前回は、最新のストリーミングの話題として高音質ストリーミングを取り上げたが、今回はそのストリーミングで使われるコーデックの最新トピックスをまとめようと思う。高ビットレートの話から低ビットレートの方にも話を広げる。
まず、コーデック(CODEC)とは、COmpress/DECompressの略だ。音楽や映像など、大容量のデータを小さくするための圧縮/伸長方式のことをいう。例えば、MP3、AAC、FLACなどがよく知られていると思う。混同しやすいのだが、コーデックはあくまで圧縮の仕方である。本来はファイル形式とは別物である。ファイル形式は「容器の規格」であり、コーデックは「詰め方」だ。その容器にどう詰めれば効率よく、データを沢山入れられるかを決めるのがコーデックであり、当然どう詰めたか分からなければ元に戻しようもない。
ソースの情報をどれだけ損なわずに伝えるが音楽用のコーデック
音楽向けのコーデックは、大きく2種類がある。完全に元の状態に戻せる「可逆(ロスレス)形式」と、元データを削ってでも、より沢山のデータを詰める「非可逆(ロッシー)形式」だ。前者は音が良いが圧縮率は高くない。後者はその逆であり、元のデータへの完全な復元ができない。
ロスレス形式のコーデックでよく用いられるのがFLACだ。ロッシー形式ではMP3やAACがある。しかし、実際にはもっとたくさんのコーデックがあり、様々な用途に使われている。その中でもストリーミングに向いたコーデックとして最近注目されているのがOpusだ。Opusは完全オープン、ロイヤルティーフリーのコーデックである。
Amazon Musicを使用しているユーザーでHDのプランに契約していない場合、HDプランに契約中でも品質設定で「標準」を選択していたり、「自動」を選択して回線速度が遅かったりする場合には、Opusで圧縮したデータがやり取りされる。どのコーデックが使われているかは、Amazon Musicアプリで「HD」などと表示された品質表示のアイコンをタッチすると確認できる。なお、Amazon Music HDに契約中で高品質配信を選択している場合はロスレスのFLACが使用される。
Opusは、MP3のような非可逆のコーデックだがより新しく、MP3にはない様々な特徴を有している。
まずは低いビットレートでの音質が良いということ。これは回線速度が低くなりやすい、モバイル通信環境でのストリーミングに向いていると言える。もうひとつの特徴は、レイテンシー(遅延)が低いということだ。これはゲームや動画などで有利だ。
低ビットレートに強いというOpusの利点は、開発元のサイトで確認できる。コーデック別の音質の聴き比べができるので、実際に自分で試してみるとよく分かる。文中の「Music Samples」というタイトルの下の再生バーのところで比較が可能だ。
96kbpsでMP3とOpusを比較した場合でも、Opusの方がやや鮮明な音質であるのがわかるが、違いはオーディオマニアがこだわるくらいの小さなものだ。だが、32kbpsで両者を比較してみると、誰にでもすぐ分かるほどの大きな違いになる。MP3ではもはや音楽とは呼べない音質だが、Opusはこの低いビットレートでも音楽として聞くことができる品質を保っている。
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