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山根博士の海外モバイル通信 第544回

スマートウォッチにヘッドフォンを内蔵、進化する中華ウェアラブル端末

2021年04月26日 10時00分更新

文● 山根康宏 編集●ASCII

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中国で次々と生まれる時計内蔵型ワイヤレスヘッドフォン

 ウェアラブルデバイス市場の拡大をここ数年けん引しているのはAirPodsなどの小型のワイヤレスヘッドフォンです。Hearable(ヒヤラブル)と海外では呼ばれることもありますが、一般的には「Pods」や「Buds」と呼ぶほうがなじみがあるでしょう。

 日本に参入したrealmeが「realme Buds Q」などワイヤレスヘッドフォンやスマートウォッチを最初に投入するのも、スマートフォン市場はすでに飽和しており競争が厳しく、それに対してウェアラブルデバイスはまだまだ市場が伸びており参入余地があると判断したからでしょう。

realmeは日本でウェアラブルデバイスの展開を始めた

 このワイヤレスヘッドフォンは世界中に数百、いやそれ以上のメーカーがあります。ECサイトを見れば名も知らぬマイナーメーカーの製品も多く、中国製のノーブランド品もよくみかけます。筆者の住む香港でも安いBudsなら500円くらいで投げ売りされているモノもあるなど、激安品も出てきているほどです(もちろん音質は劣ります)。

 すでにマイナーメーカーの製品は価格競争に巻き込まれており、値段を下げるだけでは売れない状況になっています。そこで出てきた新しいアイディアがワイヤレスヘッドフォンを「腕に巻く」スタイル。それもただ腕に装着するのではなく、スマートウォッチやリストバンドデバイスの中に、あの小型のPodsやBudsを内蔵している製品です。

Beskaciのスマートウォッチの中にヘッドフォンを内蔵する製品

 見た目はスマートウォッチですが、メイン機能としてはリストバンドデバイスと同様の活動量計であり、スマートフォンからの通知が受けられる程度とそれほど高性能ではありません。しかし腕にはめておけばいつでもヘッドフォンを取り出して聴けますし、収納して充電することも可能です。さらに時間もわかるし通知も受けられるとなれば便利な製品なのではないでしょうか。

 ヘッドフォンの収納方法はメーカーにより様々です。上の写真のBeskaciというメーカーの製品はスマートウォッチのディスプレーを上に開くと内部にヘッドフォンが収納されています。価格は599元(約1万円)。またHonvveというメーカーの製品はスマートウォッチ側面にヘッドフォンを収納させます。こちらは1599元(約2万7000円)と高価ですが、質感や音質はそれだけいいのかもしれません。

側面にヘッドフォンを収納するHonvveの製品

 そしてアップル製品のようなこちらは本体の上を開けてヘッドフォンを収納します。価格は699元(約1万2000円)。いずれもメーカー名があったりなかったりで、直接の販売ページがないなど探すのはやや大変かもしれません。中国のECサイト(Taobaoなど)で「藍牙手表耳機二合一」などと検索すると、それっぽい製品が出てきます。藍牙=Bluetooth、手表=腕時計、耳機=ヘッドフォン、二合一=2つを1つに合体型、という意味です。

こちらもイヤホン内蔵型

Taobaoで「藍牙手表耳機二合一」で検索した結果

 スマートウォッチも格安品が増えており、ヘッドフォンも価格競争が厳しい中、スマートウォッチ内蔵型のヘッドフォンは「2台を1台にできる」ということから、やや高めの価格設定でも十分売れているようです。とはいえすでにスマートウォッチをしている人にとっては、もう1つスマートウォッチを腕にはめる気にはなれないでしょう。そこでサイズがスリムなリストバンドデバイスにヘッドフォンを内蔵した製品もあります。前述のHonvveのリストバンドは色と言いデザインと言い、大手メーカー品とそん色のない製品に見えます。なお価格は699元(約1万2000円です)。

Honvveはリストバンド型の製品も出している

 この手の製品を買わずとも、AirPodsなどを腕に装着できるベルトが販売されていますが、筆者は使っている人を見たことがありません。ただ腕に取り付けるだけではカバンの中に入れても使い勝手はあまり変わらないのでしょう。やはり腕に装着するのであれば、時計や活動量計などの機能があったほうが便利かな、と思ってしまいます。

AirPodsケースを手首に巻けるバンド。使っている人はいるのだろうか

 これらのヘッドフォン内蔵型スマートウォッチやリストバンド、いずれはシャオミなどが類似の製品を出してくるかもしれません。さすがにApple WatchにAirPodsが内蔵できるモデルが出てくることはないでしょう。とはいえ中国メーカーのアイディア次第では、ウェアラブルデバイス市場をけん引する製品が融合し、新しい市場を生み出すかもしれません。

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