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初代ZenからのIPCの伸び率は実に235%!?Ryzen 7000シリーズ発表回の内容を少し深掘りして解説

2022年08月31日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

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Ryzen 5 7600XがCore i9-12900Kを倒す?

 ではAMDによるベンチマーク結果を紹介しよう。今回Ryzen 7000シリーズのターゲットになったのはCore i9-12900Kだが、AMDによればRyzen 9 7950Xはもちろんだが、Ryzen 5 7600XでさえもCore i9-12900Kを上回れるシチュエーションがあるとしている。

 Zen 4アーキテクチャーに組み込まれたさまざまな改善により、シングルスレッド性能(Geekbench)におい てはRyzen 5 7600Xの方がCore i9-12900Kを上回るいう驚きの結果も提示された。

 これまでのレビューから、第12世代CoreとRyzen 5000シリーズでは、シングルスレッドは第12世代Coreの圧勝だったが、Ryzen 7000シリーズでこれを覆すどころか、最下位でライバルの最上位を負かすという金星をあげたことになる。ただシングルスレッド性能計測がここだけGeekbenchになっているあたり「勝てそうなベンチで比較している」感はあるので、実際に製品が来るまでは鵜呑みにするのは危険だ。

まずはRyzen 9 5950Xと7950Xの比較。これはIPC向上とクロック増がそのまま性能に影響しているので、7950Xの方が高性能なのは当たり前

Geekbenchによるシングルスレッド性能では、Ryzen 7000シリーズ全モデルがCore i9-12900Kを上回ると主張。このグラフは差がかなり誇張されているが、6〜15%高いことが示されている

 シングルスレッド性能はPCゲームでは非常に重要な要素だ。AMDによれば、フルHD解像度においては、Core i9-12900KとRyzen 5 7600Xを比較した場合、Ryzen 5 7600Xが最大17%フレームレートで上回り、平均で5%高いとしている。ただサンプリングされたタイトルが少なく、偏りもあるため、これについては以前筆者がRyzen 7 5800X3Dでやったように、もっと広い範囲のゲームでサンプリングする必要があるだろう。

フルHD&高設定(GPUはRX 6950 XT)でゲームのフレームレートをCore i9-12900KとRyzen 5 7600Xで比較すると、GTAVのように負けるものもあるが、10%以上の差をつけるゲームもあるという。ここでも登場するF1 22は、Zen 4のIPC向上が奏功しているゲームでもあるため、Ryzen 7000シリーズと相性が良いことが窺える

V-Ray BenchmarkによるCore i9-12900KとRyzen 9 7950Xのスコアーを比較すると、7950Xは最大57%スコアーで上回るという

新チップセットとSocket AM5

 続いてはマザーボード関係の話をしよう。既報の通り、Ryzen 7000シリーズはSoket AM5に移行し、チップセットには600シリーズが必要となる。ソケットを長く使うことによるエコシステムの優秀性はAMDプラットフォームの武器といえるが、今回のSocket AM5は2025年以降も使い続けることが告げられた。

 今回Ryzen 7000シリーズがDDR5メモリーのみをサポートするのは、今後長く使うというコンセプトを裏付けるものとなる。DDR5モジュールの価格は徐々にDDR4モジュールの価格に近づいてきており、性能でも価格でも逆転する転換期が近づいている。この辺りも総合的に判断した結果といえる。

Socket AM4は5つのCPUアーキテクチャー(筆者がすっかり忘れていたBristol RidgeからZen 3まで)を支え、125以上のSKU、500種類以上のマザーボードに採用されてきた。BIOS更新によりより新しいCPUに対応できるというのはライバルにない強みだ

Socket AM5はLGAスタイルのソケットを採用し、DDR5やPCI Express Gen5といった最新規格をキャッチアップ、さらにCPUへの電力供給も最大230Wに増加。それでいてAM4用のCPUクーラーとの互換性も維持しているのが凄い

 600シリーズチップセットは当初3モデルであったが、今回の発表で「X670E」「X670」「B650 Extreme」「B650」の4種類であることが判明した。各チップセットの特徴は以下の通りとなる。ここで重要なのはRyzen 7000シリーズのPCI ExpressコントローラーはGen5対応だが、実際のデバイス(SSDやビデオカード)にGem5リンクするかどうかはマザーボードメーカーの設計に委ねられている。

 見方をかえれば、PCI Express Gen4がベースラインであり、上位チップセットになるほどGen5対応の範囲が広がり、より確実に(=オプション扱いが減る)繋がるといえる。

 また、X670EとB650 Extremeの命名規則がバラバラだが、B650 ExtremeはB650Eという表記に落ち着くだろうと考えている(AMDのプレスリリースでもB650E表記があるし、何ならX670EもX670 Extreme表記のものもあるのだ)。

AMD X670E:PCI Express Gen5のストレージとグラフィックスに対応するフラッグシップ

AMD X670:エンスージアストやOCer(オーバークロッカー)向け。PCI Express Gen5のストレージとグラフィックスに対応するが、グラフィックのGen5対応はオプション扱い

AMD B650E:パフォーマンス志向のユーザー向け。PCI Express Gen5ストレージとグラフィックをサポートするが、 グラフィックのGen5対応はオプション

AMD B650:メインストリームユーザー向け。PCI Express Gen5の対応はオプション

Ryzen 7000シリーズに対応するチップセットは4種類。X670EとB650 Expressの表記ゆれがあるが、自然とB650E表記に収束するのではないだろうか

B650マザーボードの価格は125ドルからとなり、Socket AM5プラットフォームは2025年以降も使われると明らかにされた

新メモリー技術「AMD EXPO Technology」

 Ryzen 7000シリーズはDDR5−5200までをサポートするが、OCメモリーでそれ以上に挑むこともできる。これに合わせ新技術「AMD EXPO Technology」もアナウンスされた。EXPOは「EXtended Profile for Overclocking」の略であり、AMD版XMPというべきものだ。

 技術的に既存のXMPと何が違うのかまでは明らかにされなかったが、XMPはインテルのプロプライエタリな技術であるため、AMD側にしてはDDR5メモリーをより細かく管理しようとすれば見えない壁がある(Ryzen環境でXMPが使えるるのはマザーボードメーカーの努力であってAMDが主導しているわけではない)。

 ゆえにAMDが主導で開発した技術であり、Ryzen環境に最適化されたDDR5メモリーをより確実かつ高クロックで動作させるための技術がEXPOとなったと考えられる。EXPO対応のモジュールは今後各メーカーより投入される見込みだ。

EXPOによってDDR5メモリーのレイテンシーは最大63ナノ秒短縮が見込めるという

EXPO対応DDR5モジュールは各メーカーより投入が予定されているが、具体的な発売日は各メーカーの情報が待たれる

 以上がYouTubeで発表された内容のうち、筆者がコメントすべきと感じた内容だ。今回の取材ではさらに深い内容についても提示されたが、それは後日(NDAが解禁され次第)お目にかけるとしよう。

Zen 5までのロードマップも示されたが、Zen 4のバリエーションとしてZen 4Cの存在が公式に示された。ただこれはサーバー向け(EPYC)用のラインで、一般向けには出てこないと思われる(出るとすればThreadripperシリーズだ)

来年にかけてZen 4の3D V-Cache版とZen 4C版のEPYCが投入される予定だ

●関連サイト

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