東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部ネットワーク推進室(旧 次世代通信推進課note)連動企画 第25回

【連載】データ利活用実証プロジェクト報告 5/5(NEC)

文●次世代通信推進課

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※新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。

新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省や首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。

 東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部です。(旧 次世代通信推進課note)。デジタルサービス局は、デジタルの力を活用した行政を総合的に推進し、都政のQOSを飛躍的に向上させるため、新たに設置した組織です。その中で、ネットワーク推進課は、東京の成長戦略やICT利活用の更なる推進のため、2019年(平成31年)4月に新たに設置された組織です。その中で、次世代通信推進課は、TOKYO Data Highwayの構築を推進し、いつでも、誰でも、どこでも「つながる東京」の実現に向け、取り組んでいます。

 都民の皆様がどこにいてもサクサクつながる環境を構築するため、全国初となる5Gアンテナ基地局を搭載するスマートポールの試行設置や通信事業者が5Gアンテナ基地局を設置しやすいように、行政財産を開放するなど様々な取組みを展開しています。こうした日々の取組みを都民の皆様に情報発信していきます。

 次世代通信推進課の隣のチームが昨年実施していた「データ利活用実証プロジェクト」の報告の全5回シリーズの最終回として、今回はセブン‐イレブン・ジャパン、日通総合研究所、Agoop、NTTデータの協力の元、日本電気(以下、NEC)が行った、「風水害時の人流・SNS分析によるリアルタイム防災マップシミュレーション」の実証プロジェクトをご紹介します。

前回の紹介記事はこちら。

【連載】都市のデジタルツインって!? ―都営大江戸線都庁前駅構内の3D点群データ収集とオープンデータの取組―

※過去の連載記事はこちら:東京都 デジタルサービス局 デジタルサービス推進部ネットワーク推進室(旧 次世代通信推進課note)連動企画

プロジェクト概要

 今回の防災分野の実証プロジェクトは、台風や大雨で道路が浸水・冠水するなどの風水害が発生した時でも、人流データやツイッター投稿等のSNS情報を活用することで、災害発生箇所を避けて、安全かつスムーズに目的地まで移動するためのルートを提示するものです。

 新型コロナの影響により各地の人出の情報が注目されていますが、今回はこの人流データを活用し、人流実績のある道路を浸水・冠水等の被害が発生していない歩行者や車両が通行可能なルートであると想定し、直近に人流実績があるルートを推奨します。

 またSNS情報を活用することで、被災地滞在者の目的地となる避難所の混雑状況や河川の増水状況など、目的地やそのルート周辺の環境を把握することで、目的地の決定やより安全な迂回ルートの選択に繋がります。

 従来は、行政が提供している防災マップやハザードマップなどの静的な情報を移動ルートの参考にしていましたが、都市の再開発などによりまちやインフラの状況が目まぐるしく変化し、また昨今風水害が深刻化する中、被害想定区域を防災マップやハザードマップに迅速に反映することは困難です。

 こうした結果、被災地滞在者は当初想定していた避難ルートが使えずに引き返したり(下図参照)、物流事業者も予定していた物資搬送ルートが通れず引き返したりする事態が発生しています。

 こうした背景を踏まえ、今回のプロジェクトでは、NECが開発中のルートシミュレーションを行うアプリケーションを活用し、従来の防災マップやハザードマップといった行政データに加えて、人流やSNS情報も勘案した目的地までのルートを作成することで、発災時に、物流事業者や被災地滞在者に対して、災害発生箇所を避けたより安全な物資搬送・避難ルートの情報を提供することを目標としています。

 今回の実証では、まずはシミュレーションの精度を確認するため、2019年10月12、13日の台風19号上陸時を対象期間として設定し、その間の人流データやSNS情報を活用しています。

 また、シミュレーションにより導出されたルートが、しっかりと災害発生箇所を避けられているかどうか検証するため、シミュレーションの対象としている区の防災担当者の協力のもと、当時の浸水・冠水の被害実績に関する情報を提供いただき、アプリケーションに取り込めるよう加工して活用しました。

 シミュレーションの結果、様々なデータを基に導出されたルートと被害実績を同じマップ上に重ね合わせて検証してみると、きちんと浸水・冠水被害のあったエリアを避けてルート選定できていることが確認できました。

シミュレーション結果の活用可能性をユーザー候補にヒアリング

 このシミュレーション結果を区の防災担当者や物流・小売事業者の方々に説明させていただき、サービス化された場合の活用意向や今後の課題についてヒアリングを行い、色々なご意見を頂きました。

 区の防災担当者からは、シミュレーションから得られたルート情報を避難経路として発信することについて、「情報提示するのであれば100%に近い精度がないと難しい、正確な裏付けが必要」、「発災直後に優先的に確認すべき場所の検討には使えるのではないか」等のご意見を頂きました。

 また、物流・小売事業者の方々からは、発災時の物資輸送の際に利用するためには、人流だけでなく車両の通行実績や道路通行止め・解除予測の情報など掛け合わせるデータを充実させることでシミュレーションの精度が上がり、利用可能性も高まるということが確認できました。

終わりに

 最後に今回の実証プロジェクトを通じて気付いたことをいくつか書かせていただきます。

 まず1点目は、発災時における民間データの有用性についてです。

 発災時、行政機関が避難者対応等が優先される中、1つ1つの災害発生現場の状況を正確に把握し、情報発信することは困難です。

 人流やSNS情報は色々な分野において活用可能性がありますが、特に防災分野においては、行政としてリアルタイムに現場の状況を把握することが難しい中、人流データやSNS情報等の民間データを主軸に目的地までのルート情報を導出することは有用であり、今後の社会実装が期待される領域だと感じました。

 2点目は行政データの利用価値についてです。

 今回、シミュレーションにより災害発生箇所を避けたルートを提示できているかどうか検証するため、区の防災担当者から浸水・冠水したエリアの被害実績の情報をいただき、活用しています。しかし、それらの情報はPDFデータとして保存されており、アプリケーションに読み込ませるには事前処理が必要になります。同様にハザードマップ等もPDFで保管されているものが多いかと思います。

 こうした情報がデジタル化され、機械判読可能なオープンデータとして公開されることにより、今回のシミュレーションに限らず、色々なシーンで利用されるポテンシャルがあると考えています。

 今回の実証プロジェクトの結果を広く発信し、こうした民間・行政のデータの有用性が再認識されることで、データ流通・利活用の活性化に繋げていきたいと思います。

 ◆この記事は、下記より転載しています
 https://note.com/smart_tokyo