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業界人の《ことば》から 第413回

日立製作所の東原敏昭社長兼CEO

世界には制約があり、限りがある、大量生産/大量消費時代で社会を持続させるには?

2020年11月09日 13時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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第3の選択肢、新たな社会イノベーション

 ひとつめの手段は、すべての人が節約好きになるという方法。「一定の効果は見込めるかもしれないが、豊かになりたいという人間の欲望を抑え込み、77億人が考えを変えることは不可能だと」と否定する。

 ふたつめは、技術によって、持続可能な社会を実現する方法。エコ製品を開発し、再生可能エネルギーの発電効率を極限まで高めるといったように、テクノロジーが解決するという道筋だ。だが、これについても、「十分可能性はあるが、結局、これまでと同じような発展を目指していては、いずれ限界を迎える」と、これも否定した。

 そこで、東原社長兼CEOが示したのが、「新たなイノベーション」である。「制約ある環境において、豊かな社会を実現するイノベーション。それを、日立では社会イノベーションと呼んでいる。そのビジョンを紹介したい」と述べた。

 ここで示したのが、鉄道運行の事例である。

 「これまでの社会では、時刻表を見て、ホームに行き、電車の到着を待っていた。鉄道会社は、乗客がいなくても、電車をダイヤ通りに運行しなくてはならなかった。だが、社会イノベーションによって、ホームに人が増えてくると、電車が到着する間隔が短くなるといった運行が可能になる。コンサートが終わったばかりの最寄りの駅には、頻繁に電車がやってくる。逆にホームで待つ人が少なければ、電車の運転間隔は長くなり、資源が無駄にならない。待っている人にとっては、少し不便だが、環境のことを考えれば少しぐらいは待つことができるだろう」

 東原社長兼CEOが、「人間にも、環境にも優しい」と表現する、この鉄道運行システムは、すでに、日立がデンマークのコペンハーゲンで実証を進めているものだ。

 データがつながり、システムがつながることで実現する「社会イノベーション」の姿である。

 「このシステムを使えば、人間の少しの我慢で、最も多くの人を、最も小さなエネルギーで運ぶことができる」

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