富士通は9月14日、光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送が可能なデジタルコヒーレント光伝送技術の開発に成功し、実際の光伝送装置として通信が可能なことを確認したことを発表した。本技術を適用した光伝送装置を2023年度上期中に製品化し、グローバルに提供を開始する予定としている。
本技術は、最新の半導体プロセスを適用したデジタル信号処理LSI(DSP)の適用に加え、世界初の光伝送装置への水冷システムの導入や、機械学習を用いた光ネットワーク全体のリソースの最適化により、世界最高という光1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現しながら消費電力を低減し、当社従来製品と比較してシステム全体のCO2排出量を70%削減する。
本技術は、(1)テラビット光伝送システム技術、(2)世界初となる光伝送装置への水冷技術、(3)機械学習を用いた光ネットワークモニター技術の3つの独自技術を適用することで、大容量伝送と低消費電力を両立している。
(1)テラビット光伝送システム技術
世界初という140Gbaudの高速信号を伝送可能とするデジタル信号処理LSI(DSP)と狭線幅波長可変レーザーを適用し、さらに送受信デバイスや光伝送路に発生する光波長の歪を高精度に補償する同社の独自技術を組み合わせることにより、世界最高となる1波あたり1.2Tbpsの大容量伝送を実現。また光通信においては、一般的に伝送容量が増加すると通信できる距離が短くなる傾向があるが、今回の技術を適用することで、従来技術と比較して同じ伝送容量で4倍以上の到達距離性能を実現したという。
(2)世界初となる光伝送装置への水冷技術の適用
従来の光伝送装置では、システムの冷却には空冷技術が用いられていたが、本技術では、同社のスーパーコンピューターの開発および製造における知見を生かして、世界で初めて光伝送装置に水冷技術を適用。高信頼性やメンテナンス性を保ちながら、冷却効率を向上させ、伝送容量(Gbps)あたりの消費電力が世界最小の120mWとなる低消費電力化を実現したという。光伝送装置全体では空冷方式を採用した従来の装置と比較し3分の1の小型化、軽量化も図り、輸送時に発生するCO2排出量削減や、使用終了後の廃棄量削減によるCO2排出量削減も可能だとしている。
(3)機械学習を用いた光ネットワークモニター技術
従来の光ネットワークでは、通信容量の安定確保のために、運用環境により変化する光ファイバーの性能や光伝送システム単体の状況など、ネットワーク設計時に必要となる条件を厳しく見積もって設計していた。そのためネットワークが本来持つ性能を効率良く引き出せず、消費電力の増加や伝送容量の減少を招いていたという。
今回、機械学習を用いたネットワークモニター技術により、光ファイバーや光伝送システムなどの光ネットワーク構成要素の状況を自動で高精度にとらえ分析できるようになった。これで得られた結果を用いて、ネットワーク構築時のDSPの変調方式や構成要素の設定に活かすことにより、消費電力を抑えつつ、光伝送装置の持つ伝送性能を最大限に引き出したネットワークの構築を可能とした。