導入2社が紹介する「Slack+Salesforce連携」によるビジネス活性化【後編】
ニューズピックス、Slack+Salesforce連携で幅広い業務プロセスを効率化
2021年09月10日 07時00分更新
2021年8月24日に開催されたSlack主催のオンラインセミナー「Why Slack?」では、「Slack+Salesforce 連携」をテーマに掲げ、SlackとSalesforceの両方を使いこなす2社が高度な連携の手法を披露した。
今回は、前編記事のリバネスに続いて登壇した、ニューズピックス Corporate Planning Division Business Management Team Leaderの蒲原愼志氏による講演の内容をレポートしよう。
自由な働き方を実現するオープンなコミュニケーションとSlack
同社の展開する「NewsPicks」は“ソーシャル経済メディア”と言われており、100以上のメディアから厳選した経済ニュースを掲載、同時に自社内の編集部が取材するオリジナルの有料記事も配信している。それらの記事に有識者、専門家(「プロピッカー」)が独自視点でコメントを付け、読者の知識強化を促す点が特徴だ。
NewsPicksは2013年にユーザベース傘下でスタートし、そこから会社分割するかたちで2015年にニューズピックスが設立された。現在ではこのオンラインメディア事業以外にも、書籍の出版や教育、ブランド広告など多数の事業を展開している。蒲原氏は「若い会社だが多くの事業を行い、さまざまなジャンルの人材が活動する」と語る。
また同社では「自由主義」を1つの価値観としており、創業以来、オフィスへの出社義務も就業時間の規定もない。1人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整備して、ルールに頼らない仕組み作りをモットーとしてきた。「すべての考え方が性善説に基づいている。そして、自由を享受するために高い責任感と倫理観を持って働いているとことが、当社の魅力だと思っている」。
時間と場所を問わない働き方だからこそ、必要になるのがオープンなコミュニケーションだ。そのためにSlackをフル活用していると、蒲原氏は語る。
“一緒になればいいという願いが叶った”SalesforceとSlackの連携
同社が「Slack」と「Salesforce」を導入したのは、共に設立翌年の2016年のことだ。同社は設立以来、急成長を続けており、2020年度の売上は59.5億円に達しているが、蒲原氏は「Salesforce、Slackがこの事業成長を支えたと言っても過言ではない」と話す。
Slackを使い始めたのは同社のエンジニアだった。そこから「使いやすい」とうわさが広がると、またたく間に全社で使われることになった。「当社の自由な働き方にピタリと合っており、何の抵抗もなく自然に広まった」(蒲原氏)。
Salesforceの「Sales Cloud」は、ブランド広告事業を始めるにあたってクライアント管理/営業支援ツールが必要になったことから導入した。「創業2年目だったので『まだ早い』という意見もあったが、将来的にスケールできる基盤として導入した」(蒲原氏)ちなみに同社はSalesforceユーザーとして、2020年の「全国活用チャンピオン大会」で準優勝を果たすほど、Salesforceの活用では成果を挙げている。
Salesforceの導入以前からSlackを使っていたため、「Salesforce Chatter」は一度も使用したことがないという。SalesforceがSlackを買収し、両社ツールの連携を進めていく方針を示していることについて、「当時から『SalesforceとSlackが一緒になればいいと』思っていた。願えば叶うもので、本当に実現した」と期待を語る。
Salesforceは基幹システム、Slackはユーザーインターフェースとして活用
それでは、現在のニューズピックスではSlackとSalesforceをどう連携させて利用しているのだろうか。
同社では、Salesforceを「基幹システム」として位置づけ、見込み客、取引先の管理はもちろん、受注、請求の管理や契約の管理、制作進行まで、幅広い業務の基盤として使っている。「ほぼすべての業務がSalesforce上で動いている。そのため、Salesforce、Slackは全社員が使用する“インフラ”となっており、だからこそコラボレーションが生まれている」
蒲原氏は連携の一例として、取引先企業の反社(反社会的組織とのかかわり)チェックのプロセス自動化を挙げた。従来は、営業担当者が自分で反社チェックのシステムに照会し、結果画面のキャプチャをSalesforceに手作業で登録していた。だが、業容が拡大して取引先が増えてくると、そのぶんだけ反社チェックの作業も増え、業務負荷が高まっていた。そこで蒲原氏のチームは、担当者がSalesforceに社名を登録するだけで、自動的にチェックを実行して結果が登録されるシステムを構築した。
これにより反社チェックの作業は自動化されたが、チェックの結果を営業担当者が知るためにはやはりSalesforceにログインしなければならなかった。これでは不便なので、チェック処理の結果がSlackに自動投稿される仕組みも追加した。「自動化はうれしいが、それを見に行くところが手動では意味がない。Slack連携で、最後までの自動化を実現した」(蒲原氏)。
投稿されるのはメンション付きのメッセージなので、担当者には通知も届く。さらに、オープンなチャンネルに書き込まれるため、チームの他のメンバーからも当該企業についてのコメントが入り、安心感が増すという。現在では同様の自動化が、与信管理や契約管理の業務にも広がっている。
また、事業部門がコーポレート部門に契約相談をする際の仕組みにもSlack連携を取り入れている。従来は契約管理システムを用いて、その中で法務の相談を行っていた。このシステムをSalesforceに移行した際に、通知と応答のインターフェースとしてSlackを採用した。
このシステムで事業部門が相談を書き込むと、法務部門のSlackチャンネルにメッセージが投稿される。法務が最適な担当者をアサインして契約への対応が進む。相談への回答は逐次、事業部門の担当者にSlackで通知される。「Salesforceで情報を一元管理できる点と、法務部門がチーム内で情報を共有し、効率よく業務が進められる点がメリットだ」(蒲原氏)。
「Slackに答えていくだけで、仕事が進む仕組みを作りたい」
こうした取り組みによって、CRMを使っていない部門でもSalesforce上の業務プロセスに巻き込まれるかたちとなり、Salesforceを事業基盤にしていくという同社の狙いをより強化していく。
広告コンテンツの制作フローでも、SalesforceとSlackの連携が役立っている。従来は営業やクリエイティブの担当者が、それぞれ手作業で管理していた。クライアントニーズのエクセルシートへの記入、デザイナーなど制作スタッフのアサインといった複雑な管理が必要で、担当者の負担が重かった。SalesforceとSlackの連携によって、この管理作業の自動化と効率化を進めた。
「営業、制作、管理という違う部門のメンバーがチームを組んでコラボレーションする際、Slackのアクションを使って同時並行の業務を見えるようにしている。コンテンツごとにチャンネルを作っており、どの案件は誰が担当していて、どこまで進行しているかがわかる。すでに、自動配信されるSlackの通知に従っていれば業務が進むようになっている」(蒲原氏)
このようなSlackとSalesforceの連携は、Salesforceの「プロセスビルダー」に加えて、iPaaSの「Anyflow」、さらにRPAの「Robotic Crowd」の3種類を組み合わせて構築している。
蒲原氏は「将来的には社員がSalesforceを開かなくても、Slackだけで業務が進むことが理想だと考えている」と語る。上述したとおり、すでに一部の承認プロセスはSalesforceでビジネスプロセスを構築し、そのアクションをSlackから行えるようにしているが、Salesforceを基幹システムとしている利点を生かして、他の業務プロセスでもSlack連携を進めていく方針だ。
なおニューズピックスでは、電子サインの「DocuSign」やBIツールの「Tableau」もフル活用している。Salesforceではこれらのツールとの連携も発表しており、蒲原氏はその部分でも「大いに期待している」と述べた。「『転記』や『添付』をなくし、業務プロセスとコミュニケーションをつなぐことで、きれいにプロセスが流れるようにしていきたい」(蒲原氏)。