0.1gでも削り、コンマ数ミリで場所を奪い合う!
新VAIO Zのパフォーマンスにかける情熱バトル(開発者インタビュー)
内部構造のスペース争いが勃発
――後方排気のほか底面に穴を開けたり、冷却でさまざまな検討されたそうですが、そのとき努力されたところはありますか?
久富 「試作に入ってからの大きな試行錯誤は底面の穴ぐらいですね。ただ、シミュレーションはかなり回しました。試作に入る前に数百回実施しています。排気の方向を変えたり、空気の流れがどうなのかをみたり、ファンの上の寸法が0.1ミリ単位で狭めたらどうなるか、ファンを大きくしたらどうか……などです。シミュレーションを一晩まわして、最適な値を出し、その結果をもとに筐体内の空間をどう確保するか、メカ設計の担当者とバトルしました。
――スペースの奪い合いってことですね。
久富 「そうですね。ファンはあと0.5mm分厚いものを置きたいとずっと言っていたんですが(笑)」
――コンマ何mm単位の争いなんですね!
久富 「0.5mmはかなり大きいですよ。ファンの厚さはいま6mmなので。0.5mm違うと10%も変わりますから」
板倉 「新しいVAIO Zでは、キーボードのストロークを深くしました。でも本体の厚さは変えずにむしろ薄くします……と。つまり、その分のしわ寄せが筐体の内部にくるわけですね。結果、コンマ何mmの争いが始まります。ただ、ボトム部分がカーボンファイバーになったことで、樹脂に比べてコンマ数ミリ薄くなったことが救いにはなっています」
――キーボードのストロークを深くしたいと聞いたときはショックでしたか?
板倉 「ショックということはないですよ。ストロークを深くしたいという声は聞いていて、その判断自体は正しいので。ただ、筐体厚を上げず、物理的に深くなるものを、内部構造を犠牲にしてやるのはどういうこととなるじゃないですか。もやもやはしました(笑)」
久富 「私は半分メカ設計のところにいて、最初の設計を出すまでは自分でCADも描いているのです。そのとき、メカに干渉するように描いていて提出していました(笑)。お前が避けろと。流石にそこまで干渉できないから、削っていったのですが(笑)」
板倉 「結局このサイズでやるんですよね、ということになりますよね(笑)」
――吸排気に関しては、結局後方吸気でサイドから排気で決着が付いたんですね。
久富 「試作はしていなかったのですが、想定より良かったと思っています」
板倉 「ファンの性能が予定より良かったので助かりましたね」
――ファンを制作した日本電産には、どのようにお願いしたんですか?
久富 「これぐらいのパフォーマンスがほしいと注文しました。正直、要求を満たすことはできないと思っていたのですが、期待以上のものができたという感じです(笑)」
――排熱口の形状が独特だと思ったのですが、形状によって排気性能や騒音面で差が出たりはするんですか?
久富 「いや、それはないですね。排気性能で変わるのは、開口率がいちばんですね。ただ、形状によっては渦ができてしまいインピーダンスが高くなって、ファンも多めに回ってしまうので、悪影響が出ないように確認はしています」
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