このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

業界人の《ことば》から 第422回

コロナ禍でオフィスはどう変わったか? 大塚商会の決算から垣間見えること

2021年02月15日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

コロナ禍でもデジタル化の勢いは変わらず、複写機とDX

 では、2021年度(2021年1月~12月)は、どう見ているのだろうか。

 2021年度の連結業績見通しは、売上高は前年比3.4%増の8650億円、営業利益は3.2%増の581億円、経常利益は2.5%増の590億円、当期純利益は0.6%増の395億円と、増収増益を目指す。

 大塚社長は、2021年の市場環境について、「新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明であるものの、行政や民間におけるデジタル化推進の動きや、テレワークの定着と新しい働き方への対応、AIやIoT、5Gなどによる市場拡大などもあり、企業のIT活用のニーズは底堅い」とし、「DXとドキュメントソリューションでお客様に寄り添い、お客様と共に成長する」を基本方針に掲げ、「オフィスまるごと大塚商会」の提案を推進する姿勢をみせた。

 「業務全体を一気通貫で変革し、仕事のやり方も変えていくDXと、オフィスから離れた環境のなかで、複写機を活用しながら、生産性を上げるドキュメントソリューションによって、企業を支援していく。とくに、ドキュメントソリューションにおいては、紙の文化でお客様接点を持ち、ノウハウを蓄積してきた大塚商会の長年の実績をもとに、ペーパーレス化や、捺印の廃止などを捉えた提案を行っていく」とする。

 コロナ禍によって、オフィスにおける複写機の利用は減少しているが、実は、2020年第4四半期(10~12月)は、複写機の販売実績が前年同期比12.9%増と一気に増加している。第4四半期で複写機がプラスになったのは3年ぶりという。第3四半期までの減少の反動といえる部分もあるが、「複写機は、電子化するためのデバイスとして利用されており、単なるコピー機としての提案からの脱却が進んでいる」という点が追い風になっている。

 なお、大塚商会は、2020年10月に、分散していた本部機能を統合し、デジタルドキュメントの販促を行う組織を新設。これにより、ドキュメントソリューションの提案を加速する体制を整えている。

中小企業のデジタル化は急務

 大塚社長が掲げたもうひとつの取り組みが、「中小企業のデジタル化」である。

 「デジタル庁の創設や、書類の電子化に向けた法律の整備など、中小企業がIT化やペーパーレス化を進めなくてはいけない環境になってきた。ITに興味がなかった中小企業も避けては通れなくなった」とし、「大塚商会の顧客の8割は年商10億円以下の企業である。DXやドキュメントソリューション、AIなどの新技術の活用などによって、中小企業の困りごとをまるごと解決する。これが大塚商会の使命である」と語る。

中小企業のデジタル化を推進する方針を打ち出す

 その取り組みのひとつとして、大塚商会では、販売、会計、人事給与といった基幹系を担う「SMAILE V」と、ワークフロー、ドキュメント管理などの機能を持つ「eValue V」を統合した「DX統合パッケージ」を、2月4日から発売。従来は独立していた基幹系システムと情報系システムのデータベースを統合し、データのシームレス化を実現し、企業のDX推進の基盤づくりを支援するという。

新たにDX統合パッケージを発売した

 「販売管理システムで見積もりを作成し、それをワークフローで上司に申請し、承認をもらうなど、業務が流れていくことで生産性を高め、データを一気通貫で利用できる環境を実現する。同時に企業のペーパー化も実現できる。世界的にも珍しい存在のアプリになる」と自信をみせる。

 大塚商会は、今年で創業60周年を迎える。コロナ禍の逆風を追い風に変える取り組みに挑んでおり、すでに第4四半期から、その成果が生まれつつある。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ