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スループットは1Gbps以上! 有線LAN卒業もアリか!?

これからはデスクトップもWi-Fi6! ASRockコラボモデルのいきさつとは

2019年11月22日 18時00分更新

文● 宮崎真一 編集● ASCII

提供: セブンアールジャパン

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 Appleの「iPhone 11」に採用されたことで一気に市場の注目を集めるようになった新世代の無線LAN規格である「Wi-Fi6」。ノートPCでもこのWi-Fi6を採用した製品が登場し始めており、自宅やオフィスのLAN環境をWi-Fi6に移行しようかと考えている人も多いのではないだろうか。

 そんな中、パソコンショップSEVENを運営するセブンアールジャパンが、マザーボードメーカーとして知られるASRockと協業し、同社のWi-Fi6モジュール「AX200」とアンテナを搭載するデスクトップPCを発売するという。果たして、そのコラボモデルとはどのようなPCなのだろうか、またコラボレーションを行うまでに至ったいきさつも気になるところだ。

ASRockとのコラボにより、Wi-Fi6を搭載したデスクトップPCを発売するセブンアールジャパンの西川氏

Wi-Fi6の実行スループットは1Gbps以上
もはや有線LANにも引けを取らない

 まずは、Wi-Fi6がどのような通信規格なのか改めて説明しておこう。Wi-Fi6はIEEE802.11axで策定された規格で、現行のIEEE802.11acやIEEE802.11nと互換性を維持している。Wi-Fi6の最大の特徴は、規格上の最大通信速度が9.6Gbpsと、IEEE802.11acの6.9Gbpsから約39%も引き上げられている点だ。さらに、実質的な転送速度となる実効スループットは、IEEE802.11nでは約800Mbpsが上限なのに対して、Wi-Fi6は1Gbps以上と、これは一般的に普及している有線LANの1000BASE-Tにまったく引けを取らないほどの高速性を備えている。

 それに加えて、Wi-Fi6では、「OFDMA」(Orthogonal Frequency-Division Multiple Access)と呼ばれる機能が用意された。これは、1つのチャンネルを複数のクライアントで共有することでチャンネルの利用効率を挙げ、データ転送速度や接続性の向上を図るというもの。つまり、1つのアクセスポイントに多くのユーザーが接続しても、Wi-Fi6であれば通信速度の低下が起こり難いというわけである。

 さらに、IEEE802.11acで実装された「MU-MIMO」(Multi User Multiple-Input and Multiple-Output)利用時の最大同時接続デバイス数は4台から8台へと倍増。そのほか、使用電波帯はIEEE802.11nと同様に2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンド仕様となっている。

 つまり、動画視聴や配信などストリーミングでの利用が増えた現在のネットワークシーンに合わせて、転送速度と接続の安定性を引き上げた新規格がWi-Fi6であると言える。

Wi-Fi6と従来規格の主な違い

IEEE802.11n IEEE802.11ac Wi-Fi6
利用する周波数帯 2.4GHz/5GHz 2.4GHz 2.4GHz/5GHz
規格上の最大通信速度 300Mbps 6.9Gbps 9.6Gbps
実効スループット 150Mbps 800Mbps 1Gbps以上
MU-MIMO利用時の最大接続数 4 8

Wi-Fi6導入のハードルは意外に低い
今無線LANを導入するならWi-Fi6がオススメ

 さて、そんなWi-Fi6だが、ノートPCはともかくデスクトップPCでは、まだあまり普及が進んでいない。そんな中、Wi-Fi6搭載デスクトップPCを発売する狙いはどこにあるのだろうか。パソコンショップSEVENを運営するセブンアールジャパン代表取締役である西川 龍氏と、中嶋孝昌氏、そしてASRock原口氏に話を伺った。

パソコンショップSEVENとASRockがコラボレーションを行ったWi-Fi6搭載デスクトップPC。ケースに置かれたアンテナが印象的だ

ZEFT G11
https://pc-seven.co.jp/spc/10552.html
直販価格 15万7800円(税別)

Wi-Fi6搭載コラボPCの主なスペック
CPU Core i9-9700K(定格クロック3.6GHz,最大クロック4.9Hz,8C8T,キャッシュ容量12MB)
CPUクーラー SilverStone PF240-ARGB-7R
マザーボード ASRock Z390 Pro4(Intel Z390)
メモリー 16GB PC4-21300(DDR4 SDRAM、8GB×2)、スロット数4のうち2スロット使用
グラフィックス GeForce GTX 1660 Ti 6GB GDDR6(2スロット使用)
ストレージ 500GB SSD(Crucial「P1 CT500P1SSD8JP」、NVMe)
有線LAN 1000BASE-T LAN
無線LAN Wi-Fi6(IEEE801.11ax、ASRock AX200)
OS Windows 10 Home(64ビット)

――今日はよろしくお願いします。まずは、Wi-Fi6搭載デスクトップPCを発売する切っ掛けはどのようなものだったのでしょうか?

西川氏 まず、弊社のデスクトップPCを購入されたお客様から、無線LANはどうやって使えばいいのかという問い合わせをよくいただきます。ノートPCやスマートフォンなどは購入してすぐに無線LANが利用できますので、20万円や30万円もするデスクトップPCにも無線LAN機能が標準で搭載されていると思われている方もいらっしゃるようです。

――確かに無線LANは、PCやスマートフォンではもはや“あって当たり前”の機能とも言えますね。

西川氏 そこで弊社では、デスクトップPCのBTOに無線LANを用意しているのですが、結構選ばれる方が多いですね。特に価格が安価なモジュールが好まれているようで、手ごろな価格で無線LAN環境を構築したいと考えるユーザーさんが多いように見受けられます。

――その流れでWi-Fi6の採用にいたったのですか?

西川氏 数年前からIntelさんのモジュールとアンテナを採用したPCを用意していまして、ユーザーさんから好評を得ていました。ですが、Wi-Fi6を始めるにあたり、モジュールとアンテナがセットで用意できるメーカーさんがなく、これまでWi-Fi6に対応したデスクトップPCを発売することができませんでした。

――Wi-Fi6を選ぶメリットとはなんでしょうか?

西川氏 そうですね。1つは、Wi-Fi6では2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンド接続を実現していますので、周囲の状況に左右されない接続の安定性が確保されている点です。あとは転送速度ですね。あまりにも有線LANと速度が違い過ぎると、無線LANであっても使い勝手が悪くなってしまいます。

ASRock ユーザーさんの印象ですと、Wi-Fiは途切れやすくて遅いというイメージがあると思いますが、Wi-Fi6は5GHz帯も利用できますので、電子レンジやスマートフォンに干渉し難い設計になっていまして、安定性はかなり向上しています。さらにWi-Fi6は、帯域も広いですし、室内で接続する限りでは、有線LANと同じようにゲームをプレイすることができます。

――確かにゲーマーなどは、速度やラグの観点から有線LAN信仰が強いですね。

西川氏 ええ。ですがWi-Fi6であれば、有線LANとそん色なく快適なプレイが実現できると思います。

――コスト的にはWi-Fi6のほうがやはり高くなってしまいますよね。

西川氏 高くなってしまうのは確かなのですが、ASRockさんとも協議しまして、ユーザーさんも納得のいく価格に絞り込めた思います。

中嶋氏 最新規格のモジュールと言えども、他の無線LANカスタマイズパーツとの価格差はそれほどありません。そのため、現時点で無線LANを付けるのであれば、将来的な無線LAN環境の移行を考慮すると、Wi-Fi6のほうがお得です。少なくとも今回のコラボPCに関して、Wi-Fi6の価格面でのハードルはあまりないと言っていいと思います。

今回のコラボPCの大きな鍵となるASRockのWi-Fi6対応モジュール「AX200」。マザーボード上のM.2スロットに実装されている

――Wi-Fi6のパフォーマンスをフルで発揮するには対応ルーターが必要になってくると思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか?

西川氏 まず、ルーターから先のインターネット接続を考えると、Wi-Fi6の転送速度をフルに発揮できる回線を個人で用意するのは難しいと思います。つぎに家庭内LANやオフィス内LANの場合、対応ルーターがないと十分な転送速度が得られないのは事実です。しかし“Wi-Fi6”は、今年から来年にかけて大きなトレンドになることは間違いないと思いますので、対応ルーターの価格はかなり安くなっていくのではないでしょうか。そういった状況を見据えて、今PCを購入するのであれば、Wi-Fi6を先取りしておくのもいいのではないかと思います。 

中嶋氏 IEEE802.11acに対応したルーターを利用されているユーザーさんは非常に多いと思うのですが、Wi-Fi6は規格上互換性を持っていますので、対応ルーターがなくても、IEEE802.11acと同等のポテンシャルを発揮します。将来的に対応ルーターに買い替えれば、Wi-Fi6でさらに高速化を望めるという点は、ユーザーさんにとって大きなメリットになるのではないかと。現時点でIEEE802.11ac環境でゲームをプレイしているユーザーさんがいらっしゃるのであれば、Wi-Fi6環境に移行するとさらにゲーム体験の幅が広がり、満足度が向上すると思います。

ASRock Wi-Fi6は転送帯域も広いですので、オンラインゲーム以外にストリームで動画を見たり、音楽を聴いたりというように同時に複数の何かを利用する際に、安定した速度が得られる点が大きなメリットです。ですが、フルのパフォーマンスを発揮するには対応ルーターが必要なのは事実です。しかし、今PCを購入すするのであれば、まずは一番ボトルネックになりやすいPCにWi-Fi6を搭載しておき、今後ルーターの買い替えを検討していったほうが、無線LAN環境の移行はスムーズに行えると思います。

――今回のWi-Fi6対応PCを発売するにあたり苦労した点はありますか?

西川氏 過去にASRockさんとは別の会社から、Wi-Fiモジュールの取り扱いを検討したこともあったのですが、この時はモジュール本体しか仕入れることができないことがわかり断念しました。ですが、ASRockさんがWi-Fi6対応のマザーボードをいち早く採用したことを知り、無線LAN搭載PCの実現の思いが再びよみがえりました。Wi-Fi6は一部上位モデルにしか搭載されておらず、単体販売をしていませんでした。そのため、今回はASRockさんには無理を聞いていただきました。その交渉が苦労した点ですかね。

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