「IBM AIセンター」発足、データ戦略策定からシステム構築、人材育成まで幅広い支援を提供
日本IBM、組織横断型で顧客企業のAI活用を支援する新組織
2020年02月10日 07時00分更新
日本IBMは2020年2月7日、顧客企業のAI活用を支援/促進するために日本IBM社内で発足した新組織「IBM AIセンター」に関する記者説明会を開催した。
このAIセンターには各業界の動向やAI技術への深い理解を持つコンサルタントやデータサイエンティスト、AI製品スペシャリストなどが部門横断的に結集しており、顧客のビジネスニーズや成熟度に応じて、データ活用戦略策定から技術検証、データ基盤構築、人材育成や“データ活用の企業文化”醸成まで幅広い製品/サービスを用意し、スピーディに支援できる体制を整えたという。
説明会には、日本IBMのAIビジネスを統括する常務執行役員の伊藤昇氏、IBM AIセンター長に就任した技術理事の山田敦氏が出席し、顧客企業における「データとAI活用」の取り組みの現状と課題、今回のIBM AIセンター設立の狙いなどを説明した。
データサイエンティスト、コンサルタント、製品スペシャリストなどが結集
IBM AIセンターは、国内市場向けに日本IBMが独自に発足させた社内組織。AI関連のビジネスや技術開発を行う各部門からスペシャリストを集めた部門横断的な組織であり、各メンバーは従来部門の業務と兼務するかたちで関わる。具体的な人員規模は明らかにしていないが、「3ケタに及ぶくらいの人数」(山田氏)が所属するという。
AIセンターの役割は、担当アカウント(営業)チームと共に顧客企業におけるAI活用の現状や課題を理解し、顧客企業のAI活用がより浸透/成熟する未来への道のり=“Jourey to AI(AIジャーニー)”を明確にすると同時に、その実現に必要な各種ソリューションをクイックに提案していくことにある。
もうひとつ、IBMがこれまで提供してきた製品、ソリューション、コンサルティングサービスなども含め、上流から下流までおよそ150の提案メニューをラインアップしている点も特徴だ(本記事冒頭のスライド参照)。個々の顧客企業における“AIジャーニー”の成熟度に応じて、戦略策定やアーキテクチャ策定から、業務/業種ごとのAI構築、AI活用の礎となるデータ整備やデータ基盤/分析環境の構築、さらに人材育成など、幅広い支援を提供できるとしている。
提案メニューにラインアップされた製品/サービスの多くは、これまでも提供されてきたものだ。山田氏自身もこれまでデータサイエンティスト・サービス部門で活動してきたが、AIセンターの発足で部門横断的な連携が可能になり、製品/サービスを整理/体系化したことによって、これまでにない「スピード感」が生まれたと説明する。
「AIセンターの役割は、個々の顧客に合わせてこれらのメニューを“クイックに”組み上げて、提供するということ」「顧客のやりたいことに対して、どれだけスピーディに応えられるのかがすべてだと考えている」(山田氏)
「多くの企業はまだ道半ば」顧客企業のAIジャーニー実現を支援
常務執行役員の伊藤氏は、現状の顧客企業における“AIジャーニー”の成熟度や課題について紹介した。
IBMでは、ビジネスAIの領域で多数の顧客を支援してきた実績を持つ。しかし、まだ部門単位、業務単位で考えたAI活用にとどまっているのが現状だと伊藤氏は説明する。このAI活用を全社的なものに拡大し、事業成長に寄与させていくのが次のフェーズであり、そのチャレンジも始まっているが、「多くの企業ではまだその道半ば」であるというのがIBMの認識だ。
「(部門ごと、業務ごとという)部分部分でのAI活用は実現できているものの、(企業全体で)データドリブンな企業経営を行い、データ活用で新たなビジネスを作っていくような“次の世代のAI活用”については、多くの企業がまだ悩んでいるところではないか」(伊藤氏)
データ/AI領域において、IBMではこれまでもさまざまな製品/サービスを展開してきた。たとえば、レッドハット「OpenShift」にデータ処理/AI関連のミドルウェア/ツールコンテナを組み合わせた「IBM Cloud Pak for Data」、グローバルのIBMからデータサイエンティストや機械学習の専門家を顧客企業に招き、一緒にプロジェクトを検討する「グローバル・エリート・プログラム」などがその一例だ。
ただし今回のAIセンターの強みは、それらを「ワンストップで」顧客企業に提供する点にあるという。「日本企業ではワンストップのニーズが強く、AIセンターは(グローバルのIBMではなく)日本IBMが独自に実施するもの」だと、伊藤氏は説明した。