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サラ・バーガー(IBMトーマス・J・ワトソン研究所)

2022年01月13日 14時01分更新

文● MIT Technology Review Editors

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機械学習を利用することで、患者が感じている慢性的な痛みを、多くの情報に基づいてホリスティック(全体的)な観点から定量的に評価できるようにした。

患者の痛みの評価と管理を支援するスマート・テクノロジーの開発は、サラ・バーガー博士にとって極めて個人的な課題だ。バーガー博士は長年にわたって、慢性的な痛みをわずらっている両親が医療制度をうまく利用するのに苦労する姿を見てきた。「慢性的な痛みを抱える患者の多くは、自分の身体や身体の感覚をコントロールできないことに苦しんでいます」とバーガー博士は説明する。「デジタル技術を使えれば感覚をコントロールできるようになり、医師との間で、より多くの情報に基づいた会話ができるようになります」。

IBMトーマス・J・ワトソン研究所に所属する神経科学者のバーガーは、機械学習を用いて長期的な痛みを定量化し、緩和方法を予測するのに役立てている。まず、ウェアラブル機器や環境センサーを使って心拍数や睡眠パターン、患者の発話の音響特性など、患者が感じる痛みに関するデータを取得する。そして、これらの指標を機械学習を使って分析することで、慢性的な不快感や運動能力の低下、大切な人との時間が失われたことによって生じることが多い精神的負担などの要素を評価できるようになる。

その結果、偏見を持たれたり過度に単純化されたりしがちな従来の痛み評価基準に基づく評価や治療計画よりも、はるかにホリスティック(全体的)で多くの情報に基づいた評価や治療計画が可能になる。バーガー博士は「痛みは一次元で測定できるものではありません。痛みに対する評価も同じです」と語る。

慢性疾患を持つ多くの人々、特に女性や有色人種は、医療制度から疎外されていると感じており、痛みの治療を求めるときに偏見を持たれている。「私は疼痛管理を、社会経済的背景の異なるさまざまな人々が利用しやすく、個別化された信頼できる体験に変えることを目指しています」とバーガー博士は言う。

(Kathryn Miles)

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