2021年オススメ新作時計特集 第4回
進化した「エル・プリメロ」ムーブを搭載!
【2021年オススメ新作時計】クロノグラフの名門ゼニスの最新作「クロノマスター スポーツ」
2021年04月01日 12時00分更新
オススメしたい2021年の新作モデルと題して今回紹介するのは、タグ・ホイヤーなどと並ぶクロノグラフの名門「ゼニス」の最新作「クロノマスター スポーツ」です。
ゼニスのクロノグラフはモデル名と並んで、搭載されているムーブメントの「エル・プリメロ」という名前でもよく知られています。時計愛好家の間では、モデル名よりもこちらの方に注目する人が多いのです。それは、この機械式のクロノグラフムーブメントが、さまざまな伝説に彩られているからです。
高振動自動クロノグラフムーブメント「エル・プリメロ 3600」搭載
エル・プリメロとはスペイン語で「No.1」という言葉。1969年という年は、世界最初の自動巻きムーブメントが開発され、セイコーが世界最初のクォーツ腕時計を発売した、ふたつの意味でエポックメイキングな年でした。
エル・プリメロは、この年に登場した「世界初」の、3つの自動巻きクロノグラフムーブメントのひとつでした。残りのひとつはホイヤー、ブライトリング、ビューレン、ハミルトン、デュボワ・デプラというスイスの時計会社が共同で開発した「クロノマチック」。さらにもうひとつがセイコーの「キャリバー6139」です。
その中でもエル・プリメロは、スペックが際立った存在でした。ほかの2つのムーブメントより、テンプの振動数が高かったのです。普通の時計では、実は振動数だけで性能を推し量ることはできません。クロノグラフでは、振動数は性能に直結します。振動数で「1秒の何分の1秒まで測れるか」が振動数で変わるのです。
エル・プリメロのテンプの振動数は3万6000振動/時。これを1時間=3600秒で割ると10。つまりエル・プリメロは、1/10秒単位でのクロノグラフ計測ができることを意味しています。これは他のムーブメントよりも抜群に優れた性能です。この点が、エル・プリメロが「伝説の」と呼ばれる理由のひとつです。
さらにエル・プリメロにはいくつかの、驚きの伝説があります。そのひとつが「消滅」を奇跡的に免れ、現代によみがえったという伝説です。
クォーツ時計の登場で、この動きに対応が遅れたスイスのメーカーは1970年代の半ば頃から存続の危機を迎え、数多くのメーカーが買収され、経営者が変わりました。ゼニスも買収され新経営者から「機械式時計に関連する設備はすべて廃棄せよ」との指示が下されます。
このとき、指示通りにしていたら、ゼニスは時計ブランドとして消滅していたか、今とはまったく違うブランドになっていたでしょう。ところがこの指示に密かに従わなかったひとりの時計技術者が居ました。彼はエル・プリメロの設計図や製造のための工具や金型などを廃棄せず、こっそり工場の屋根裏部屋に隠します。
その後、機械式時計ブームが始まった1980年代初め、ほかの時計ブランドからの「エル・プリメロの復活」を望む声が上がります。そのとき、設計図や治具があったおかげで1984年、エル・プリメロは復活しました。
新しい「クロノマスター スポーツ」は、エル・プリメロの最新仕様「エル・プリメロ 3600」を搭載しています。新しいムーブメントは歯車に最新の素材と技術を採用。さらに、これまでにない仕組みでクロノグラフ機構を駆動して、パワーリザーブ(ぜんまいの時速時間)を約60時間に伸ばしています。
このエル・プリメロに加えて、クロノグラフの王道を行く文字盤のデザイン。さらに従来よりも格段に美しくきらめくケースや文字盤のインデックスなど、ディテールの仕上げもこのモデルをオススメする理由です。スポーティであると同時に華やかでもある。そんなクロノグラフがほしい人にオススメです。
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