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世界中で「信頼」が危機を迎えるいま、企業がなすべき5つのこととは何か

Dreamforce 2021のテーマは「信頼されるエンタープライズ」

2021年09月24日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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“Slack-First”でさまざまな製品とSlackとの連携を拡大

 製品側では、“Slack-First”を掲げて進めているSalesforce製品とSlackとの連携、統合をさらに進めている。すでに8月にはSales Cloud、Service Cloud、Tableauとの連携を発表していたが、今回はさらにCommerce Cloud、Experience Cloud、Platform、Trailhead、MuleSoft、Quip、Sustainability Cloud、そしてBankingなどのインダストリークラウドまで、合計で16種の製品に連携を拡大している。

 たとえばSlack-First MuleSoftでは、ほかのソフトウェアやシステムを介することなく、複数のビジネスアプリやデータを直接Slackに統合できる。この統合はノーコードで、クリックだけで実現することができ、ワークフローの中でSlackに自動アラートを飛ばすようなこともできるという。

 Slackそのものの機能強化も発表されている。Slackの共同創業者兼CEO、スチュワート・バターフィールド氏は、今回一般提供を開始した新機能「Clips(クリップ)」を紹介した。Slack上で短い動画や音声を録画/録音し、SlackのチャンネルやDMに投稿すると、メンバーが都合の良いタイミングでそれを見て、コメントなどができるという機能だ(この機能自体は今年7月にSlackが発表していた)。

 Clipsは短いビデオ/音声で各自が進捗を報告しあうなどの用途を想定しており、ミーティングの一部を置き換えることができると見る。Slackの実現する「非同期コミュニケーション」とWeb会議などの「同期コミュニケーション」を組み合わせた、新しい働き方を作り出す必要があると、バターフィールド氏は説明した。

 そのほか、Enterprise Gridユーザーであれば相手企業がSlackの有償契約をしていなくても「Slackコネクト」で接続できるようになるほか、米国の公共部門向けに厳しいセキュリティ/コンプライアンス基準を満たした「GovSlack」も発表している。

 なお、ビジネスコミュニケーションがメールベースからSlackベースになることでどのような影響が出るのかという質問に対し、テイラー氏は「Slackはコミュニケーションツールではなく、プラットフォーム」だと述べた。

 Salesforce社内でSlackの導入を進めた結果、電子メールは46%削減され、「会話が共有チャンネルに移ったことで情報の透明性も増した」(テイラー氏)。会話に後から参加した人でも会話の履歴をたどることができるといったメリットがあり「ナレッジに対する考え方が完全に変わった。Slackに新しい働き方のビジョンを教わっている」と笑う。なお同社では、またSlackを使うことで、1万5000人の新入社員が社屋に来ることなくスムーズにオンボードできたという。

 Customer 360プラットフォームの土台となる、マルチクラウド対応インフラのHyperforceについても、提供地域の拡大を発表している。現在すでにインド、オーストラリア、カナダ、日本で提供中だが、今年中にはさらにシンガポール、ブラジル、ドイツ、フランスが加わり、2022年末には16カ国まで拡大する計画だ。さらにEU圏の顧客がEU圏内にすべてのデータを保存できる機能も提供する。テイラー氏は「多国籍企業は、世界全体で同じ顧客体験を提供しながら、ローカルの法的要件も満たすことができる」と、そのメリットを説明した。

Dreamforceはイベントから「信頼できるメディアチャンネル」へ

 今年のDreamforceは“ハイブリッド形式”、つまりオンラインとオンサイトの両方で実施されている。オンサイトの来場者は1000人程度に制限されているという。

 オンサイト参加にはワクチン接種済みの証明書が求められるほか、健康状態が良好であると認められた場合は「Dreampass」という個別のQRコードを提示して会場に入ることになる。これらを支えるのが、Dreamforceで発表する「Health Cloud 2.0」だ。Health Cloudはワクチン接種管理と接触確認の機能を持ち、全世界で2000万回分のワクチン接種を支援したという。

「Health Cloud 2.0」は、ワクチン接種管理だけでなく幅広い機能を提供する

 コロナ禍以前、単一の企業イベントとしては最大規模を誇っていたDreamforceだが、現在はハイブリッドなイベントのあり方も模索しているようだ。Salesforce自ら展開するストリーミングサービス「Salesforce+」を通じて、Dreamforce参加者はライブまたはオンデマンドで好きなセッションを見ることができる。プログラムは延べ125時間にも及ぶという。

 Salesforce CMOのサラ・フランクリン氏は「(ストリーミングサービスの)Netflix、Disney+、ESPN+などからインスピレーションを受け、マーケティングを変革した」と語る。これまでの「イベントベースのマーケティング」から「信頼のある戦略的なメディアチャンネル」を目指すと、その位置づけを説明する。今後は、展開する各地域向けのローカルコンテンツも増やしていくという。

Salesforceのストリーミングサービスメディア「Salesforce+」では、Dreamforceのセッションだけでなくさまざまなコンテンツシリーズ(番組)も配信している

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