人気店の創業者が手がける新店は、マニアからも近隣の人たちからも愛される存在になりそう 三代目 しゅう(東京・中神)【ZATSUのオスス麺 in 武蔵野・多摩】第32回
2020年10月26日 12時00分更新
今回のオスス麺は、10月5日にオープンしたばかりの新店「三代目 しゅう」。
完全な新店ではありますが、ご主人は多摩地区のラーメン好きならば誰もが知っている立川の人気店「煮干しらーめん 青樹」の創業者!
流石に注目度は高く、大々的な宣伝などはしていませんでしたがオープン初日から賑わいを見せました。既に何度も行っているお客さんもいるようで、人気店となる片鱗を伺わせています。
ご主人の青木さんは、96年組と呼ばれる「麺屋武蔵」や「くじら軒」などが台頭しラーメンブームとなっていた頃、当時20代前半でワクワクしながら食べ歩いていたとの事。
そこからラーメンへの憧れが始まり、20代後半に会社員をやりながら「このまま人生終わるのかな……」とモヤモヤしていた中、「よし!一度きりの人生チャレンジだ」と一念発起し、ラーメンの世界に飛び込みました。
初めに修業したのは、昭島駅南口にある「昭島大勝軒(永福町系)」。
初代が引退し、「梅ヶ丘大勝軒」の親方が二代目としてやられていた時期で、ここでラーメンを学び、この頃の修業の成果は今回のお店に色濃く出ているようです。
2008年5月からは、修業の場を当時話題となっていた新店「らーめん いつ樹」へと変えました。
まだ羽村に店舗を構えていたこぢんまりした頃の「いつ樹」でしたが、2008年の8月から定休日である月曜日を利用し、スタッフであった青木さんによる間借り営業「煮干し 青樹」がスタートしました。
その後2009年9月に独立し、立川のラーメン集合施設「らーめん たま館」のオープニング店舗の一つ(当時「たま館」の館長は“若手枠”と呼んでいました)として、ついにご自身のお店をオープンさせました。
私自身こちらの店舗に何度も足を運びましたが、一番印象に残っているのは「荒煮干しそば」。
文字通りの荒々しさのある濃厚煮干しラーメンで、良い意味でご主人の若さが出ていた記憶に残る一杯でした!
たま館を卒業する際には「井の庄」とのコラボメニューという、今思うと超レアな限定ラーメンも提供していました。
たま館を卒業する2ヵ月程前の2010年7月20日、ついに自身初となる路面店を立川駅北口にオープン。
2014年4月には昭島に「煮干しらーめん青樹 昭島店」を、同年12月には中野に「つけめん 油そば 五丁目煮干し」もオープンさせました。
2018年10月には、たま館に「初代 青樹」として再出店!
最初は若手枠的な形でしたが、今度は貫禄の人気店という形での出店で、まさに“凱旋”の言葉がよく似合うものでした。
激戦区である立川の中でもトップクラスの人気店となり、約9年間店主として舵を取っていましたが、2019年の11月いっぱいで退職し、お店は他の方に譲られました。
9年の歳月の中で、レギュラーメニューは勿論のこと、多種多様な限定メニューを作り出しましたが、その中から私が個人的に印象に残ったものを少し紹介させていただきます。
あっさりでありながらも意外とオイリーさがあり、それでいて軽やかさもあり、永福町系大勝軒に通ずるような煮干し感が楽しめるもので、別物ではあるけれど「三代目 しゅう」に繋がる味にもなっている気がします。
ドロリと濃厚な豚骨煮干しで、「荒煮干しそば」の進化系とも言えるもので、煮干しや豚骨をしっかりと主張させながらもバランスを整えた一杯。
「黒こってりらーめん」は、その豚骨煮干しに黒マー油を合わせた力業とも思えるようなものでありながら、絶妙なバランス感が癖になる一杯でした。
「立川らぁ麺団」のコラボで、色をテーマに「緑」「青」「黒」の限定ラーメンを提供した事がありました。単にトッピングの彩りでは無く、スープや麺までテーマの色に染めるというコダワリでビジュアルインパクトがあり、味もしっかり仕上げた凄いラーメンたちでした。
濃厚な動物系に強い煮干しと濃厚なトマトが合わさり、それぞれが強く主張しながらも絶妙に調和した、和洋が合わさったジャンクなインパクトがあるラーメン。
ご主人が作った限定メニューの中で私が個人的に一番好きだったのがこの「担々つけめん」。十八番の濃厚豚骨煮干しをベースに芝麻醤やラー油を合わせたもので、山椒の効かせ方が絶妙な、担々麺とラーメンの良いとこ取りなつけ麺でした。
2010年には「ラーメン多摩組」のコラボとして、「◯麺堂」「ラーメン きら星」とチルドつけ麺を共同開発し、コンビニで販売しました。
「青樹」退職後、このままラーメンを辞めてしまうのは勿体ないよな……と一ファンの私は凄く残念に思い、その後のご主人の動向をSNSなどで追い続けていましたが、今回のオープンまでの間にYouTubeなどでラーメンについて色々な事を伝えている様を見て、間違いなくまた戻ってくると感じました。
そして今年10月5日、ついに「三代目 しゅう」がオープン!
今までは大箱や集合施設だったので、今度は一人でじっくりとラーメンと向き合ってお店をやりたいとの思いを持ってオープン。
以前は居酒屋さんが入っていたというお店の雰囲気をそのまま活かし、気軽に入れて懐かしさを感じる温かみがある落ち着く店内で、ラーメンも気取らず単純に「ウマい!」と思える感じにし、地元のおじちゃんやおばちゃん、そしてラーメンマニアも納得させる“ウマいラーメン”を提供するお店を目指すと意気込み。
休日などには、ご主人のお子さんやご兄弟などご家族がお手伝いをしてくれることもあるようで、ほっこり和む本当のアットホームな雰囲気を楽しむことも出来ます。
店名の「三代目 しゅう」というのは、「いつ樹」時代を「初代」とし、独立後を「二代目」、そして今回の再出発を「三代目」という風に見立てて名付けたとの事。
メインとなる「ラーメン」は、豚背ガラ、鶏モミジ、片口煮干し、サバ節をメインに使ったというもの。表面の香味油は最初に修業された「昭島大勝軒」と同じカメリアラードを使用したもので、合わせる醤油ダレはご主人が惚れ込んだ兵庫県の末廣醤油の醤油の再仕込み醤油に濃口本造りをブレンドしたもの。
永福町系大勝軒のような煮干し感や重さが無く、コクのあるこってり感を出しつつ、大勝軒とはまた違った動物系の濃厚さも持ち合わせていて、ほんのり甘味を感じる風味高い醤油ダレとバランス良く合わさったスープ。そして麺は修業元である「いつ樹(五ノ神製麺所)」の細麺を合わせた、ご主人の集大成であり始まりの味でもあるバランスの良い一杯に仕上げてあり、懐かしさを感じさせながらも新しい息吹を感じる“ネオノスタルジックラーメン”となっています。
チャーシューは肩ロースのみを使用し、通常は切り落とし的に薄く切ったのを丸めて食べやすい様にしたものをのせ、「チャーシューメン」には更に厚めのスライスを3枚追加し、フライパンで軽く炙ってのせているとの事。
冷たい状態の薄い切り落としと、炙った厚めのスライスとの対比によって食感や味わいの違いを楽しませ、切り方や盛り付け方などの技術によって変化をつけているのが流石です!
まだスタートしたばかりのお店ですが、紆余曲折を経て色々な経験をしたからこそ出来る『しっかり向き合った自分の作りたいラーメン』を提供してくれる、これから近隣の方に愛されるであろうオススメのお店です!
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/OsamuAoki5)をご確認ください。
ZATSU
2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。
本人ブログ(http://blog.livedoor.jp/zatsu_ke/)
本人Twitter @zatsu_ke