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モーダル小嶋のTOKYO男子めし 第29回

白米に合うシチューという個性付けは評価したい:

松屋の890円「ビーフシチューライス」は高いのか安いのか

2020年12月10日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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「ビーフシチューライスセット」
松屋
890円(単品790円、「ビーフシチュー定食」990円)
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/201208.html

松屋の定食が高い気がする

 食生活について、ずっと考え続けた1年になりました。その理由はもちろん新型コロナウイルスの影響があるわけで、外食がしにくいので自炊が増えましたし、一方で「出前」を取ることもありました。

 そうなると、自炊のコスパのよさ(と、手間がかかる面倒さ)や、デリバリーの割高さ(と、何も準備しなくてよい手軽さ)などを考えます。要するに、「価格」について思案することが増えたわけです。

 さて、松屋は季節メニュー「ビーフシチュー」を12月8日から発売しました。

 冬の人気メニューが今年も登場。赤ワイン風味の特製ソースで煮込んだ牛肉とじゃがいもが入った旨みたっぷりの本格メニュー。今年は自社製ゆでたまごもトッピング。

 昨年は好評につき売切が続出したことを受け、食数を増やして発売するとのこと。「ビーフシチュー定食」(990円)および「ビーフシチューライスセット」(890円)に加えて単品(790円)での販売や、テイクアウトでも提供。

 発売を記念して12月22日10時までの期間、ビーフシチュー定食およびビーフシチューライスセットを注文すると、ライス大盛が無料サービスです。

 しかし、単品790円、定食にすると990円とは、(松屋にしては)ずいぶん強気です。このところ、どうも松屋の季節メニューが高額な気がします。700円台、800円台が当たり前になっているのは、いいのかどうか。

ごはんのおかずとして、よくできているシチュー

ビーフシチューライスセット。ごはんとみそ汁が付きます

 肝心のビーフシチューです。基本的には、よくできています。味はやや濃い目で、赤ワイン風味のソース(赤ワイン“風味”というところが気になりますが)がしっかり効いている。

ソースの味が“しっかり”なのがポイント

 ビーフのとろとろとした食感もうれしいものです。単にグズグズになっているだけではなくて、歯ごたえがある。ごろごろと入っていて、ボリュームもあります。単なる「シチュー」ではなくて「ビーフシチュー」なのですから、こうでなくてはいけません。

ビーフの食感と大きさは合格点

 じゃがいももホクホクした食感でよろしい。……と、ここで気づいたのですが、昨年は入っていたニンジンが見当たりません。店員さんが入れ忘れた? と思いましたが、公式のリリースにも「とろとろに煮込んだ牛肉とじゃがいもがごろごろ入った」とあるんですよね。なくなったのかな。

じゃがいもも大きめ

 味が濃い目なので、ビーフやじゃがいもを食べていても、物足りないことはない。ただ、ソースの味が強いので、具材を先に食べてしまい、残ったソースだけを口に運ぶと、すこししょっぱいかも。そのあたりはペース配分を考える必要があります。

 ところで、今回入ったゆで卵ですが、なんともいえない感じです。別に悪いとは思いませんが、絶妙に合う! という感じでもない。半熟ではなくゆで卵なので、割っても黄身が溶け出さず、ソースの味は変わりません。まあ、少なくとも、邪魔はしていない。

ハマっているともミスマッチもいえない、不思議な存在のゆで卵

 ざっくりまとめれば、しっかりとした味のビーフシチューです。もちろん、ちゃんとしたレストランや洋食店のビーフシチューに比べれば、味の濃さがやや単調、コクに不足している、ビーフの質が劣る、卵の必要性はどうか……など、見劣り(食べ劣り?)する点はないでもない。

 もっとも、松屋は定食を出すところなので、そういうところはわかっているのだと思います。白米に合うシチュー、これは定食のおかずですよ、という個性付けをしている。

ごはんのおかずになるシチュー、という路線なのだと思います

 具材は食べごたえのある大きさにした、ソースは濃いテイストで仕上げたという点で、松屋が提供しているほかの定食と同じ方向性を持っています。一貫性がある点は評価したい。

みそ汁が合うかどうかはノーコメント

リーズナブルではないが、小さなぜいたくと考えれば

 ところで、松屋で890円(定食は990円)という価格をどう考えるべきか。ビーフシチュー定食は、10月に発売された「黒トリュフソースのビーフハンバーグ定食」より100円高いです。

 「ランチやディナーにそんな金額さえ払えないのか」と言われそうですが、牛めし並盛が320円(プレミアム牛めしは380円)、ブラウンソースハンバーグ定食が600円で売られているのを横目に、定食にすると1000円に近い金額のメニューを選ぶとなれば、すこしばかり悩んでも不思議ではありません。

 「ごはんに合うシチュー」がサッと出てくるところ、そのクオリティーが低くないこと、それらに対しての価値は高い。一方で、「松屋でこの価格なら、もう一つ二つ、何かあっても……」と思うところもある。ちょっとリッチな気分の一人めしにはよいですが、「師走なんでよいものをバシッと食べたい」なら、もうワンランク上のものを選びたいかもしれない。

 くどいようですが、ビーフシチュー自体の出来は悪くありません。この記事のタイトルへの答えですが、高すぎるとは言えませんし、かといってリーズナブルでもないという、「まあ、こんなもんかなあ……」というのが、結論かなと。

松屋のおかずとしては合格点。しかし単品で790円

 たとえば、ファミリーレストランの平均価格帯が松屋のおよそ1.5〜2倍くらいだと考えてみると、ロイヤルホストの「ロイヤルクラシックビーフシチュー パン付 スペシャルランチ」が2178円ですから、そう考えると妥当なのかも。

 なので、おいしいビーフシチューを食べたければロイヤルホストなどに行く、という考えはあるでしょう。一方で、最寄り駅の近くにあってよく立ち寄る松屋で、ときどきは小さなぜいたくをする、という余裕が、日常の中にあってもいいかもしれませんね。

 いいかい学生さん、松屋のビーフシチューをな、松屋のビーフシチューをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ……。


モーダル小嶋

 

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。

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