業務を変えるkintoneユーザー事例 第114回
「帰ってきてほしい」の声に応えた後継ぎが現場をノリノリに
鉄工所の三代目、Twitter仲間とkintoneアプリを作る
2021年08月11日 09時00分更新
どこからともなくやってくるTwitter上のkintoneユーザーが悩みを解決
「会議資料作成地獄」は常時30件程度の工事が走っている同社の悩みだ。
工程表を作成する生産管理の担当者は、営業に予定を聞きに行くのだが、すでにわかっていたのに予定変更が通知されなかったり、余裕があるのにすぐやってほしいと話したり、変更ないはずなのに実はあったり、といったことが多発する。
そんな予定が変わりまくるスケジュールとタスクをまとめた工程表が簡単にできるわけはなく、時間がかかるわりには、1~2週間程度先しか見えない。「(工程表を共有しても)全体的な忙しさがわからないので、結局工場長にしわ寄せがいく」という。乗冨氏が全体の工程表も作ってみたが、8時間くらいかかるため、2ヶ月に1回しかできなかった。これをkintoneに落とし込むことにした。
そして、このkintone化の過程を乗冨氏はTwitterにまめにつぶやく。そうするとTwitter上のkintoneユーザーがどこからともなく現れて、アプリ作りに役に立つ情報を教えてくれたという。「わりと速攻で課題が解決してしまう。やさしい世界だなあと思いました」と乗冨氏はコメント。結果3週間の試行錯誤で、シンプルながら物件ごとに進捗と工程が見えるアプリが完成したので、さっそく運用を開始することにした。
しかし、乗冨氏はここで造船所で失敗したときに言われた「もっと泥臭くやれ!」という言葉を思い出す。「現場に負担をかけないように、まずお前がやってみろと口を酸っぱくして教えられた」と語る乗冨氏は、入力は自分でやり、周りには紙ベースで“効果だけ”を実感してもらうことにした。名付けて「まずおいしい思いをしてもらって、説明会や雑談でジワジワ巻き込む」作戦である。
具体的には、kintoneからCSVファイルを書き出し、値をExcelファイルに貼り付け、工程会議資料と全体の工程表を紙で出力することにした。kintoneのおかげで、2時間かかっていた工程会議資料の作成は1分で済むようになったため、作業時間は約1/120に。同じく8時間以上かけていた全体の工程表も1/500の時間で作成でき、2ヶ月先まで忙しさが見えるようになった。
社内勉強会がうまくいった話、部長から使い方を聞きたいと呼び出された話など、作戦の途中レポートは、逐一Twitterにアップ。モーメントの機能を使って時系列で読めるようにしたところ、先輩kintoneのユーザーやサイボウズの社員たちに褒められ、kintoneを始める後継ぎ仲間まで現れた。さらにkintone Cafe JAPANに登壇したり、後継ぎ仲間たちとkintone勉強会をやるようになり、自らの学びを深める機会も得られたという。
ここでの学びも実践。お知らせ掲示板からワンクリックで見たい情報にアクセスできるようにした結果、担当者がリアルタイムに入力できるようになった。見える化アプリについても、新条件付き書式プラグイン(サイボウズ)を使って見やすくしたり、日程・工程・稼働表作成プラグイン(TIS)でガントチャートのようなUIに整えた。
ここまで来て、ようやく工場長の頭の中を見える化できるようになり、工場長一人で決めてきたことをみんなで決める「製造工事部作戦会議」がスタートしたという。「スタートしたのが2021年1月で、工場長の定年が3月だったので、わりとギリギリだった」と乗冨氏は振り返る。
新規事業の宣伝で始めたTwitterからすべてが始まった
もともと乗冨氏のTwitterは自身が手がけていた新規事業「ノリノリプロジェクト」の宣伝がメインだった。kintone開発の支援となったこのTwitterでの発信が、このあと意外な展開を見せる。
ノリノリプロジェクトの発端は、乗冨鉄工所が誇るメタルクリエイターが異業種の課題に取り組むことで、今までありそうでなかったプロダクトを生み出せるのではないかというものだ。過去には、漁師のコンテナをワンタッチで入れられる釣り具や工場で扱う樽を軽々扱えるキャリー、地元のバス停のリニューアルなど、まさにメタルクリエイターならではの作品がいろいろ生み出されてきたという。
今まではこうしたプロダクトを乗冨氏が手売りしてきたが、Twitterによって仲間とのコラボが進むようになった。これにより、メタルクリエイターと全国の町工場仲間、そして手の空いた元工場長がプロダクトを生産し、デザイナーが監修し、大学の商学部のゼミメンバーがイベントや広報、営業を手がけるようになった。Webサイトやインスタ、YouTubeなども始め、プロジェクト全体もkintoneで管理するようになった。Twitter仲間によるプロジェクトが組織の枠を超えて動き出したわけだ。
その結果、初のアウトドアプロダクト「スライドゴトク」がヒット。全国16社、26店舗+ECサイトで発売されるように。「正直、今や生産が追いつかないレベルまでになり、テレビや新聞でも取り上げられるようになった」(乗冨氏)という。
Twitterとkintoneは一見するとずいぶん違う。しかし、乗冨氏は「kintoneとTwitterってけっこう似ている。もともとあった情報をオープンに整理して見せることでバラバラだった人やモノの思いがまとまり、なにかを生み出すことができる」と指摘する。その上で、今後もメタルクリエイターのパワーと、町工場、メディア、デザイナー、行政、学校、金融機関などをkintoneとTwitterでつなげてノリノリなプロダクトを作り、鉄工所が「クリエイティブのハブ」になっていくことに貢献していきたいという。
乗冨氏が最後に披露したのは、「発信すればなにかが起こる」というシンプルなメッセージだ。「私はこちょこちょTwitterでつぶやいているだけでしたが、いろいろな人の後押しで今日ここまで来られました。kintoneを使っているのであれば、なんらか発信することで新たな展開が生み出していけると思います」とまとめた。
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