クラスメソッドがエンジニアの技術情報発信サービスである「Zenn(ゼン)」を買収する。自らもエンジニア向けの技術情報発信メディア「Developers.IO」を運営するクラスメソッドが、なぜZennの運営に乗り出したのか? 数十社による争奪戦の舞台裏とは? そして今後目指す情報発信の姿とは? Zenn開発者のcatnose氏とクラスメソッドの横田聡CEOに聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー アスキー編集部 大谷イビサ)
既存のブログサービスでは満足できなかった
オオタニ:まずはcatnoseさんからZennの開発経緯を聞かせてください。エンジニアの技術情報発信って、それこそ個人ブログもあるし、最近ではQiitaがメジャーだったりして、決して真新しくはないですよね。あえて、この分野にチャレンジした背景を教えてください。
catnose:もともと私は個人でWebメディアをやっていて、十分食べていけるくらいの広告収入を得られるようになった経験があります。その経験から記事を書いてもプラットフォーム運営者しか収益を得られない構造に違和感を覚えるようになりました。
個人が価値のあるものを作れば収入を得られるのが当たり前になってきたというのもあります。書くことによりインセンティブが得られるエンジニア向けのプラットフォームはまだなかったので、十分チャンスがあるのではないかと考えました。
オオタニ:なるほど。コンテンツを売れるという点ではnoteもありますが。
catnose:noteはあらゆる分野の投稿が集まるため、一部の人しか興味のない技術記事を書いてもなかなか注目されません。エディタに関しても、エンジニアであれば、やはりマークダウンで書きたい。ITエンジニア向けに特化したプラットフォームには需要があるのではないかと考え、Zennを作るにいたりました。
オオタニ:Zennでは書き手へのインセンティブはどのようにしているのでしょうか?
catnose:まだ迷っているというのが正直なところです。その前提で言うと、今のところZennでは書き手がコンテンツを販売する方法と読み手が書き手に対して対価を払う方法の2種類が用意されています。
書き手がコンテンツを売るという方法は、今のところ単発の記事では販売できず、複数のチャプターから構成される「本」のみ販売できます。記事単位での有料化をやっていない理由としては、ググって記事にたどり着いても、「ここからの文章は有料です」と突然終わっていたら腹が立つと思ったからです(笑)。
オオタニ:確かにイラッときますね(笑)。
catnose:その点、本という単位だとどこまで有料かがわかりやすいし、書く方もある程度のボリュームでちゃんと書かなければならないと感じますよね。販売するとなれば、なおさらです。
Zennでは売上の8割以上がユーザーに還元されます。商業出版のような査読や校正の仕組みはない分、還元額の大きさで魅力を感じてもらえればと思っています。もちろん、Zennで書いた本が商業出版に進むというのも理想的な流れだと思います。そういう世界観をイメージして、本の販売機能は作りました。
オオタニ:やっぱり書店に自分の本が置かれてたら、テンション上がりますしね。逆に読み手が書き手に対価を払うという方法については?
catnose:こちらは書き手のモチベーションを上げたいという側面もありますが、読み手からしても感謝を明確に伝える手段があるのは良いなと思っています。
というのも、僕自身が読み手として、自分に役の立つ記事に出会うと、書き手にすごく感謝したくなるからです。でも、わざわざコメントしたり、SNSでリプライするのは少し気がひける。そのためにユーザーの意思で著者に対して金銭的なサポートをできる機能を付けました。いっしょにメッセージの付いたバッジを送ることができます。