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脳型AI新理論を提案、脳のシナプスの「揺らぎ」に着想=京大など

2022年11月01日 06時50分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学などの共同研究チームは、生物の脳のように「揺らぐ」ニューロンとシナプスで学習を実現する新たなニューラル・ネットワークを構築した。この新しいニューラルネットワークが脳のいくつもの実験結果を再現することも発見した。

京都大学などの共同研究チームは、生物の脳のように「揺らぐ」ニューロンとシナプスで学習を実現する新たなニューラル・ネットワークを構築した。この新しいニューラルネットワークが脳のいくつもの実験結果を再現することも発見した。 現在のニューラル・ネットワークは「最適化」という緻密な計算によって望ましい機能を実現するが、脳のニューロンやシナプスは強い「揺らぎ」を持ち、確率的に動作するため、最適化のような緻密な計算をしているようには見えない。さらに、最適化の計算には、脳とは比較にならないほど膨大なエネルギーを消費するという問題がある。 そこで研究チームは、「脳の学習は最適化ではなく、適切な具体例を生成するサンプリングではないか」と発想。確率的推定手法であるベイズ推定の理論の1つ、「ギブス・サンプリング」の理論を利用することで、脳のようにランダムなニューロンとシナプスだけで動作するニューラル・ネットワークの構築に成功した。さらに、このように構成したニューラル・ネットワークが、動物が物を見たときに脳のニューロンが示す応答の特徴など、生物の脳の揺らぎ以外の多くの性質も再現することを見い出した。 今回の研究成果は、脳のような高い柔軟性を持ち省エネルギーで動作する脳型AIの開発や、人間を含む生物の脳の仕組みの解明への波及効果が期待される。研究論文は、2022年10月21日付けで、国際学術誌フィジカル・レビュー・リサーチ(Physical Review Research)にオンライン掲載された。

(中條)

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