展示会ビジネスのチャンスが見出される
そんなVketにビジネスチャンスを見つけたのが現HIKKY代表の船越靖さん。企業向けブースを出せばスポンサー料をもらえて、展示会ビジネスとしてやっていけるんじゃないかということで、第2回からはHIKKY社がVketを運営するようになりました。
そうして「一般ブース」「企業ブース」という形でワールドを分けた結果、どちらも同じようにブーストして成長が続き、発展することとなりました。現在では、一般ブースでは1ブースあたり3300円の出展料を、企業ブースでは規定の出展料を取る形で運営されています。そして、運営するVRChatには、HIKKYから商業イベントを開催するためのライセンス料を支払う形で運営されています。
その後、企業ブース向けにVket2021以降に導入したのが、実際の都市をモデルにしたワールド「パラリアル」というコンセプトでした。これは「パラレルワールド(並行世界)」「リアル(現実世界)」を合わせた造語で、「パラリアルワールドプロジェクト」として全国100都市を作ろうという盛大な計画が立ち上がっています。
パラリアルは、現実都市を参考にすることによって、メタバースに関心がない人にもコンセプトをわかりやすく伝えようことで作られました。たとえば「パラリアル秋葉原」を作ると、企業側は「秋葉原のどこに出展できる」というイメージがしやすいというわけです。これまでに東京、大阪、秋葉原などを作り、Vket 2022 Winterでは名古屋、札幌、そしてパリが展開されました。
企業にとってはPRと小売りの入り口に
企業にとって、Vketへの着目点は何でしょうか。1つはやはりPRです。VRChatをやっているユーザーは20〜30代前半までが多い傾向があるため、そういう層で、かつITに対して感度の高い層に向けてPRできるというわけです。
今回であれば、たとえばJR東海さんがリニア新幹線をバーチャル展示されていました。リニア新幹線のL0系改良型試験車に乗ってみると「リニアは新幹線に比べて、車両はちょっと小さいんだな」とか、「席数も新幹線の1列5席に対して、4席なのか」といった実物感が伝わります。
面白いのは、たとえば5回連続出展されている百貨店の松坂屋さん。年末商戦の食べ物を販売していて、直接注文できるようになっているんです。これによって、Vket 2022 Summerのときから面白いことが起きるようになりました。あるユーザーさんが松坂屋さんブースの前で“集会”をして、みんなで注文した食べ物を「その場で食べよう会」というものを開いたんです。普通の百貨店ではありえない、小売店の場がコミュニティへと変化していく、メタバースならでは感があったと思います。
もうひとつ親和性が高いのはアバターではない現実の“服”ですね。やはり5回連続出店されているBEAMSさんは、比較的フォーマルなデザインのアバターと、実際の服を販売していますが、Vket期間中にはかなりの売上が出ているという話です。
このように、展示会とコミケが合体したような状況になっているのがVketです。

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