約40万人が登録したAWS re:Invent 2020、オンラインでいよいよ開催
AWS Proton発表 進むコンテナとサーバーレスの統合
2020年12月03日 10時00分更新
2020年11月30日~12月18日、アマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)は、AWS最大のグローバルカンファレンス「AWS re:Invent」をオンラインにて開催している。12月2日にはAWS CEOのアンディ・ジャシー氏が登壇し、3時間に渡って最新サービスを紹介した。ここではおもにコンピュート関連の新発表をまとめる。
ジャシーCEOが考えるre:Inventできるカルチャーとは?
今年で9回目を数えるAWS re:Inventは、AWS最大のカンファレンスイベント。毎年、米ラスベガスの複数のホテルを会場にしていたが、今年は新型コロナウイルスの影響ですべてオンライン化された。会期は1週間から3週間に延長され、基調講演(キーノート)も5つに増える。昨年の参加者は6万5000人だったが、オンライン開催となった今年は登録だけで40万人を超え、今週中に80万人を突破するという。まさに未曾有の規模のイベントとなっている。
シアトルから登壇したAWS CEOのアンディ・ジャシー氏は、まずBlack Lives Matterにつながった人種差別に対して変えなければいけない問題と提起。その上でAWSの近況について説明した。2020年第3四半期の売り上げが460億ドルになり、前年同期比に比べて29%成長したことをアピール。2006年のサービス開始から売上高で100億ドルを達成するのに123ヶ月かかったが、200億ドルになるまで23ヶ月、そして300億ドルに成長するまで13ヶ月になったと説明した。調査会社ガートナーによるIaaSとPaaSのセグメントでのシェアは45%におよび、IT企業の利益額でもオラクルより上位の5位になっているという。
IT支出を見ればオンプレミスの割合はまだまだ9割を占め、クラウドはまだまだ。しかし、新型コロナウイルスによって企業のクラウド移行は一気に加速しているという。「コロナウイルスがクラウド導入を後押ししている。以前は移行したいという願望だったが、今や確固たる計画となり、数年分はクラウド化が加速されている」とジャシー氏は語る。
では、クラウドをツールとして再発明(re:Invent)を継続するためになにが必要か? ジャシー氏は「ただ必死にやるだけでは、賭けに過ぎない。組織にはつねに再発明し続けるカルチャーが必要になる」と語る。その上で、再発明できる組織に必要な条件として、「リーダーシップの意思」「重力に逆らわない」「発明に貪欲な人材」「顧客の本当の課題を解決」「スピード」「複雑性の排除」「幅広いツールを持つプラットフォームを選ぶ」「トップダウンの積極性」などを8つを掲げる。
たとえば、「発明に貪欲な人材」は再発明のために自ら作ったモノを壊せる人材の必要性についてだ。ジャシー氏は「製薬会社のCEOにクラウドを薦めたところ、『それは次のCEOの役割だ』と言われたことがある。結局、次のCEOがAWSを導入したが、2~3年はロスとなった」と自身の体験をこう説明する。8つのテーマはすべてテクノロジーではなく、リーダーシップに起因するという点が興味深い。
高性能化と用途特化を進めるインスタンス Graviton2も強化
最新動向の説明とクラウドを成功させるリーダーシップ論に引き続いては、毎回恒例となった新サービスの発表だ。ジャシー氏は、コンピュート、データ、データベース、機械学習といったジャンルで、再発明の過程と新サービスのサマリを披露。コンピュートという分野は、インスタンス、コンテナ、サーバーレスの順で新サービスが紹介された。
まず披露されたのがAmazon EC2の新サービスだ。基調講演の前日に発表された初のMac OS搭載インスタンスのほか、336TBというローカルHDD容量を持つ「D3/D3enインスタンス」、最大60GbpsのEBS帯域と260K IOPSをサポートしたRDBMS用の「R5bインスタンス」、グラフィックワークロードに最適な「G4adインスタンス」などが新たに投入。また、Armベースの独自チップ「Graviton 2プロセッサ」を採用し、100Gbpsのネットワーク帯域を持つ「C6gnインスタンス」、4.5GHzのIntel Xeonプロセッサーを採用したHPC向けの「M5znインスタンス」も新たに発表された。
機械学習に特化したインスタンスやチップも投入されている。ディープラーニングのトレーニングに特化したHabanaLabsの「Gaudiアクセラレーター」を搭載したインスタンスも投入された。自然言語処理やオブジェクトの検出・分類、推奨やパーソナライズなどのトレーニングワークロードに最適で、GPUベースのインスタンスに比べて最大40%高いコストパフォーマンスを実現するという。また、テラフロップスを実現する機械学習用トレーニングチップ「AWS Trainium」も投入。機械学習用のカスタムチップは推論を高速化する「Inferentia」に続いて2番目。AlexaではこのInferentiaを活用することで、推論にかけるコストと遅延を大きく減らしているという。
ジャシー氏が再発明のポイントとして指摘したのは、やはり自社開発ハードウェアだ。AWSは仮想サーバーのホストサーバーで行なっていた処理をオフロードする「Nitro System」を自社開発し、2017年からAmazon EC2に実装。また、インテルやAMDなど既存のCPUベンダーと良好な関係を持ちつつ、自らArmベースのGravitonプロセッサーを開発し、絶え間ないコスト削減と性能の要求に応えている。実際、最新のGraviton 2プロセッサーは既存のx86プロセッサーより40%高いコストパフォーマンスを実現しているという。
Amazon ECSやEKSがオンプレでも利用可能に
コンテナに関しては、Dockerコンテナの実行と管理を実現する「Amazon Elastic Container Service(ECS)」、マネージド型のKubernetesサービスである「Amazon Elastic Kubernetes Service」、クラスター管理不要なサーバーレスコンテナサービス「Amazon Fargate」という3つのサービスを展開している。各サービスとも急成長を遂げており、今では全コンテナの約2/3がAWS上で動作しているという。
これらのマネージド型コンテナサービスのうち、ECSをオンプレミス環境で動作させることができるのが新サービスの「Amazon ECS Anywhere」になる。コンテナベースのアプリケーションに一貫したツールとAPIを提供し、クラスター管理、ワークロードのスケジューリング、モニタリングなどをAmazon ECSと同じように利用できる。
あわせて発表された「Amazon EKS Anywhere」もEKSをオンプレミスで動作させることが可能になる。Amazon EKSと同じkubernetisディストリビューションを採用しており、「Amazon EKS Distro」としてOSSとして公開される。Amazon ECS Anywhere、Amazon EKS Anywhereともに2021年前半に利用可能になるという。また、コンテナイメージの保存、管理、共有が可能な「Amazon Elastic Container Registry」ではコンテナレジストリがパブリックに公開可能になった。
第3のコンピュートであるサーバーレスのLambdaに関しては、「AWS Lambda Container Support」を発表した。これはLambda関数を最大10GBサイズのコンテナイメージとしてパッケージ化できる機能で、機械学習やデータ集約型など依存関係の大きいワークロードでも容易にデプロイできるという。OSSとして「Lambda Runtime Interface Emulator」も公開され、コンテナイメージをローカルでテストすることも可能だ。
また、コンテナとサーバーレスのデプロイを自動管理するマネージドサービス「AWS Proton」も合わせて発表された。これは絶えず変化するコンテナやサーバーレスなどのサービスで構成されたマイクロサービスをCI/CDの手法で運用していくためのもの。コンピュート、ネットワーク、コードパイプライン、セキュリティ、監視などを「スタック」として定義し、一貫したサービスのプロビジョニング、展開、運用を実現する。
AWS Lambda自体も強化が図られ、メモリは最大10GB、vCPUは最大6つまでサポートするようになった。これは以前に比べて、3倍以上の増加になる。また、課金単位も100ミリ秒単位から1ミリ秒単に変更された。実行時間が100ミリ秒より小さい場合はコスト削減が効くという。
アスキーではAWS re:Invent 2020を引き続きレポートする。