ネットワーク/IT運用管理の自律化/効率化、その先の新たな付加価値創出も狙う
アライドテレシス、SDN+AI/MLのソリューション「AMF Plus」を発表
2023年02月06日 07時00分更新
アライドテレシスは2023年2月3日、独自のSDN(Software-Defined Network)技術にAI/機械学習(AI/ML)技術を付加して提供するネットワーク管理の新ソリューション「AMF Plus」を発表した。ネットワーク経由で収集するデバイスの稼働データやログを活用して、自律的なIT/ネットワーク管理だけでなく、「医療機器の効率的な資産管理」のような業種ソリューションも実現していくという。
AI/機械学習技術の適用でネットワーク運用の自動化/自律化を進める
アライドテレシスでは、およそ10年前から独自のSDNフレームワーク「AMF(Autonomous Management Framework)」を展開し、AMFをベースとした「AMF-SEC」(セキュリティ)、「AMF-WAN」(WAN)、「Vista Manager」(ネットワーク統合管理)などのソリューションを開発することで、他社混在(ヘテロジニアス)環境を含めたITインフラ全体の可視化や統合管理、セキュリティ、障害時の自動復旧といった機能を提供してきた。
同社 取締役専務の佐藤朝紀氏は、現在までにグローバルでおよそ2500社、日本国内で1500社がAMFを導入しており、国内では特に医療機関(500組織)における導入が多いと紹介する。
今回発表のAMF Plusは、このAMFにAI/ML技術を追加し、ソリューションの幅を拡大するものとなる。既存のアライドテレシス製ネットワーク機器をそのまま利用し(ファームウェア更新が必要)、ネットワークの代表機器へのAMF Plusマスターライセンス導入、Vista Manager EXの導入で利用できるようになる。
同社 上級執行役員 Global Product Marketing本部 本部長の佐藤誠一郎氏は、AMF Plusの目指すテーマについて、「Unlimited Value Innovation」「Beyond Ethernet Limitation」「Intent-Based User Experience」の3つだと述べる。
まずは、比較的理解しやすい2つめの「Beyond Ethernet Limitation」から説明する。IT/ネットワーク運用に関わるこれは、予兆検知型のサポートや非定型セキュリティなど、従来の運用業務における課題をAI/ML技術の適用で克服するというものだ。
佐藤誠一郎氏は、AMF Plusでは他社のサーバーやストレージ機器も含めてネットワーク経由で稼働情報を収集し、Vista Manager EXのダッシュボードで可視化をしたり、CPU使用率やメモリ使用量といったデータの推移から障害発生リスクを事前に通知する予兆検知をしたりできると説明する。「そして障害発生前に部品交換などができれば、ダウンタイムはゼロに抑えられる」(同氏)。
また現在研究開発中のものとして、Ethernetのセキュリティソリューションも紹介した。従来は事前登録済みの機器のみEthernetへの接続を許可するかたちが主流だったが、こちらも運用には手間がかかる。そこで、あらゆるデバイスの接続を許可しつつ、そのアクセス先を自律的に制限することでセキュリティを高める、という新たな方式を考えているという。「たとえば、MACアドレスから接続したデバイスが『医療機器』だと判断したら、ネットワークを制御して(医療システムの)コントローラーへの接続だけ権限を与えるような仕組み」(同氏)。
3つめのテーマ「Intent-Based User Experience」は、こうしたネットワーク運用を誰もができるようにAI/MLで支援し、一部は自動化/自律化(代行)するというものだ。たとえば、アクセスポリシーやユーザーの“やりたいこと(意志=Intent)”をネットワーク単位で設定することで、設定が必要なネットワーク機器(新規接続機器も含む)への自動設定を行うスマートACLや、ネットワーク全体をひとつのキューとして仮想的に統合し、キューの消費率から全体の優先制御を最適化するインテントベースQoSなどの機能が紹介された。
アライドテレシス以外の機器でも高度な運用管理ソリューションを計画
AMFがネットワークから収集できるデータは、アライドテレシス製のネットワーク機器やサーバー/ストレージといった特定のIT機器に関するものだけではない。多様かつ大量のデータをVista Manager EXで蓄積/マッチングし、AI/ML技術も用いて分析することで、ネットワーク運用の枠を超えた新たな価値を創出する――。それがAMF Plusが掲げる1つめのテーマ「Unlimited Value Innovation」である。
具体例として佐藤誠一郎氏は、医療現場の医療機器管理におけるいくつかの課題と、AMF Plusを介して実現可能ないくつかのソリューションを紹介した。
たとえば、シリンジポンプ(点滴ポンプ)が内蔵する傾きセンサーからは、ネットワーク経由で「患者(ポンプ)が転倒した」というデータを取得できる。ただし、これまでそのデータはシリンジポンプの管理システムには通知されていたものの、ナースコールのシステムとは連携されていなかった。AMF Plusを介してこれらを連携させることで、看護師がすぐに駆けつけられるソリューションとなる。
ほかの例としては、電子カルテのデータから入院患者のリハビリ予定を検出し、時間になると医療ベッドを自動操作して患者自身でリハビリに行くよう促す、あるいは医療機器の位置情報をWi-Fiから割り出して資産管理データベースに登録し、機器の稼働率向上につなげる、といったことが考えられるという。医療現場はマルチベンダー環境であるケースが多いが、そうしたデータをAMF Plusがマッチングさせることで新たなソリューションにつなげていく。
別の例として論理/物理が融合したセキュリティソリューションも紹介した。たとえば自治体が持つ複数のシステム間を連携させ、避難情報が出たら防災用フリーWi-Fiを稼働させる、フリーWi-Fiの接続時には避難所の掲示板情報をWeb表示する、防災放送を通じても住民に伝えるといった、一連の対応を自動化/効率化できるのではないかとした。
こうした取り組みは、今後各デバイスメーカーおよび各業界に強いSIパートナーなどと協調しながら展開していくと説明した。
アライドテレシスでは、AMF Plusの販売目標において「非AMFユーザーの取り込み」「他社製品の管理運用も含めた新たな付加価値創出と新規市場/ユーザー獲得」を掲げ、2028年までにAMF/AMF Plusの導入件数を現在の1500件から4500件まで伸ばし、アライドテレシスユーザー中の導入率を約60%まで引き上げたいとしている。