今回はひさびさに、インテルCPUの製品ロードマップをお届けしよう。前回は連載596回だったので、9ヵ月ぶりというかほとんど10ヵ月ぶりに近い。前回はお正月だったから、まだRocket Lake-Sの発売前である。ということを踏まえて、そこからのアップデートをお届けしたい。
なお、さすがにそろそろ2019年度の製品は図からは省かせていただいた。といっても、現時点までの製品展開そのものはそれほど大きなアップデートはない。
Rocket Lakeベースの第11世代Coreプロセッサーが発表
Core-Xが事実上消滅
前回以降で言えば、3月17日にRocket Lakeベースの第11世代Coreプロセッサーが発表になった。ただイッペイ氏のこの記事の解説にもあるように、Rocket LakeはCore i9/i7/i5までで、Core i3とPentium/CeleronについてはComet Lake Refreshという形になっている。
このあたりについては若干、以前の筆者の予想と実際の製品で型番やスペックにずれがあったが、これは今回の図版で修正している。
では前回のロードマップと今回のロードマップの最大の違いは? というと、もちろんこの後出てくるAlder Lakeの話が入っているのが一番違うのだが、それを除くとCore-Xが事実上消滅したことだろう。
もともとはAMDのThreadripperシリーズに対抗すべく、急遽でっちあげたとでもいうべきラインナップであるCore-Xであるが、やはり製品バランス的にはかなり厳しいモノがあった。
おまけに競合製品であるThreadripperが、エンスージアスト向けからワークステーション向け(Threadripper Pro)に移行してしまい、こうなると無理にコンシューマー向けにこのクラスのプロセッサーを導入する必要はない、という判断になるのも無理ないところだろう。
ワークステーション向けにはXeon Wというラインナップがあるので、ここを厚くしていけばThreadripper系とは十分競合可能である。結果、Core-X系はCascade Lakeベースの製品が最初で最後になってしまったようだ。少なくとも現時点で聞こえる限り、Ice LakeをベースとしたCore-Xを投入、という話はまったくないし、そもそもCore-Xの新製品どころかアップデートの話すらない。
Xeon Wに関しては、2021年7月にIce Lake-SPをベースとしたXeon W3300シリーズが投入されており、ハイエンドのXeon W-3375は38コア/76スレッド、最大4GHz動作、3次キャッシュ57MB、8ch DDR4-3200接続、4×PCIe Gen4 x16でTDPは270Wという、それなりのお化けである。
もっともRyzen Threadripper Pro 3995WXと競合させようとするとこのクラスのスペックが必要なのは理解できる。
エントリワークステーション向けには、これに先立ちRocket LakeベースのXeon W-1300シリーズが2021年4月に投入されている。これはComet Lake-SベースのXeon W-1200シリーズの後継という位置づけだ。
もう一つの違いは、Elkhart Lakeは一応Pentium N/Pentium J/Celeron N/Celeron Jの名前を付けて発表こそされたものの、これは組み込み向け専用として提供されており、まずデスクトップ市場に入り込む可能性がなくなったことだ。もちろんマザーボードメーカーが、Pentium N/JあたりをベースにNUCを作るとか、マザーボードにCPUを実装した形で提供することは可能だが、どちらかといえばレアである。
そうした省電力向けに関しては、CoreプロセッサーのY SKUやU SKUを使ってほしい、というのがインテルの要望ということだろう。ただ後述の理由で、このPentium/CeleronのSKUの新製品がどうなっているのかさっぱりわからないので、今後絶対にデスクトップに投入されることはないとは断言できないのだが、その可能性は薄いということで今回はロードマップから外させていただいた。
この連載の記事
-
第803回
PC
トランジスタの当面の目標は電圧を0.3V未満に抑えつつ動作効率を5倍以上に引き上げること IEDM 2024レポート -
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ