【後編】声優・緒方恵美さんロングインタビュー
緒方恵美さんの覚悟「完売しても200万赤字。でも続けなきゃ滅ぶ」
2021年04月25日 17時00分更新
続けることで、つないでいく
緒方 でも、だからといって、ライブという現場を切り捨ててしまうのではなく継続――つないでいくことが大事だと思っています。
配信も含めた「ライブ」は誰でもできるわけじゃありません。だから、できる人がやるしかない。とにかくいまは、音楽ができる場所を守る。配信も含めてやり方をつないでいく。続けていれば、後に続く人が出てくれたり、お客さんにも伝わっていく。そう信じて、やれる限りはやっていきたい。
―― このコロナ禍で活動を続ける最終的な理由は、「場を守る」というところに行き着くわけですね。
緒方 はい。お客さんが、自分が作ったものに触れて、楽しくなったり、心が動いたり、背中を押されたと思ってくれたら本当にうれしい。お客さんに笑顔を届けるためにこの仕事を続けているのだと思います。
―― 最後に、この企画記事では「愛着が生まれるコンテンツとは何か?」を追っています。お客さんにとって愛着が生まれるのはどんな場なのか、ご意見がありましたらお聞かせ下さい。
吉江 僕が思うのは、現在のお客さんにとって音楽は「体験」に紐付いているものだなということです。
たとえば新卒の面接などで若い人と接するときに「あなたにとってのこの1曲」的なことを聞くんですけど、受験勉強中に聞いて元気をもらったとか、ライブに行ってすごく感動したとか、楽曲が何らかの個人的な体験とセットで語られるのです。
緒方さんのライブも、ライブという大きな体験がありつつ、帰り道にTwitterで感想をつぶやくこともまた、お客さんにとっての「体験の1つ」であって、その行為こそが愛着につながるのかな、という気がしています。
緒方 確かに、私の仕事はお客さんに「体験」をしてもらうこと。楽しんでいただくことだと思います。
私にとって「愛着を持つ体験」というのは、「想像力と共感と共鳴」。表現をする側は、お客さんにどんな思いを届けたいかを想像するし、たとえば配信であれば見ているお客さんのことを頭の中で想像します。想像しながら届けようとすれば必ずお客さんに届くし、共感したり、共鳴したりしてくれる。
―― 現在は、コロナ禍でライブやイベントのステージが難しくなってしまいました。お客さんの側も、家に閉じこもりがちで、閉塞感にさいなまれている状態にあります。
緒方 だからこそ、12月の年末ライブはやらなくてはならないと。
「12月、ライブやります」と言ったときの、制作チームがすごくうれしそうに笑ってくれて。「僕らも大変な時期があったけど、6月の配信ライブがすごく楽しくて、『またああいうのをやりたいね!』というのがモチベーションになって、チームで声を掛け合って、大変な時期も乗り越えてきた」と言ってくれました。
一方、お客さんも発表したらすごく喜んでくれました。
2回目の「M's Bar」配信ライブのときに、ライブの直前までチケットが売れるか心配だったというお話をしましたけど、じつは良かったこともあったんです。
それは現地会場に来てくれた30人のお客さんたちに、「みんな最近、全然跳んでないから跳びたいよね」って声をかけたらすごく喜んで、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」を演ったんですよ。アコースティックライブなのに(笑) 会場のみんなが精一杯跳んで、楽しそうで、「跳んだの久しぶり」とか感想も後で届いて。
1つ1つの体験が、もう「当たり前」に存在するものではなくなってしまったけれど、「跳んだ」ことを体験として感じてもらい、それを配信で見てくれた人たちが、『いつか必ずあそこで一緒に跳びたい』と思ってくれるものをやりたい。
「後ろに引っぱる力」にどこまで耐えられるのかはわからないけど、続けることでこの先につなげていければいいなと思います。
声優・緒方恵美、初の自伝本発売!
『再生(仮)』2021年4月28日(水)発売予定
『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ、『幽☆遊☆白書』蔵馬、『美少女戦士セーラームーン』天王はるか/セーラーウラヌス、『カードキャプターさくら』月城雪兎/ユエ、『遊☆戯☆王』武藤遊戯、『ダンガンロンパ』苗木誠/狛枝凪斗、『地縛少年花子くん』花子くん/つかさ、etc... 数々の人気作/役を演じてきた大人気声優が初めて明かす、これまでとこれから。
声優・緒方恵美がいま伝えたいこと。オール書き下ろし、出演作品秘話も満載! 巻頭には、ライブの写真の数々やアフレコ時の写真、幼少期~学生時代の貴重な写真も掲載した豪華16ページカラーグラビアも収録。
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再生(仮)緒方 恵美KADOKAWA
<前編はこちら>
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