内装はすべてが運転手のために!
車内はもちろん高級感にあふれているのだが、ディスプレーから小物入れからなにもかもが運転席のほうを向いており、ドライバーが最低限の視線移動で把握できるようになっているのだ。しかも、先進運転支援機能もないため、ハンドル周りのスイッチ類もすくなく、最近はほとんどの操作をタッチパネルで行なうタイプのクルマが多い中、コルベットは操作のほとんどを物理スイッチで行なうという漢仕様。たしかに、タッチパネルだと操作ミスをしてしまうことも多いが、物理スイッチだと場所を覚えておけば、見ないで操作できる。理にかなっているのかもしれない。
センター部にある8型タッチディスプレーには、日本仕様としてゼンリンと共同開発した完全通信車載ナビ「クラウドストリーミングナビ」がインストールされており、トンネルや高架下などGPSが測位できない場所でも自律航法ができる。もちろんApple CarPlayなども使えて便利なのだが、筆者の経験上、スマホナビはトンネルや地下などでは測位できない、電波が切れるなどで、ナビアプリが止まってしまうことが多い。そういった場所に分岐や出口があったら、どこへ進んでいいのか混乱してしまうのだ。実際、コルベットに乗っているときはこのナビを使っていた。やはりトンネルなどでの安心感が違う。欠点としては、ディスプレーがグレア(光沢)のため、光が反射して見えづらいことがあったところ。あと写真を撮ると必ず撮影者が映り込んでしまうことか(これは普通の人には関係ないが)。
シートはスポーツカーならではの高級感とホールド感があるものだが、硬すぎず柔らかすぎずで座り心地はいい。ただ、この手のクルマのお約束としてシートポジションは低め。身長が低いと前が見えづらいかもしれない。ペダルレイアウトも、無理やり右ハンドルにしたわけではなく、しっかりと作り込んだとのことで、まったく不自然ではないポジションで踏める。クルマによっては左ハンドルのレイアウトをそのまま右側に持ってきたせいで、アクセルとブレーキ、クラッチを踏む姿勢が不自然になってしまうこともある中で、きちんと世界戦略車として売っていくぞというシボレー(GM)の志を感じられる。
スマホの充電はUSB(Type-AとType-C)のほかに、運転席と助手席の間にQi充電可能なスマホホルダーが用意されている(ただし1台分)。あらゆる充電の手段が用意されているのは非常に助かる。USB端子に接続すれば充電のほかに、Apple CarPlayやAndroid Autoが使える。またオーディオにはBOSEの14スピーカーが装備され、ツーリングモードで走っていれば重低音を効かせまくりのメタルやEDMを快適に聴けた。走りは気持ちイイし、音楽も快適に聴けるしで、まさに走るリビングルームだ。
【まとめ】アメリカ車へのイメージを変えたコルベット
日本で売れている理由がわかった
初アメリカ車、初シボレー、初コルベットと、初もの尽くしだった今回の試乗。聞けば新型コルベットは日本でもかなり売れているらしい(なかなか街で見かけないが)。だが、売れている理由は試乗して十分すぎるほどわかった。レースで勝つために駆動レイアウトをFRからMRに変えたわけで、サーキットユースで実力を発揮するのは間違いないが、遠方への移動をより速く、より快適にというビジネスエクスプレスの側面もあると感じた。
エンジンの気筒休止システムや可変サスペンション、電子制御のLSDなど、テクノロジーがてんこ盛りであり、アメ車にイメージしがちな「大味さ」はどこにもない。車体を繊細に管理しており、走りや路面状況に合わせてリアルタイムで走りやすく変更してくれる。フロントの車高を上げてくれる「フロントリフトハイトアジャスター」のおかげで、 筆者のような素人が乗っても速く走れるし、プロが乗ればポテンシャルを引き出しやすいだろう。
これまで、アメ車に目を向けてこなかったことを恥じるとともに、今後はもっと取り上げていきたいと思わされた新型コルベットだった。
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