実現の課題は組織と人材 DXを進めるべく、今なにをすべきか?
LINE AI、ヤンマー、東芝が考えるDXの形 updataDX22の基調講演レポート
2022年12月02日 09時00分更新
DE、DXの次にあるQXの世界 DXはみんなのもの
DXの次にあるのが、量子によるトランスフォーメーション、いわばQXだ。東芝が標榜するプラットフォームだが、現在は分断されている状態だ。プラットフォーム同士がつながるのが、次の世界に向かう量子のトランスフォーメーションだという。「量子コンピューテインングってなにがすごいんですか? とんでもない空間において、答えを一瞬で導き出せること。詳しいヤツに聞くと、答えがエネルギーの低いところに落ちていく。今のように全部計算しなくとも、水が高いところから低いとところに落ちるように答えが出てくる」と島田氏は表現する。
コンピューティングが扱う計算には、静的な問題と動的な問題の2種類がある。静的な答えがいったん出た答えが変わらないこと、薬品や材料の計算は不変だ。一方で、株価や電力の最適な配分、会話などの動的な問題は、つねに回答が変わる。これを実現するには計算と通信の融合が必要であり、量子による通信の時代が来るという。「インターネットがここまで爆発的になると予想できたでしょうか? われわれは終わった時代の話をいつまでもしていてはならない。次の時代を考えたときに、次にどんなことが起こるのかを考えると、デジタルではなく、量子でデータを転送する時代がくるのであります」と島田氏は呼びかける。
東芝は途中での盗難ができない量子暗号通信システムを2020年にすでに実用化している。これをAPI経由でサービスとして提供するという。そして、どのように使ってよいかわからない量子の世界を切り拓くため、Q-STARコンソーシアムも設立し、IT企業のみならずユーザー企業も63法人が参加している。「まったく違う業界同士が量子技術を介して瞬間的に最適化される。こうしたことが起こりえる時代」(島田氏)に向け、5年後には国民の10%がなんらかの形で量子技術を使うことを提言しているという。
東芝はウイングアーク1stとも協業を進めており、官公庁、製造業、自治体など幅広い分野でinvoiceAgent、MotionBoard、SVFなどの商材を展開しているという。島田氏は「とってもいい会社なので、みなさんももっと使ってあげてください(笑)。人と、地球の、明日のために。ありがとうございます」とまとめた。
島田氏は「昔、自動車ってガソリンのことなんて気にしてなかった。とにかく速ければよかった。でも、オイルショックでそんなことではダメになった。1980年代くらいからは車メーカーが、安全が大事と言い始めた。当時は安全なんて二の次だったけど、今は安全じゃない車なんて誰も乗らない。つまり、個人個人の行動変容や購買行動がわれわれの世界を変えていく。だから、みんなにCO2をどれくらい使っているのか知って欲しい。そうすると、CO2削減の真剣度が根本的に違ってくる」と聴衆にアピール。
従業員へのDXのミッションの浸透度を聞かれた島田氏は、「モットーは『みんなのDX』なんです。デジタル化から逃れられる全人類の中で誰一人いない。だから誰かにやってもらうと思ってはダメ。ほんのわずかでもいい。自分がなんらか違うことをしなければ遅れてしまう。みんながやらないと」と持論を披露した。グリーン、デジタル、プラットフォーム、量子までを包括する島田氏のテクノロジー未来絵巻に、多くの聴衆が酔いしれた。