3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。関東地方ではようやく雨雲が切れはじめ、子どもも保育園で散歩に出ることが増えてきました。気づけば裏山からヒグラシの声も聞こえます。かと思えば週明けはなんと33℃の予想。陽を拝めるのはありがたいのですが、COVID-19のおかげで帰省や遠出は控えることになるわけで、そんなに焦って夏にならなくてもいいのになあと思います。まあ地球としては私の都合なんて知ったこっちゃないでしょうが。
そうして季節が移り変わっていく中、今月初めにお隣さんからもらったカブトムシが動かなくなってしまいました。越冬するクワガタと違い、カブトムシは夏を過ぎて生きのびることはほとんどないそうですね。はかない命だなと思いつつ、毎晩昆虫ゼリーをあげるのを楽しみにしていた子に「カブトムシさんは死んじゃったんだよ」と伝えると、「そんなこと言わないで!おもちゃ投げちゃうよ!」と怒られました。投げないでくれ。おもちゃは壊れるしカブトムシは生き返らない。
カブトムシをゴミに出すのもしのびなく、家族でお墓を作ってあげました。庭の花壇に種をまくときのように、小さな穴に埋めたカブトムシは、カゴに入っていたときよりさらに小さく見えました。子は砂場用ショベルで土をすくい布団のようにかけていました。子は埋葬を終えた後、振り返りながら「明日はるくん掘っちゃうよ、だってカブトムシさんに会いたいから」と何度もくりかえしていました。もう動かないんだよと言うと「はるくんのお友だちのカブトムシはまだ動いてるって言ってたよ!」とイマジナリーフレンドの話もされました。そのお友だちはきっとシャーマンだ。
イマジナリーフレンドが象徴的ですが、子は生物と無生物の境があいまいな世界を生きています。人生が別れの連続としたら、これは記念すべき第一回目ということになります。そこに立ち合えたことに感慨をおぼえる一方、私自身はカブトムシに自分を重ねるところがありました。もし私がいなくなったら、子どもは私に会いたい、墓穴を掘り返したいと思うだろうかと。まあさすがにその頃には別れの意味もわかっていて、墓荒らしにならないだろうとは思いますが。それにしても私自身、自分が死んだ後のことをイメージすることは今までの人生で一度もなかったので、記念すべき第一回目のメメント・モリとなりました。これまでも人間というものは、子どもの目を通し、自分自身の死を受けとめてきたところがあるのかもしれないとも感じます。
私自身の記憶をたどってみると、母方の祖父が亡くなったときのことがおぼろげに思い出されます。まだ幼かった私は「なんでお母さん泣いてるの」と聞き、「おじいちゃん死んじゃったからよ」と母は泣きながら答えていました。祖父の顔が冷たく硬かったこと、供えられていた花が白く美しかったことなどをおぼえています。思えば、祖父が亡くなったのは60代で、今の父母と同じくらい。今では母の気持ちを想像する立場になりました。今どきは人生100年などと言われる超長寿命時代ですが、死はいつ訪れるかわかりません。今年はお盆も「オンライン帰省」という名のテレビ電話がせいぜいですが、できるだけ子の声をたくさん聞かせたいとあらためて思います。
いつか子どもも、その子どもか、別の何かに対して、こんな感情を持つことになるのかもしれない。そのとき子どもが何を感じたか、子どもの言葉で聞いてみたい気もします。そのときまでは生きのびていたいものですが、まあ宇宙としては私の都合なんて知ったこっちゃないでしょうし、大事なのはいまを生きることなのでしょう。お盆は家族でカブトムシのお墓に手を合わせたいと思います。
(7月24日の連載は休みました)
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

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