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0.1gでも削り、コンマ数ミリで場所を奪い合う!

新VAIO Zのパフォーマンスにかける情熱バトル(開発者インタビュー)

文●飯島範久 編集●ASCII.jp編集部

提供: VAIO

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 新しいVAIO Zの目玉は4面カーボンボディだけではない。ゲーミングノート向けのCore i7-11375Hプロセッサーを「薄軽モバイル機」に搭載したこともVAIOの技術力の高さを示した。ただ、VAIOの説明は「これまでVAIO TruePerformance(VTP)などで培ってきた技術を基にしており、想定の範囲内だった」と控えめだ。実際はどうだったのか。開発に携わった3人にお話を伺った。

冷却ファンの数は6基、10基の可能性もあった?

――まずは、これまでの皆さんのVAIOへの関わりからお伺いします。

▲PC事業本部エンジニアリング統括部デバイスエンジニアリンググループ プロジェクトリーダー課 プロジェクトリーダーの古川 恵一氏

古川 恵一氏(以下古川) 「私自身はもともと液晶ディスプレイ関係の設計を担当してきました。LEDバックライトを初搭載した『type T(TXシリーズ)』など、さまざまな製品に関わりましたが、『type S(SZシリーズ)』から本格的に設計に携わり、2015年の『VAIO Z』では液晶ディスプレイをイチから開発しました。今回のZについては、PL(プロジェクトリーダー)課の課長からある日突然呼ばれて『VAIO Zをやってみないか』と持ち掛けられ、2つ返事で『やらせてください』と答えたのが、エンジニアリンググループのPLを始めたきっかけです」

写真右が同グループ システム設計課 エレクトリカル プロジェクトリーダーの板倉 功周氏。左が同グループ システム設計課 チーフサーマルエンジニアの久富 寛氏

板倉 功周氏(以下板倉) 「私は、2011年のZシリーズから本格的に携わっています。当時Power Media Dockとの接続インターフェースを担当していました。2013年の『VAIO Duo 13』では電源を担当しており、ソニーからVAIO株式会社になって以降も、Sシリーズの電源や充電制御を担当しています。新しいVAIO Zでは電気設計のPLを担当しました」

久富 寛氏(以下久富) 「VAIOシリーズには2007年11月より携わり、2008年発売のモデルから熱設計を担当してきました。『type C』シリーズや『type A(AW)、Fシリーズ(FW)、Sシリーズ(Sシリーズ15、Sシリーズ13)』シリーズなどです。VAIO株式会社になってからも、熱設計1本でやってきています」

――新しいVAIO Zをスタートさせた当初は、どういうスペックで行こうと考えていたのでしょう。

板倉 「すべてのプロジェクトが始まる前に、私と古川で話をしました。2019年5月ごろです。SシリーズでVTPをやり、(Tiger Lakeの中でもTDPが12~28Wと高い)UP3の採用を検討していたので、それをベースにしてぶっ飛ばそうと考えていました。

 合わせて冷却方法の検討も始め、私と久富で『いままでにない効率的な冷却システムを後方排気で組めるのではないか』『ファンを4基にしたらもっと効率的に冷やせるのでは?』といった話をしていました。ただ、ファンを4基にすると電力も面積も必要になるため、結局は2基で落ち着きましたが。これが同年の夏ごろの話になります」

――想像していた以上に早いタイミングでスタートを切られたのですね。

古川 「プロジェクトとしては始まっていないけれど、検討だけは始まっていた段階ですね。現行製品の次のジェネレーションとして、世代交代=新しい風を入れようというところから始まっています。その中の1つとして、VAIO Zを足がかりに後継モデルを創っていこうとしたのが最初の構想ですね」

――CPUをどうするかという検討はいろいろしていたようですが、ファンを4基積むというところまで検討していたのは面白いですね。素人考えでは、大きいファンを1つのほうが静音性も上がって効率が良さそうだと思ってしまいますが。

久富 「デスクトップPCのような軸流ファンでは、1つのファンを大きくしたほうが静かになります。しかし、ノートPCに積んでいる遠心ファンの場合は、そうではないんです。社内でも『大きいファンのほうがいいのでは』という話が出るのですが、新しいVAIO ZではTDPが35Wに増えました。Sシリーズは15Wなので、ざっくり2倍の風が必要です。2倍の風を外に出そうとすると、シンプルにファンを2つ積むほうが効率がいいんです。軸流ファンであれば、面積が2倍のファンを積むだけで済みますが、大きな遠心ファン1つで済ませようとすると、排気口のサイズがだいたい2倍、ファンのサイズでは4倍となり、光学ディスクドライブと同じぐらいのサイズになってしまいます。

 1つのファンで2倍の回転速度にするという解決策もあるのですが、そうすると騒音値が20~30dBAは上がってしまいます。一方、ファンを2つに増やす場合は+3dBA程度で済みます。ファンを1.4倍の面積にして、回転数を1.4倍にするといったバランスを取ることもできますが、それでも7dBA程度は増えてしまいます。

 ノートPCは中身が詰まっているため、空気抵抗も大きくなります。そこで遠心ファンを使うのですが、大きいファンを使うよりは、小さいファンをたくさん並べたほうが効率はいいんですね。新しいプロジェクトがスタートすると私はいつも、『6個積んだら』『10個積んだら』という提案をするのですが、結局は今回も常識的な2個に落ち着きました」

――もしファンを4基にしたら、現行サイズよりも小さいものにできたのですか?

久富 「そうですね。排気口のサイズが少し大きくなるかもしれませんが、面積的にはそうなりますね」

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