このページの本文へ

2023年度事業戦略説明、国内売上の2割超まで成長したGreenLakeの新たな方向性を紹介

「HPE GreenLakeの“as a Service変革”は第2章へ」HPE望月社長

2022年12月12日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は2022年12月9日、同社社長の望月弘一氏が出席して2023年度(2022年11月~2023年10月期)の事業戦略説明会を開催した。日本のHPEにおいては「HPE GreenLake」がすでに売上の20%超を占めるようになっており、次なる「第2章」の方向性も示した。

日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏。「エッジ/クラウド/データ」という3つのメガトレンドに対応する2023年度の事業戦略を紹介した

過去最高の業績の大きな要因は「一貫した戦略の実践」

 望月氏はまず冒頭、HPE本社が発表した最新の業績(2022年度第4四半期)が過去最高の業績を達成したと報告した。同四半期において、売上高は前年同期比12%増/前四半期比15%増の79億ドル、営業利益率は前年同期比1.8ポイント増/前四半期比1.0ポイント増の11.5%と好調だった。ちなみに、同四半期のHPE GreenLakeによるas a Service受注総額は前年同期比で33%増、2022年度通年では68%の増加。

 望月氏は「こうした好業績の大きな要因が、HPEの一貫した戦略の実践だ」と説明する。

 HPEでは2015年の分社化以後、2016年からはハイブリッドIT戦略を、2019年からは「Edge-to-Cloud(エッジからクラウドまで)のすべてをas a Service化する」GreenLake戦略をとってきた。そして今年、2022年には新たに「データファーストモダナイゼーション」を掲げ、「GreenLake Edge-to-Cloud Platform」を中核に据えてエッジからクラウドまでのITとデータを結合させ、顧客におけるDXの取り組みに貢献していく方針だ。

HPEが掲げる戦略の進化

 2023年度の国内事業においても、前年度と同じく「Edge-to-Cloud Company」という事業方針を継続する。「ただし、それをより拡大させ、進化させながら展開していく」と望月氏は語る。

 より具体的には「エッジ/クラウド/データ」という3つの世界的なITメガトレンド、そして「サステナビリティ」という社会的要請に沿った事業活動を展開していく計画だという。望月氏は、今後追加していく新たなソリューションとして、エッジ領域ではデータセンタースイッチングとセキュリティ、クラウド領域ではクラウドマネジメント、データ領域ではデータプロテクションを挙げ、市場の成長とソリューション拡大により、2025年には2022年比でそれぞれ1.6倍~2.1倍規模の市場にアクセスできるようになると説明した。

調査会社による2022年と2025年の各領域市場規模。新たなソリューションを追加することで、各領域の売上を大きく伸ばせるとした

GreenLakeの「第2章」でどのように変わるのか

 望月氏が述べた「Edge-to-Cloud Companyとしてのさらなる拡大と加速」は、HPE GreenLakeの強化と拡大を通じて実現される。望月氏は、GreenLakeによる“as a Serviceトランスフォーメーション”はこれから「第2章」に入っていくと説明する。具体的に、これまでとどう変わると考えているのか。

GreenLakeによる“as a Serviceトランスフォーメーション”は新たな段階に進むと説明

 「これまで(第1章)は『Everything as a Serviceの実現』を掲げてきた。GreenLakeによって(従量課金型ITの実現で)CapExをOpExに変え、過剰投資を抑える、煩雑なテクノロジーリフレッシュの作業からお客様を解放するといったことに注力した。また、GreenLakeの上で1つでも多くのワークロードタイプを稼働させられるようにサービスメニューを拡充し、ハイブリッド/マルチクラウド管理のためのさまざまなツール、ソリューション(GreenLake Edge-to-Cloud Platformなど)も提供してきた」

 ただしこれまでは、HPEが顧客企業のクラウド化を「いわばオーダーメイドで」(望月氏)支援するようなものだった。これに対して“第2章”では、よりクラウド体験に近い、顧客自身がセルフサービス型で利用できる機能を強化していくという。そのための具体的な取り組みとして、望月氏はセルフサービス機能の強化、対応ワークロードの拡充、パートナーエコシステムの拡充を挙げる。

 具体的には、従来の「GreenLake Central」「Aruba Central」「Data Services Cloud Console」をGreenLake Platformに統合して、よりわかりやすく、使いやすくする。さらに、GreenLake Platform上でサービスとして展開可能なワークロードの種類を、現在の70からさらに拡大していくという。

 「たとえば今年10月にはエッジ、オンプレミス、パブリッククラウドにまたがるデータプロテクションサービスを発表した。ほかにもAmazonのEKS(Elastic Kubernetes Service)のサポート、自動化という観点でPuppetやChefとの連携強化も予定している。こうしたワークロードをさらに拡充し、顧客にとって使い勝手の良いプラットフォームに進化させていきたい」

GreenLake Platformには、多様なワークロードをas a Serviceで実行可能にする管理機能群(サービス、アカウント、サブスクリプション、認証などの管理)が用意されている

 パートナーエコシステムの拡充については、パートナーそれぞれが持つ独自ソリューションをGreenLake Platformに載せ、サービスとして提供、展開したいというニーズが高まっているという。そのために、オーケーストレーション、メータリング、ビリング、セキュリティなどの機能を、API経由で活用可能にしていることが強みだと語った。

望月氏はあらためてGreenLakeの特徴と強みを5つ挙げた

ソリューションメニュー拡大、パートナーも“as a Service展開”できる基盤へ

 日本のHPEではすでに売上の20%超をGreenLakeが占めており、この比率はグローバル平均の2倍以上にあたるという。「それだけ日本の顧客からGreenLakeが評価されているという証」だと、望月氏はGreenLakeビジネスの好調さを強調する。

 2022年度には、エッジ領域で5GのOpen RANソリューションや5Gコアスタックの提供、「GreenLake for Aruba」の提供開始、クラウド領域でGreenLake Platformの提供開始、「Google Anthos」とハイパフォーマンスエッジによるIoT向けソリューション開発、データ領域でAI/機械学習ソリューションの「Machine Learning Development System」や「Swarm Learning」の提供開始、などの取り組みを行っている。

 これに続く2023年度の注力活動としては「ソリューションメニューの拡大」「セースルエンゲージメントの変革」「持続可能な社会への貢献」という3つを挙げた。

 このうち2つめの「セールスエンゲージメントの変革」については、顧客の購買特性に合わせて営業体制を変更したという。具体的には顧客を大きく2つのグループ、特定の製品を迅速に調達したい「テクノロジーバイヤー」と、ビジネス課題を共有してソリューションの提案を望む「ソリューションバイヤー」に分類し、それぞれに適した営業体制を構築/強化しているという。

2023年度に取り組む「ソリューションメニューの拡大」「セールスエンゲージメントの変革」の概要

 なお同説明会にはゲストとして伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の田中匡憲氏も出席し、HPE GreenLakeビジネスの現状や今後への期待、CTCにおける取り組みなどを語った。

 田中氏は、GreenLakeというソリューションはいわゆる「攻めのIT活用」と「守りのIT活用」という市場ニーズの両方に対応できると説明。その結果、CTCにおける過去6年間のGreenLakeビジネスの年平均成長率は170%超となっていると紹介した。

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) エンタープライズビジネス企画室 室長の田中匡憲氏

CTCがGreenLakeを推進する理由、および国内製造業での採用事例

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード