購買客は実店舗とオンラインの「シームレスな体験」求める、ゼブラのグローバル調査
小売業の6割以上がコロナ禍で「テクノロジー投資計画を加速」
2021年09月09日 07時00分更新
バーコードプリンタ/スキャナ、モバイルコンピュータなど自動認識システムの世界大手であるゼブラ・テクノロジーズ日本法人が、2021年9月7日、最新の「小売業界のテクノロジー改革に関するグローバル調査」結果を発表した。
この調査は購買客(買い物客)、小売店従業員、小売業界幹部の意識や行動を分析するもので、13回目となる今回は初めて新型コロナウイルス感染症流行下での調査実施となった。コロナ禍の経験を経て小売経営者の6割がテクノロジー支出計画を加速させ、また購買客側もテクノロジー活用を通じたショッピング体験向上を求めるなど、「購買客と小売業者双方の意識と行動に明確な変化が見られた」としている。
ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン 社長の古川正知氏は、同調査から明らかとなった3つの「コロナ禍で小売業が直面した課題」を取り上げ、説明した。
調査から見えてきた3つの変化、課題
今回発表された第13回グローバル調査は、2020年8月~9月の期間、北米/中南米/アジア太平洋(日本含む)/欧州/中東の16カ国で実施されたもの。小売を利用する消費者(購買客)4175人、小売業の意思決定者412人、店舗従業員577人に対して聞き取り調査を行っている。
オンラインと実店舗のシームレスな融合の加速
1つめの課題として取り上げられたのが「オンラインと実店舗のシームレスな融合の加速」だ。古川氏は、これまでははっきりと分かれていた「オンラインで購入する顧客」「実店舗で購入する顧客」の境界が薄れてきており、消費者はどちらでも都合の良いほうで「切り替えて」購入するようになっていると説明する。
これまでオンライン購買が進んでいなかった分野でも、オンライン化が著しく進んでいることもわかった。モバイル注文をしている消費者全体は前年比5ポイント増の72%だが、特に「食料品配送アプリ」については54%と前年比11ポイントの急増。さらに利用者の88%が「今後も利用する予定」としており、定着化が見込まれる。
購買客の購入/受け取り方法にも多様化が見られるという。消費者が選ぶ受け取り方法のトップ3は「オンラインで購入して自宅で受け取り」「店頭で購入(大型商品や在庫切れの場合は店舗から配送)」「オンラインで購入し、店頭で受け取る」となっており、小売業者側には臨機応変な対応が求められている。なお「即日配送に追加料金を支払ってもよい」とする購買客は84%で、前年比8ポイント増だった。
こうした急速な変化と課題に小売業はうまく適応できていない。購買客側の総合的な顧客満足度は、店頭購買、オンライン購買の双方で前年よりも5~6ポイントダウンしている。店舗では商品の選択肢や在庫状況への、オンラインでは送料や配達タイミング、返品/交換手続きへの不満が大きい。
実店舗でのピックアップ増加により在庫・返品管理が複雑化
上述した購買客の不満要素でも明らかなとおり、店舗における大きな課題の1つが「在庫切れ」だ。購買客が「何も購入せずに店を出る理由」の調査においては、トップの理由として「欲しい商品が在庫切れだった」が挙がっている。
しかも、コロナ禍と店舗/オンラインのシームレス化を通じて在庫切れの問題はさらに難しくなっていると古川氏は指摘した。米国を中心に、オンラインで注文し店頭で受け取る「BOPIS(ボピス、Buy Online, Pickup In Store)」が増加しているが、この場合は店舗にある商品在庫からピッキングをして客に渡すことになる。店頭販売に比べてオンライン注文の予測は難しく、店舗での在庫切れがより起きやすくなっているという。
小売業側の視点で見ると、「返品率の上昇」も課題だ。調査によると、5人に1人以上の購買客はオンラインで購入した商品を返品しているという。こうしたオンラインでの“返品サービス”を体験した購買客が、店舗にも同様のサービスを求めるようになっている。イレギュラーな対応となる返品処理は複雑であり、店舗従業員にとってはストレスだと古川氏は説明する。
「調査によると、57%の店員はこういった返品の処理に著しくストレスを感じている。返品を受け付けられるのかどうかの判断、返品を倉庫に戻すのかメーカーに戻すのかの判断など、イレギュラーな手続きが発生するためだ。これも店頭において大きな課題となっていることがわかる」
安全重視による非接触への対応
コロナ禍を通じて「安全性」を重視する傾向は加速した。74%の購買客は「テクノロジーがより安全な顧客体験に貢献する」と考えており、それはどの世代においても変わらないという。
店頭では「非接触」を実現するセルフレジ、キャッシュレス決済、パーソナルショッピングデバイス(購買客自身で購買商品を登録する携帯型端末)といったテクノロジーが活用されるようになったが、こうしたテクノロジーを利用する購買客の多くが「今後も利用を継続する予定」だと回答している。
