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Veeamが解き放つ“データの力” 第4回

「バックアップの14日間保持ルール」はまだ必要? 堅牢さを維持しながら未来への布石を打つために

「昔ながらのバックアップ運用」も残しつつ、Veeamで効率化するヒント

2020年10月27日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: Veeam Software

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 「たとえば、自社内の運用ルールとして『バックアップデータの14日間保持ルール』を定めているという話はよく耳にします。しかし、本当に今でもそれは必要、有効な運用ルールなのでしょうか」。Veeam Software システムズエンジニアの村田朋和氏は、そう問いかける。

 システム運用ルール、とくにバックアップ運用に関するルールは、時代を経てもあまり変わらないものの代表例ではないだろうか。もちろん「これまで問題が起きていないのだから、変える必要はない」という考え方には一理ある。万が一に備えるバックアップの運用ルールは「堅牢、堅実」であるべきで、むしろ「簡単に変えるべきではない」と考える担当者もいるだろう。

 しかし、ITやデータ保護を取り巻く環境は大きく進化し続けている。これまでの運用ルールと同等の(あるいはそれ以上の)堅牢さを保ちつつ、無駄な手間やコストを省いてより効率的な運用になるよう見直すことはできるはずだ。今回はそんな「バックアップ運用ルール見直しのヒント」を村田氏に聞いた。

ヴィーム・ソフトウェア システムズエンジニア本部 システムズエンジニアの村田朋和氏

「14日前のシステム状態に戻せること」は本当に必要か

 まずは、冒頭に触れた「14日間保持ルール」がなぜ存在するのかについて聞いてみよう。村田氏は「そもそもこの運用ルールは、テープメディアへのバックアップ(テープバックアップ)を前提としたものです」と説明する。

 大容量データを低コストに記録/保存できるテープメディアは、バックアップメディアとしてよく利用されてきた。ただし、テープへのデータ書き込みスピードは遅く、バックアップ処理には時間がかかる。処理中はバックアップ対象のシステムを停止するため、業務に支障が出てしまう。

 そこでテープバックアップにおいては、業務が休みの土日にシステムを停止してフルバックアップを作成しておき、平日はその差分データだけを夜間にバックアップするという運用手法が一般的だった。

 この場合、フルバックアップと差分バックアップの組み合わせがないと、システムのリストア処理はできない。そのため、1週間ぶん(土日+平日)のバックアップを1つの単位(バックアップチェーン)として運用することになる。さらに、テープメディアの障害に備えてこれを冗長化(バックアップチェーンの二重化)すると“7日間+7日間”、つまり先ほどの「14日間保持ルール」に行き着く。

テープバックアップにおけるバックアップチェーンの考え方。テープではバックアップ処理に時間がかかるため、こうした運用手法が考案された

 しかしその後、ハードディスクの大容量化と低価格化が進み、現在ではハードディスクへのバックアップ(ディスクバックアップ)が主流になっている。ハードディスクはテープよりも高速にデータを書き込むことができ、ストレージスナップショットの技術も普及したため、長時間システムを止めてバックアップ処理を行う必要がなくなった。

 さらにフルバックアップと増分バックアップの合成も、いつでも簡単に処理できるようになった。現在ではこれを利用した「永久増分バックアップ」という手法もある。これにより、バックアップチェーンを「土日から始まる1週間」と限定して考える必要がなくなった。

 「現在では、バックアップデータを14日間残しておく理由は薄れています。むしろ直近1週間ぶんのバックアップチェーンを作成し、それを別のメディアにも複製しておくほうが、耐障害性も高まって良いと思います」

ディスクバックアップにおけるバックアップチェーンの考え方。合成フルバックアップも容易に作成できるので、直近1週間程度の世代を保持しつつ、その複製を別メディアにも保存するのが良い

 とはいえ、これまでの運用ルールを変えづらい現場事情もあるだろう。バックアップシステムは、保護対象となるシステムの新規導入や更新のタイミングで導入されることが多い。そのため、運用ルールも保護対象システムの設計を前提に定められることになる。ルールの変更に抵抗感を抱くのは不思議なことではない。

 「わたしも『運用ルールをドラスティックに変革すべきだ』と主張したいわけではありません。ただし、今後のシステム更改などのタイミングではバックアップチェーンの考え方を少し“ディスク寄り”に変え、それに合わせて運用ルールも見直していただきたいと思っています。そうすることで運用が効率化され、多くのメリットが得られるのも事実ですから」

これまでの堅牢さも維持しつつ、運用を段階的に変えていくヒント

 これまでの運用ルールが持つ堅牢さを維持しながら、効率性や新たなメリットも手に入れるにはどうすればよいだろうか。その一案として、村田氏は従来の手法と新しい手法をうまく融合させる、並行運用が良いのではないかと提案する。

 たとえば、これまでテープバックアップで運用してきた現場の場合、いきなりテープからディスクに刷新するのではなく、まず“ディスク+テープ”のハイブリッドなバックアップ構成に変えるのがおすすめだという。

 「まずは一次バックアップ先をディスクに変えることで、バックアップ処理が高速化します。これでバックアップチェーンを短くすることができますし、管理も簡単になります。一方で、テープは二次バックアップ先として残し、バックアップリポジトリ(ディスク)からデータをコピーする運用に変えます。これにより、システムや業務への影響を減らしつつ、テープバックアップも維持できます。ディスクとテープ、両方の良さを得られる形ですね」

ディスク+テープの構成によって、それぞれの持つメリットが享受できる

 テープバックアップを採用している企業では、しばしば「バックアップテープのオフサイト保管(外地保管)」もルール化されていることがある。ディスクバックアップのみに切り替えるとこの要件は満たせないが、ディスク+テープ構成ならばその心配はない。

 「Veeamでは、バックアップデータの保管について『3-2-1ルール』を推奨しています。これは“3つのバックアップコピー”を“2種類のメディア”に分け、“1つはオフサイトで”保管することで、データ損傷のためにリストアできない事故を“ゼロ”にしましょうというもの。ディスク+テープという構成は、このルールにも沿った堅実な手法だと思います」

 さらに村田氏は、ディスク+テープの構成は「次につながるステップ」にもなると説明した。リポジトリのディスク容量に余裕があれば、バックアップの世代を増やすことができる。また将来的に、二次バックアップ先をテープからディスクやクラウドに切り替えることも簡単にできるからだ。

バックアップ製品の最も重要な要件は「確実にリストアできること」

 では、こうした堅牢な運用を実現するためにバックアップ製品に求められる要件とは何だろうか。そう質問すると、村田氏は最も重要な要件として「システムを確実に戻せること(リストアできること)」を挙げた。

 「実は、『これまで使っていたバックアップ製品では戻せなかったから』という理由で、Veeam製品に乗り換えたいというお問い合わせをよくいただくのです。運用ルールを守って毎日バックアップを取っていても、いざというときにリストアできなければ意味がありません」

 こうした事故を防ぐために、多くの企業は運用ルールの中で「リストアテスト」の実施も定めている。バックアップデータから正常にリストアできるか、実環境で試してみるというものだ。ただし、テストの実施は本番環境や業務にも影響を与えるため、年1~2回程度にとどまることが多い。十分にテストができないため、バックアップ担当者は常に「もしもリストアできなかったら……」という不安を抱えることになる。

 こうした不安を解消するのが、「Veeam Backup & Recovery(VBR)」が備える「On Demand Sandbox」機能だ。これはバックアップジョブの終了前に、隔離された仮想環境内でリストアテストを自動実行し、リストアできることを確認してくれる機能だ。担当者の手間を増やさず、毎日でもリストアテストを実行できる。

Veeam Backup & Recoveryが備える「On Demand Sandbox」機能。バックアップ取得後、自動的にリストアテストを実行してくれる

 「VMware vSphere」のVMタグ(仮想マシンに付けるラベル)と連動したバックアップ機能も、地味ながら便利だという。とくに開発者が毎日多数の仮想マシンを作成するような現場では、VMタグ等を利用したポリシーベースのバックアップを行うことで、インフラ担当者の運用負荷を増やさず“バックアップ漏れ”を防ぐことができる。

 「たとえばVBR側で『タグAの付いたVMをバックアップする』というジョブを作っておけば、新たに作成したVMにタグAを付けるだけで、自動的にバックアップ対象に追加されるという機能です。開発者に『VMを作成したらこのタグを付けて』とお願いしておくだけで、VBR側の作業なしでバックアップ漏れが防げます」

「未来に向けた布石」としてのバックアップ運用改善

 堅牢さと効率性という意味で、今後はぜひ「クラウドティア」機能も活用してほしいと語った。これは簡単な設定だけで、バックアップの保存先としてクラウドストレージを追加できる機能だ。

 従来のクラウドティアは、一次バックアップをローカルリポジトリに置き、古くなったバックアップをクラウドストレージに移す(アーカイブする)機能だった。これがVBR V10からは、最新世代のバックアップもクラウドにコピーするモードが追加されている。つまり、前述したディスク+テープ構成のテープ部分をそのままクラウドに置き換えることができる。

 「クラウド活用はまだこれからという会社でも、バックアップデータの保存先としてならば、その第一歩として入りやすいと思います。バックアップを通じて少しクラウドが身近になる、クラウド活用のハードルが下がるのではないでしょうか」

* * *

 村田氏はこのほかにも多数の機能を紹介してくれた。「Veeam製品というと、どうしても仮想化、クラウド領域での強みが目立ってしまいますが、実は『地味だけど現場の担当者にとって本当にメリットのある機能』も考え、提供しています。そうした部分にも注目していただきたいですね」。

 冒頭でも述べたとおり、バックアップの運用ルールは「堅牢、堅実」を第一に考えるべきものだ。ただし、それを実現するための具体的な手段や手法は、時代に応じて柔軟に進化させるべきではないだろうか。そうすることで、「より堅牢、より堅実」なバックアップが効率的に実現できるからだ。

(提供:Veeam Software)

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