採用業界/現場を広げる取り組みとして「製品ポートフォリオの拡充を推進」
Dropbox、2023年の戦略と新製品「Capture」「DocSend」を紹介
Dropbox Japanは2022年11月16日、2023年のビジネス戦略記者説明会を開催した。社長の梅田成二氏は、日本市場のビジネスはグローバル平均を大きく上回る成長を見せていると説明し、この1年間に公開した国内の顧客導入事例、他社ツール連携、などを紹介した。2023年はコンプライアンス(ISMAP対応)、製品ポートフォリオ拡充などの取り組みを進めると語る。
また説明会後半では、アジア太平洋・日本地域統括ソリューション本部長の岡崎隆之氏により、10月に提供開始/アップデートを行った「Dropbox Capture」「Dropbox DocSend」「Dropbox Sign(旧称:HelloSign)」の機能紹介や先行導入事例紹介なども行われた。
さまざまな「現場」での利用拡大を目指し、実現した1年
梅田氏はまずグローバルのビジネス概況から説明した。2021年のDropboxの売上高は21億5800万ドル(日本円でおよそ3237億円)と順調に成長している。特に日本市場の売上成長率はグローバル平均よりも高く、さらなる成長が期待されている市場になっているという。
ちなみにDropbox上に保存されているコンテンツ数は8000億ファイルと「昨年の1.5倍に増えた」(梅田氏)。有料ユーザー数(個人向け、法人向けの合算)も1755万に増加している。「Dropboxはコンシューマー利用が多いというイメージが強いが、実はユーザーの80%がお仕事でDropboxを使っている」(梅田氏)。
梅田氏は2021年7月の社長就任後、今年(2022年)の日本法人のテーマとして「現場力上がる、使えるデジタル」を掲げ、業務現場からの支持が高いDropboxの強みをさらに生かすために「現場の声を大切にする」ことを心がけてきたという。
その結果、この1年間で、もともと強みのある建設業界だけでなく他業界でも採用が進んだ、さらに現場での利用方法も高度化したと振り返る。社内や各建設現場のファイルサーバー/NASに分散していた合計140TBのデータをDropboxに一元化した東急建設、海外出張先や自宅などさまざまな場所からBIM、3D CADなど重いデータへの柔軟なアクセスを可能にした隈研吾建築都市設計事務所、ランサムウェア感染検知やそのデータの復元(巻き戻し)などの機能を高く評価したはくばくといった今年発表の事例を紹介した。
また“現場で使いやすいツール”を目指し、外部ツールと連携したソリューションとしての提案にも注力してきた。今年新たに連携したツールとして、Dropboxと社内ファイルサーバー、社内ポータルを横断検索できる「Neuron」、“脱PPAP”メールソリューションの「mxHERO」、Dropboxにアドオンして電帳法保存要件をシンプルに満たす「PlusFind」などを挙げた。
もうひとつ、Dropboxでは新しい働き方として「バーチャルファーストな働き方」を提唱し、自社でも実践している。Dropbox Japan社員に対するアンケートでは、高い総合評価(97%が「肯定的」)が得られていると述べた。
その一方で、同アンケートの「社内外のコミュニケーション」や「健康/体調」といった項目には課題も見られる。そこで、月1回の全員出社日を設けてコミュニケーションを促す、トレーニングジムやアクティビティに通うための手当を支給するなどの制度を拡充したという。
梅田氏は1年目の成果をこのようにまとめたうえで、今後もそれぞれをさらに強化していくとした。なお、DropboxのISMAP対応については現在申請の準備中であり、来年中には取得したいという意向を明らかにしている。
「今後はさらに導入顧客の業種ポートフォリオを拡大していく方針であり、公共系にもぜひとも入っていきたい。加えて、建設業の顧客でも公共系のお仕事をされる場合には(利用するDropboxに)ISMAP対応が強く求められる。現在、本社も含む全社を挙げてISMAP取得の取り組みを進めており、提出する資料の取りまとめは年内に終わる予定だ。監査法人による監査を経て、来年中には何とか取得したいと考えている」(梅田氏)
業務現場での動画作成/共有をシンプルに「Dropbox Capture」
上述した1年目の成果のスライドでは、「製品ポートフォリオの拡張」という項目に黄色の印(不十分という意味)が付いている。梅田氏は、ファイルをクラウド保存/共有するというDropboxのコア機能については十分な機能向上があったとする一方、今後は製品ポートフォリオの拡大にも注力したいと述べる。それは、Dropboxのビジネスを次のステップに推し進めるために必要だからだ。
「日本市場ではオンプレミスにあるファイルサーバー/NASのクラウドストレージ移行ニーズが中心だが、海外市場ではその動きはかなり進んでおり、その先のドキュメントワークフローの前後のプロセス、具体的にはドキュメントへの電子署名、インサイト分析といった段階にビジネスが向かっている」(梅田氏)
その一環として、10月にはDropbox Captureを提供開始するとともに、Dropbox DocSendのインサイト分析対象を動画コンテンツにも拡張した。またDropbox Sign(旧HelloSign)は、無料プラン(Basic)を含む全プランで利用できるようにしている。
説明会では、岡崎氏がDropbox Capture、Dropbox DocSendの機能説明や早期導入顧客による評価の紹介などを行った。
Drobox Captureは、PC画面の動画/画像(スクリーンショット)を簡単にキャプチャできるツールだ。
アプリの操作など、メールやチャットのテキストでは伝えづらい内容を動画で伝えたいというニーズがさまざまな業務において高まる一方で、ビデオ通話やビデオ会議という方法にすると参加者全員の時間が拘束される、効率が悪いという課題がある。Captureで作成した短い動画をDropboxに保存し、それをメールやチャットで共有して自由なタイミングで見られるようにすることで、こうした課題をうまく解決しようというのがDropboxの提案だ。
Captureは非常にシンプルなデザインとなっており、撮影したスクリーンショットや動画のトリミング、矢印や囲み、マーカー、説明文などを描き込むことができる。さらに、PCカメラ/マイクを使って説明者の動画を含むプレゼンテーション動画を撮影することも可能だ。
さらに、撮影後に簡単な動画編集(不要部分の削除)ができるほか、PowerPointスライドなどに貼り付けられるGIF動画形式での書き出しも可能で、「わざわざほかの動画編集ソフトを立ち上げなくても、Dropbox Captureだけですべて対応できる」と岡崎氏は説明した。
送付した資料がどのように読まれているかを詳しく分析「Dropbox DocSend」
もうひとつのDropbox DocSendは、セールス/マーケティング職のスタッフが顧客に製品資料や提案書などを送る際に活用できるドキュメント共有ツールだ。
DocSendを使えば、メールやチャットのメッセージに直接ファイルを添付する代わりに、ファイル共有のためのリンクURLを送信できる。ここまでは既存の「共有リンク」機能や「Dropbox Transfer」と似ている。
DocSendの特徴は、資料を送付した後のインサイト分析機能が充実していることだ。具体的には、顧客が資料を開いたタイミングで通知が届くほか、どのページをどのくらいの時間閲覧しているのかという詳細が分析できる。岡崎氏によると、DocSendの開発者は「プレゼン資料をいろんな顧客に送っても、その効果がなかなかわからないというフラストレーションを解消したいと開発した」のだという。
パスワードや有効期限だけでなくメール認証など多様なアクセス制限をかけることができる点も特徴だ。担当者のアドレスではなく送付先の会社ドメインに対してアクセス許可を与えることで、担当者が上司や同僚に回覧することが可能となる。その場合は「ドキュメントが担当者から上司に共有されたことが分析でき、ステークホルダーを発掘することが可能だ。これにより営業のステージが確認できる」と岡崎氏は説明した。
なお、DocSendのプラットフォームにはDropbox Signの電子署名機能も統合されているため「最終的に契約書を送付し、サインをいただくのもDocSendだけで完結できる」(岡崎氏)という。
10月の発表では、DocSendに動画コンテンツの分析機能も追加された。前述のドキュメントと同様に、送付した動画について「何分くらい視聴した」「この部分は早送りでスキップした」「音声をミュートしていた」などの詳細な分析ができる。
DocSendは、パーソナル(1ユーザーあたり月額10ドル)、スタンダード(同45ドル)、アドバンスド(同150ドル)、エンタープライズ(価格は要問い合わせ)の4プランが用意されており、14日間のフリートライアルも提供されている。
なおこれらの新製品群は、国内でもすでに早期導入顧客で活用されている。鴻池組ではDropbox Captureを利用して業務手順書の動画を作成しており、従来よりも動画編集の工数を削減できた。またマーケティング会社のSpeeeでは、ウェビナー参加者や顧客への資料配付にDocSendを採用し、プロスペクト(見込み)分析や資料のブラッシュアップを実現している。
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