近所に目を向けてみると
そこにはまだ見ぬ猫たちが……
今、いろんなメディアがこぞって「ご近所さんぽ」特集をしてるわけで、身体に染みついた習慣を無にして目を向けてみると、電線、電柱の番札、擁壁、門扉、マンホール、境界標、祠、石仏、草花、ありとあらゆるものに表情やその土地の個性があり、日頃気にもとめなかった些細な事象こそ味わい深いことを知った方も多いと思うのだが、その最たるものが街の隙間に潜んで、顔を出したり引っ込めたりする猫なのである。
そんな猫を撮るとき、けっこう邪魔になるのが草むらやフェンスといった手前の障害物。でもそれを逆に活かして「前ボケ」にしちゃおうというのが今回の趣旨だ。
芝生(っぽいけどたぶんほぼ雑草)の上でくつろいでる猫も、カメラを地面に置いちゃうことでカメラのすぐ前にある草が大きくぼけてほわっとした緑の絨毯の上に猫が寝てる感じにしてみた。背景の彼岸花の赤は色のアクセントに。
猫が隠れてる感を出したいときは、あえてぼけてるエリアを広めに入れたりする。灌木の奥に隠れてる猫だ。灌木の奥に目がきらりと光る隙間を見つけ、隠れてる猫の目に慎重にフォーカスを合わせること。
一見、邪魔なフェンスも使いよう。冒頭写真は、わざとフェンスをぼかして入れてみたもの。猫って賢いので、門扉の奥、フェンスの奥にいれば一安心って感じで、逃げずにこっちを観察してくれる。門扉の一部やフェンスを手前にボカしていれることで、それを伝えられるのだ。わずかな隙間から隠れてる猫と見つめあう感もいい。
時には他の猫に前ボケ役をしてもらったりする。望遠カメラで黒猫を狙った写真、よく視ると前ボケで入ってるのは別の猫。奥の黒猫を捕りたかったのだが、手前の猫が大きくはいっちゃうとそっちに目がいっちゃってピンボケ写真に見えちゃう。そこで少しだけいれることで黒猫の引き立て役になってもらうわけである。
常に影に控えてるナンバー2が実はトップを狙ってる、みたいな雰囲気になって……ません?
偶然入った前ボケ猫もひとつ。猫を狙って構えてたら前をすっと横切ってくれたヤツがいらっしゃいまして、でも「これはいけるかも」とシャッターを切ったら、いい感じにカーブしたしっぽが前ボケ役になってくれたのである。
望遠で撮る猫写真に変化をつけるには前ボケは欠かせないのである。最後は無理矢理な前ボケ。猫の気を引くとき、指先を出してひらひらさせたりするじゃない。その様子も一緒に、と思ってわざといれてみた。 「こいつ何やってんだ?」って顔をされてる気もするけど、それはそれってことで。
わざと前ボケをいれることで、メインの被写体を邪魔せずに状況を伝えたり、写真をより印象的にしたりできるのだ。
手前にあるものを撮影の邪魔と思わずに、活かす方向で考えてみるべし!
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筆者紹介─荻窪圭
老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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