半導体を使った「シリコンドライバー」とでもいうべきMEMSスピーカーは、オーディオ分野で注目の要素技術と言えるだろう。MEMSスピーカーのニュースはしばらく前に耳にしていたが、まだ研究レベルの話題という感じだった。最近それを台頭するオーディオグラスに搭載するという記事を目にした。
オーディオグラスはBOSE「Frame」などが登場し、数年前から市場が立ち上がってきた分野だ。メガネのフレームに小型のスピーカーが取り付けられ、BGM的に音楽を聴くことができるというものだ。一時期話題を集めたGoogleグラスなど、カメラなどを内蔵し、ARを実現するスマートグラスとは似て異なる分野である。
音楽を聴くためのメガネという提案
この記事では、こうしたオーディオグラスの最新モデルとなるFauna(ファウナ)の製品を取り上げる。
Faunaは、オーストリアのアイウェアブランドだ。試用したのは「Spiro Transparent Brown」というモデルで、音を出すスピーカー部分にMEMS技術が用いられている。Fauna Japan公式オンラインサイトでの販売価格は3万7800円となる。
メーカーの説明では、Faunaブランドの特徴はガジェット的な側面ではなく、ファッション性を前面に押し出している点だという。ここが他のブランドとの差別化ポイントだ。オーディオグラスではあるが、デザインの面でも素材の面でも一般的なハイブランドアイウエアと遜色のないものであるとしている。例えばフレームはイタリアの老舗メガネ生地メーカーのマッケリのアセテートを採用。メガネレンズは日本でも有名なドイツのカールツァイス社のレンズを使用している。
また、Faunaオーディオグラスはシンプルながらウェアラブルデバイスとしての側面も備えている。Fauna専用のアプリが用意されていて、様々なシチュエーションに合った音楽を提供したり、定期的に水分補給する時間を教えるといった機能が利用できる。
オーディオ機器としては、発音体に上でも触れたMEMSスピーカーを搭載している点が特徴となる。FaunaではUSound社のMEMSユニットを採用。MEMSスピーカーとウーファーが左右二個ずつ搭載されている。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、さまざまな機能を集合体としてチップ上に集積したものを指す。これは、SoC(System on Chip)という異なる機能を持つICをワンチップ化したパッケージに似ているが、MEMSの場合はICなどのデジタル回路だけではなく、機械的な可動部を持つアクチュエーターなども小型にして集積している点が異なる。可動部と駆動部がパッケージ化されているため、空気を振動させるスピーカーも作れるということだろう。
利点としては超小型化ができるため、ほかの部品と組み合わせる際の設計の自由度が高いということと、低電力化が可能であるということだ。
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