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業務を変えるkintoneユーザー事例 第77回

現場ユーザーがJavaScriptを学んで業務改善を進めるkintoneの面白さ

ブラックな不動産会社に黒船kintone来る 草莽崛起で働き方改革を実現

2020年05月25日 10時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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学びしかないkintoneカスタマイズとのつきあい方

 続けて、鶴田氏は社内の事例を4つ紹介してくれた。

 1つ目はポータル画面のカスタマイズ。ユーザーの要望を反映して、通知を左上に移動させ、左下にはグラフを表示。アプリも選択しやすいように、部門別のタブでグループ化した。その代わり、右下のアプリの一覧をなくして、すっきりさせている。

 全社のタブを選ぶと、緑色のアイコンが並んだ画面が開く。賃貸管理部門は赤色、売買が青、その他部門が黄色というように、部門カラーを設定しているのだ。さらに、アイコンにはアプリの略称が書かれており、多数のアプリを運用しても、見つけやすい工夫が凝らされている。

ポータル画面にタブを用意し、各部門ごとにアプリを整理した

 2つ目はコスト削減の事例。マニュアルアプリやサイボウズOfficeをkintoneに集約して、年間58万円のコストを削減を実現した。また、会議室予約アプリでは、会議室をカレンダー上に色分け表示することで、すべての部屋の予定を一目で把握できるようにカスタマイズした。こちらも「cybozu developer network」での事例を参考にしたという。

 3つ目は失敗した事例。解決したかった課題は、内勤の事務員からの連絡に対して、外回りの営業メンバーからのレスポンスがなく、伝わったかどうか不安になる、というもの。鶴田氏は、画面を開いただけで既読扱いになればいいのではと思いつき、チャットのようなアプリを作ってカスタマイズにチャレンジ。送信時に、送信先全員の名前をデータ化し、受信者が開封するたびに受信者の名前、例えば「鶴田健吾」を「鶴田健吾(確認済)」に置換するというプログラムを作った。LINEのような閲覧画面まで作るほどこだわったのだが、結果は芳しくなかった。

既読が付かないので情報が伝達できたか不安という課題が発生

「先行事例を離れて自分で試行錯誤したために、アプリの完成度が低く、クリック数が多くて使い勝手が悪いというクレームが発生してしまいました。ここで、また吉田松陰先生の登場です。アプリはたとえ 利用されずに朽ちぬとも 留め置かまし「改善魂」。チャットアプリ、涙涙の辞世の句でございます」(鶴田氏)

 得られた教訓は、使いやすくなければ問題解決にならないということだった。その後は、標準機能との乖離が大きかったり、先行事例との乖離が大きい場合、PC用とスマホ用で内容が大きく異なる時には、別の手段を探すように心がけるようになったそう。

「失敗したとは言え、お金をかけておらず、大がかりな設定変更もしていませんでしたので、潔く方向転換できました。これも「kintone改善」のメリットのひとつだと思いました」(鶴田氏)

またしても松陰先生の登場

 4つ目の事例は証票のスキャナー取り込み。賃貸管理業務では、物件の補修費や電気、ガス、水道などすべての証票が貯まるので、すべての物件を合わせると、1年間に保管庫の1段分以上が埋まっていくという。

 そのため、証票をスキャナーで取り込んでペーパーレス化したいと考えたが、入出金とPDFを紐付けるのは大変だ。大量にスキャンすればPDFを探しにくくなるし、ひとつひとつのPDFにわかりやすいファイル名を付けていくのも手間がかかる。そこで鶴田氏はプロに依頼することにして、kintone universityの講師だったエムアイエフ株式会社の金冨氏に声をかけた。

 入出金明細の仕訳データを管理するアプリのレコード詳細画面に「スキャン実行」ボタンを追加。kintone画面でクリックすると、ドキュメントスキャナーが動いて、読み取られたデータがPDFの添付ファイルとしてアプリ内に保存される。

「これで、入出金明細と証票が簡単にひも付くようになった。やっぱり難しいことはプロの依頼して正解という成功事例でした」と鶴田氏は大満足。

複雑なカスタマイズはプロに依頼して大満足

会社の枠を超えたkintone連携の仕組みをサイボウズにリクエスト

 今後は、kintoneで会社の枠を越えた連携を考えているという。たとえば、管理会社と物件の補修を行っていただく業者の関係では、見積もり依頼から支払後の入金確認まで、お互いに情報のやり取りが発生する。しかし、時々途中で情報伝達がスムーズに行かないこともある。kintoneのゲストスペースでつながれば、リアルタイムに情報共有できるようになる。もし、たくさんの会社がkintoneでつながり、お互いが入力したデータを共有し、使い回せるようになれば、理論上、データ入力の手間が半分になると考えているという。

 そのためには、私たちがkintoneユーザーであることを表明する仕組みと、取引先がkintoneユーザーであるかどうかを検索する仕組みがあると、つながれると思うのですが、サイボウズの皆様いかがでしょうか」とサイボウズへのリクエスト。

「草莽崛起でもう一度働き方改革を、ということで、志を持ったkintone担当者が一斉に立ち上がり、大きな物事を成し遂げましょう。そして、今回のコロナ対策を教訓にして、さらなる改善を進めていきましょう」と鶴田氏は締めた。

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