大阪大学などの研究チームは、別の霊長類個体のiPS細胞から作った軟骨を、膝関節軟骨を欠損した霊長類動物モデルに移植することで、関節軟骨を再生できることを明らかにした。関節軟骨損傷・変性に対し、関節機能の回復と痛みの軽減をもたらす新しい再生治療の開発に貢献することが期待される。
大阪大学などの研究チームは、別の霊長類個体のiPS細胞から作った軟骨を、膝関節軟骨を欠損した霊長類動物モデルに移植することで、関節軟骨を再生できることを明らかにした。関節軟骨損傷・変性に対し、関節機能の回復と痛みの軽減をもたらす新しい再生治療の開発に貢献することが期待される。 同研究チームでは、iPS細胞から軟骨細胞だけでなく軟骨組織までを作り、それを移植して関節軟骨を置き換える新しい再生治療方法を開発している。今回は、同種移植が可能かを調べるために、ヒトと免疫系が似ているサルを用いて同種iPS細胞由来軟骨を膝関節の軟骨内欠損に移植。少なくとも4カ月のあいだ生着して再生組織を直接構成し、免疫反応が起こらないことを確認した。次に、移植後のiPS細胞由来軟骨を採取して解析し、移植軟骨が関節軟骨として働いていることを示唆する結果を得た。 関節軟骨の損傷・変性は、関節痛の原因となる。傷んだ軟骨は自然には治らないため、再生治療が期待されているが、移植して関節軟骨を置き換える、すなわち移植物が生着して関節軟骨を直接構築することを示した治療方法はなかった。また、他人の軟骨を移植したときに免疫拒絶が起こるかについてもよくわかっていなかった。 研究成果は、英国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、2023年2月20日付けで公開された。(中條)