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エデュケーション@プログラミング+第24回

グランプリ賞金50万円! 「SDLアプリコンテスト2019」最終審査会レポート

ながらスマホ厳罰化への答えが、そして未知なるモビリティ体験が、きっとここから生まれる

2019年11月28日 18時00分更新

文● 栗原祥光 編集●ASCII

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 11月22日、クルマやバイクとスマホを連携させるSDL(Smart Device Link:スマートデバイスリンク)に対応するアプリを広く募集する「クルマとスマホがつながる SDLアプリコンテスト」の最終審査会・表彰式が開催された。クルマをもっと快適に、楽しく安全なものにするアイデアが満載だった審査会の内容を、先日の速報に続いてレポートする。

 SDLは、スマホアプリをカーナビなどの車載機で使えるようにする、オープンソースの国際標準規格だ。近年問題になっており、また12月1日から厳罰化される運転中の“ながらスマホ”を排して、スマホをクルマのなかで、効率的かつ安全に利用できるようになる。今までなかった、クルマのなかでのスマホの新たな活用法が見出されるだろう。

 今回の最終審査会は、一次審査を通過した10作品を対象とする。各作品の制作者によるプレゼンテーションの後、審査員による審査を経て、グランプリ作品および特別賞3作品の発表が行われた。

一次審査を通過した10作品(発表順)

グランプリは、運転技術をチェックする「優良ドライバーチェッカー」

 グランプリに輝いたのは、チーム名“開発わかばマーク”が制作したアプリ「優良ドライバーチェッカー」だ。

「優良ドライバーチェッカー」は、SDLから得られた車載情報に加え、IoTメガネ「JINS MEME(ジンズミーム)」を用いて、運転中に首を振って後方を目視するといった安全確認動作を診断するもの。「教習所を卒業すると、どうしても運転は我流になってくる。安全な運転を心がけるきっかけになれば」という想いで開発したというこのアプリ。

 SDLだけでなく、他のデバイスと連携するという新しい試みに挑戦したことに加えて、さらなる発展性を秘めていることが、今回の受賞につながった。“開発わかばマーク”には、グランプリの副賞として、賞金50万円とヤマハの電動バイク「E-Vino」が贈呈された。

グランプリに輝いた“開発わかばマーク”の古澤氏。賞金50万円とヤマハの電動バイク「E-Vino」が贈られた

ハッカソン参加者らのサポートを受けて、グランプリを受賞

 今回、審査員からダントツの高評価を得た、「優良ドライバーチェッカー」を制作した“開発わかばマーク”の古澤貴倫氏に、受賞の感想をうかがった。

 古澤氏自身はエンジニアではないが、SDL対応アプリの開発をサポートするハッカソンに参加したことを機に、アプリ開発に着手。自らのアイデアをベースにしながらも、他の参加者やハッカソンの審査員からのアドバイスを取り入れて発展させた。実際の開発に際しては、ハッカソン関係者や知り合ったエンジニアにサポートしてもらったという。

「実はもうひとつ作品を応募しており、一次審査を通るならその作品だろうと思っていたので、そちらに力を入れていました。そのため、この優良ドライバーチェッカーは締め切り2、3週間前から開発を始めて、ハッカソンの関係者にフォローしてもらいながら、ようやく間に合わせたんです。

 JINS MEMEを利用するというアイデアについては、“婚活で相手の好感度を図る”特許を取得した際に、JINS MEMEの話が出て、それ以来、組み合わせると面白いものができるのではないかと思っていました。けれども、今回JINSさんにも色々問い合わせてサポートしていただきましたが、わからないことも多く、その点でも苦労しました」(古澤氏)

 後については「できれば何らかのかたちにつなげて、優良ドライバーチェッカーを世に送り出したい。賞金も起業資金に使いたい」という。

左折を例に、SDLとJINS MEMEが安全運転を支援する仕組みを説明する古澤氏

プログラミング教育や車への興味につながる「SDLratch」

 続いて、グランプリは逃したものの、特別賞を受賞した3チームのアプリを紹介する。

 一つ目はPizayanz H(ピザヤンズ エイチ)氏による「SDLratch(エスディーエル ラッチ)」。これは、子ども向けのビジュアルプログラミング言語「Scratch」上に、SDLとつなげる仕組みを構築したものだ。

 Scratchは、画面上でブロックをつなげてプログラミングしていくが、SDLに対応するブロックをいくつか用意して、子どもたちがつくったプログラムを実際のクルマと連動させられるようにした。例えば、車両が一定の速度になったら、車載機にイラストを表示するようなプログラムを、子どもたちがかんたんに作れるようになる。そのユニークな着眼点に、審査員の評価が集まった。

 Pizayanz H氏は「他の参加者の方はデータベースを用いるアイデアが多いなか、スタンドアロンで完結するシステムを考えてみました。小学校でもプログラミングの授業が始まりますし、自分がつくったプログラムに車が反応するって嬉しいと思うんですよね。子どもたちに、クルマやプログラミングに興味を持ってもらえればいいと思いますし、自動車ディーラーのイベントなどで使ってくれたら嬉しいですね」と語った。

子ども向けプログラミング言語「Scratch」に、SDLにつなげる仕組みを用意したPizayanz H氏。SDLアプリコンテストにキッズ部門の設立を訴えた

ドライバー同士で音楽を共有する「シェアレコ」

 続く特別賞2作品目は、チーム名“熊出没注意”による「シェアレコ」。Spotifyのストリーミング再生を利用して、ドライバーが地図上の特定箇所に楽曲を設置し、友人にシェアするというものだ。開発者の一人、市川雅明氏によると、開発の発端は「他の人が何を聴きながら運転しているのか、ふと気になったりしませんか? 運転中のオススメの音楽を、場所に応じてシェアし合えば、楽しくなるのかなと思ったんです」というところだったという。

「シェアレコ」を開発した熊出没注意の2人。音楽を通して、ドライブ中のコミュニケーションの実現を目指した点が評価された

運転しやすい道、しづらい道を共有化「ミチログ」

 最後の特別賞受賞作は、チーム名“チームK”による「ミチログ」。知らない道を走る際、そこがどういったところか事前にわかれば便利という考えから、音声認識と手動で「いいね」「わるいね」と道を評価し、その情報をドライバー同士が共有化できるアプリだ。それらに加えて、SDLで取得した急ハンドルや急減速といった車両からの情報による、その地点評価も行う。「従来のカーナビにはない機能として注目できる」という点が評価され、特別賞の受賞となった。

 開発者の一人、江崎貴也氏は「カーナビのルート通りだと、どうしても距離優先になりがちです。今後、どこかのアプリに組み込んでいただけたら嬉しい」と語った。

特別賞を受け取る、チームKの江崎氏。「ミチログ」は広島で行われたSDLハッカソンでも評価が高かった

SDLにより、今までにないカーライフが実現可能へ

 表彰式の最後に、審査員長の暦本純一氏(東京大学大学院 情報学環 教授)は、今回のコンテストの総評を語った。なお、SDLアプリコンテストは、第3回の開催が決定した。

「初回から審査員長をやらせていただいていますが、今回は作品のレベルが上がりました。社会問題、クルマの課題に向き合いながら、ちゃんとアプリケーションとしての面白さをやっているところに、感銘を受けました。もし来年キッズ賞ができると、キッズ軍団が賞を狙いに来るかもしれないので、より技術を磨いていただければと思います」(暦本氏)

 クルマとスマートフォンをつなげることが、この先当たり前になるにつれて、SDLに対応する車種やデバイス、サービスが増えていくことは間違いない。対応車種が増えれば、より開発が活発化し、SDLはさらなる盛り上がりをみせるだろう。車両情報と位置情報、そして他のデバイスをも連携させるさまざまなアプリの登場により、ドライブやツーリングはもっと楽しく、安全になり、わたしたちは今までにはなかったモビリティを体験するだろう。

左から、審査員を務めた、鈴木朋子(ITジャーナリスト)、山本昭雄(トヨタ自動車 ITS・コネクティッド統括部長)、暦本純一(東京大学大学院 情報学環教授:審査員長)、川田十夢(クリエイター、AR三兄弟長男)の各氏。コンテストの最後に、審査員がそれぞれ総評を語った

司会を務めたのは、前回の最終審査会と同じく、エンジニアとしても活躍するタレントの池澤あやかさん。エンジニア目線による的確な質問で会場を沸かせた

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