ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第678回
Sapphire Rapidsの量産は2023年に延期、Optaneが終焉 インテル CPUロードマップ
2022年08月01日 12時00分更新
Sapphire Rapidsの量産は2023年
質疑応答の一部始終
Q:Sapphire Rapidsの量産はいつ始まるの?(CowenのMatt Ramsay氏)
A:すでに多くのSKUを前四半期に立ち上げを開始しており、現在立ち上がっている最中である。今回指摘した問題は、この(立ち上がりつつある)SKUには影響がない。またもう1つ出荷数量の多いSKUのテープアウトを行なったが、こちらの量産は今年下半期を予定している。(Gelsinger CEO)
Q:Sapphire Rapidsの生産前準備金(Pre-production charge)に言及した理由は?(SMBC日興証券のSrini Pajjuri氏)
A:Sapphire Rapidsでは、PRQ(Product Release Qualification)と呼ばれる在庫を確保している。このPRQは品質指標であるが、(Sapphire Rapidsの)主要なSKUはまだPRQに達していないので、PRQに達した時点で生産在庫の確保を中止する。このうちいくつかが売れる可能性があるので、今年末から来年にかけて、おそらく引当金の一部を回収することが可能になるだろう(Zinsner CFO)。
Q:Pat氏はインテル特有の問題、特に製品設計について言及していたが、これはSapphire Rapidsの話なのか、もっと一般的な話なのか?(J.P. MorganのHarlan Sur氏)
A:インテルはTD(Technical Development)と製造技術、設計と製品、今後の成長のための新製品と新(製造)ラインの3つの土台を築いている。このうちTDと製造技術に関しては順調であり、Tick-Tockモデルのような進歩になるよう「再構築」している。Sapphire Rapidsの失敗は明らかであるが、我々は品質基準を引き上げて(それに対処して)いる。(以下略)」(Gelsinger CEO)
Q:Sapphire Rapidsは予定通り稼動し、今年下期に立ち上がると言ったが、その一方下期のデータセンターの成長率は非常に低いベースでかなり控えめになるとも言っていた。つまり、Sapphire Rapidsの立ち上げは役に立たないということか? Sapphire Rapidsの量産が本格的に立ち上がるのは2023年以降、という意味でいいのか?(BernsteinのStacy Rasgon氏)
A:Sapphire Rapidsの立ち上げ準備は遅れており、主要なSKUはまだ発売されていない。なので今年よりも来年以降(の売上)に貢献することになる。(Gelsinger CEO)
Q:要するにSapphire Rapidsは事実上2023年上半期に出荷するということか?(Rasgon氏)
A:今年も(いくつかのSKUは)出荷することになるが、ほとんどのものは来年出荷すると思う。(Gelsinger CEO)
次第に質問が鋭くなっていく感じがおわかりいただけるだろうか。そもそもインテルでは、いくつかのSKUを出荷したと言っているが、そのSKUが最終製品であるとは一言も言ってないところがミソである。
もちろん、例えばロスアラモス国立研究所のCrossroadやアルゴンヌ国立研究所のAuroraのような特定システム向けという可能性もあるのだが、それ以前にまだエンジニアサンプルしか出荷していない可能性もある。
そもそもSapphire Rapidsが品質基準に達していない、ということはまだ量産準備ができていないという話であり、これを満足するのに今年いっぱいかかり、量産は来年から、というのが質疑応答から得られる現実的な製品出荷スケジュールになる。
ただインテルは2023年にはEmerald Rapidsを投入する予定だったはずで、今回のSappire Rapidsの事実上の1年後ろ倒しは、続く製品ロードマップにも影響を与えそうである。
質疑応答の中でもGelsinger CEOは「Emerald RapidsはSapphire Rapidsと同じプラットフォームであり、今のところ順調(looking very healthy)である」としているが、それが事実ならSapphire Rapidsが出て半年もたたないうちにEmerald Rapidsが出ることになる。
そもそもSapphire Rapidsも昨年までは順調と言っていたし、今年5月のIntel Visionでも「失敗」なんて一言も言ってなかったあたり、本当に2023年中にEmerald Rapidsが出るかどうかも怪しい感じになってきている。
いずれにしても、2022年中にSapphire Rapidsが市場投入される可能性はかなり低くなった、と言わざるを得ない。
この連載の記事
-
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第791回
PC
妙に性能のバランスが悪いマイクロソフトのAI特化型チップMaia 100 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第790回
PC
AI推論用アクセラレーターを搭載するIBMのTelum II Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第789回
PC
切り捨てられた部門が再始動して作り上げたAmpereOne Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第788回
PC
Meteor Lakeを凌駕する性能のQualcomm「Oryon」 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ