このページの本文へ

KDDIが「鉄道路線 5G化」を宣言! 山手線に設置された5G用アンテナをチェック

2021年07月05日 13時00分更新

文● 村元正剛(ゴーズ) 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 KDDIが6月30日に、東京の山手線駅と、大阪環状線の全駅のホームの5Gエリア化を実現しました。また同日、2021年度末までにJR・私鉄を含む関東21路線、関西5路線の主要区間のホーム、駅構内および駅間を走行中の車内での5Gエリア化をめざすことを発表しました。

6月30日までに、JR東日本の山手線全30駅とJR西日本の大阪環状線全19駅に5Gエリア化を実現

各駅の5G対応状況は、auのウェブサイトで確認可能(https://www.au.com/mobile/area/5g/station/)。今後、拡大予定の鉄道路線も確認できる

 7月2日に、KDDIの「鉄道路線 5G化」について、メディア向けの説明会が開催されました。まず、パーソナル事業本部 次世代ビジネス企画部の部長・長谷川渡氏から「鉄道路線 5G化」の主な取り組みについて説明を受けました。

KDDI パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部 次世代ビジネス企画部の部長・長谷川渡氏

 長谷川氏によると、駅のホームや構内だけでなく、駅間の5Gエリア化も進め、乗車中でも5Gを利用できる環境を整えているとのこと。エリアは目には見えないので、5Gエリアにいることを実感できるアプリケーションも用意。3DのスヌーピーがARで表示されるものですが、「3Dオブジェクトのクオリティーが格段に上がっているので、高速・大容量の5Gのメリットを実感できる」とのこと。

駅付近や商業施設などの5Gエリアで、3Dのスヌーピーを表示させて、写真や動画を撮ったりできる。今後、異なるキャラクターの採用や、広告などでの利用も検討しているという

スマホに「XR CHANNEL」というアプリをインストールして体験可能。au 5G限定コンテンツが用意されているが、4Gスマホで楽しめるコンテンツも提供。現実世界に重ねてスヌーピーとウッドストックが現れて、音楽に合わせて踊る姿を楽しめる。写真や動画を撮ることも可能

位置情報と空間認識の技術が用いられており、近寄るとスヌーピーが大きく表示され、回り込むと後ろ姿を見られる

 続いて、5Gネットワークを構築する技術部門の担当者から、5Gの特性とエリア設計についての説明がありました。

KDDIエンジニアリング モバイル設計本部 エリア設計部の加藤純人氏

 KDDIエンジニアリング エリア設計部の加藤純人氏によると、5Gに使われる周波数帯には28GHz帯の「ミリ波」、3.7GHz帯と4GHzを用いる「Sub6」があり、さらに既存の4G LTEの周波数帯もNR(New Radio)規格を適用させて、5Gエリアの拡張を進めているとのこと。つまり、新しい周波数帯によって高速・大容量化を実現し、4G LTEからの転用によって、エリアを拡大しているわけです。

5Gにはミリ波、Sub6だけでなく、4Gで使われる周波数帯も使われている

 モバイル通信に使われる周波数は、高いほど直進性が高く、障害物などによって減衰しやすい傾向を持ち、逆に低い周波数は電波が回り込みやすい性質を持ちます。その特性について、加藤氏は「低周波数帯は音のイメージ、高周波数帯は光のイメージ」と説明していました。

周波数によって電波の特性が異なる

低周波数帯では壁の向こう側でもある程度の音は聞こえるように、電波もある程度届く。高周波数帯では光が壁に遮断されて影になるように、電波は届きにくい

 今回の「鉄道路線 5G化」は、5Gエリアを広げる取り組みの一つですが、ほかに商業施設の5Gエリア化も進めていて、人が多く集まる場所の街灯や地上用変圧器など、今までアンテナを設置していなかった場所にも、5G用のアンテナの設置を進めているそうです。

5Gに使われる新周波数帯の直進性が強いので、多くの人が利用する場所に向けて電波を発している

 なお、5G向けの新周波数帯は携帯電話だけに使われるわけではありません。他の事業者との共用のため、他の事業に影響を与える干渉にも配慮する必要があるそう。その干渉を回避する方法などについて、エンジニアリング推進本部 エリア品質管理部の小野田倫之氏から説明を受けました。

KDDI 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 エリア品質管理部 通信品質強化G 小野田 倫之氏

干渉を避けるために、アンテナの向きを変えたり、指向性を変えたりするなどの方策が取られるが、状況によってはアンテナの設置場所自体を見直すこともあるという

5Gエリアを広げつつ、通信品質を向上させる取り組みも行なわれている

 他事業者への干渉は基地局のすぐ近くで発生するわけではなく、数十kmくらい離れた場所でも起きるとのこと。ということもあり、5Gエリアの構築は従来のエリア構築以上に遥かに難しいと言います。

 説明会の後、JR東京駅の山手線ホームに設置された5G用のアンテナを見学させてもらいました。山手線では、3.7GHzと4GをNR化した3.4GHzのアンテナを設置して、5Gエリア化を実現しているとのこと。駅にアンテナを設置する際も、既存の免許人への干渉抑制を考慮しているそうです。

写真の中央の上の方に写っているグレイの板を持つ装置が3.7GHz用のアンテナ

アンテナを下から見上げてみた

3.7GHz用のアンテナから、さほど離れていない場所に3.4GHz用のアンテナがあった

 筆者が自身のau 5Gスマホ(OPPO Find X2 Pro)で通信速度を計測してみたところ、アンテナの近くでは1Gbpsを超える実行速度を記録した。山手線の駅のホームは、すでに絶好のダウンロードスポットになっていると言っていいでしょう。

東京駅の山手線ホームで通信速度を測ったところ、概ね700Mbps~1.1Gbpsの下り速度を記録した

 なお、駅間の5Gエリア化は、JRの敷地内にアンテナを設置しているわけでなく、沿線の建物に設置した基地局によってエリア化を実現しているそうです。「鉄道路線 5G化」の今後の展開にも期待しましょう。

■関連サイト

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン