。
チップ技術が指数関数的に成長することで、電子機器がより速く、小さく、安価になるという考え方は半導体産業の原動力となり、何百万もの日用品にチップが使用される道を開いた。
とはいえ、2010年代後半から半導体の開発ペースは落ちはじめており、2017年にはNVIDIAのCEOジェン・スン・フアン氏が「ムーアの法則は終わった」と発言している。
だが、2023年現在も世界中のメーカーが2nm製品の量産に血道を上げているように、微細化のペースは落ちつつあるが止まっているわけではない。
また、注目が集まるAI分野ではムーアの法則の5倍から100倍のペースで進歩しているという説もある。
AI分野の進歩はアルゴリズムの改善やデータ量の増加といったコンピューターの性能とは別の要因もあるからだ。
とは言え、集積回路の性能(特にGPU性能)向上がAI技術の進歩に大きく寄与していることは間違いないだろう。