2021年10月4日、クラスメソッドは米Amazon Web Servicesと戦略的協業を発表した。両社はSCA(Strategic Collaboration Agreement)と呼ばれる契約を締結し、クラウドによるDXを加速させる内製化の支援活動を共同展開。4年間で100億円のビジネス機会を創出するという。
内製化を支援できるハイスキル人材、メディア運営体制、トライ&エラー
記者説明会に登壇したクラスメソッド 代表取締役 横田聡氏は、AWSプレミアコンサルティングパートナーとして、2600社以上の支援企業数、1万2000以上にのぼるAWSアカウント数を達成した実績をアピール。また、会社として4種類のAWSコンピテンシープログラム(AWS移行/DevOps/データ分析/モバイル)を取得。業績に関しても近年高い成長を遂げており、2021年6月期の売上高は304億円に達している。
こうしたクラスメソッドの競争力の源泉であり、既存のパートナー施策の枠を超えた今回の協業につながったポイントが、スキルの高い人材と情報発信体制だ。同社はグループ全社員の8割以上がAWS認定資格を保有しており、「自社運営しているカフェの店員さんもAWSの有資格者」(横田氏)とのこと。AWSの認定資格数は1500以上で、しかも半数は上位資格になるという。また、社員を中心にしたDevelopersIOやオープンなブログメディアであるZennといった技術メディアでは、すでに5万本の記事が公開されており、読者数は180万ユーザー/月を超える。さらに、9割がAWS案件ということで、マルチクラウド化が進むクラウドインテグレーター(CIer)の中で、事実上AWS専業CIerである点も大きな特徴と言える。
今回のクラスメソッドとAWSとの戦略的協業は、おもに「事業会社のITシステムの内製化支援」が大きなテーマ。具体的な重点施策として「クラウド移行、最適化の支援」「中堅・中小企業、地方企業向けの支援」「国内SaaS開発・拡販支援」の3つを掲げる。
これら重点施策に関してクラスメソッドでは、まず「AWS移行コンピテンシー」や「Well Architected パートナープログラム」を取得している点をアピール。また、中小企業のに向けては、請求代行や割引、サポート、クラウドの最適化、セキュリティ対策、トレーニングなど幅広いサービスを提供しているという。また、Amazonのカルチャーに則り、クラスメソッド自身がカフェを運営し、モバイルオーダーLINEミニアプリの「CX ORDER」を開発。トライ&エラーで自社サービスを育て上げている点も、DXを推進する企業やSaaS事業者と共創できるポイントになりそうだ。
「DX人材の不足」という課題に対しても、あくまでノウハウ提供と伴走に徹する
DXという観点で、もっとも重要なのは内製化を実現するための人材になる。横田氏は、「ネコも杓子もDXと言っているけど、やりたいけどできていない。大企業はもちろん、中小企業もよくわかっていない。やろうと思っても人材がいない」と課題感を披露する。
これに対して、クラスメソッドはこうした人材を企業に派遣するのではなく、あくまでノウハウを提供し、顧客と伴走するスタイルを貫く。これにより、ユーザー自身にツールを使いこなすスキルと能動的にITにチャレンジするカルチャー作りを支援していく。「ユーザーは必ず壁にぶつかる。でも、ブログで8割は解決し、残り2割の方もクラスメソッドに問い合わせて解決してもらう。こういう世界観を作っていきたい」と横田氏は語る。
AWSジャパン 代表取締役社長の長崎忠雄氏は、デジタルやIT、そしてクラウドを活用したビジネス変革や人材育成のニーズがこの1~2年で急速に高まっていると指摘。これに対して、AWSとしてもインフラの拡充、導入支援、人材育成などを進めているが、やはりパートナーの協力が不可欠だという。「高い技術力とたくさんのお客さまを支援してきた実績を持つクラスメソッドとの協業は、このミッションを成し遂げる重要な一歩となる」とコメントした。
今回の戦略的協業では両者で営業活動や人材育成について具体的な目標を設定し、4年間に渡って達成を繰り返していくという。4年間で100億のビジネス機会を創出するという達成目標を持っているが、「4年間で100億円増はひかえめな設定で、実際は毎年100億円増くらいになる」(横田氏)と自信をのぞかせた。