このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

EMURGO Japan 吉田社長に聞く

カルダノのブロックチェーンをゲームとニューバランスの真贋保証に応用

2019年11月18日 06時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

カルダノを使ったニューバランスの取り組みも

── 海外ではカルダノを使ったニューバランスの取り組みがあるそうですね。

吉田 真贋保証システムにブロックチェーンを利用する試みとなります。現在カルダノで利用できるのは“セトルメントレイヤー”と呼ばれるペイメントに使うレイヤーで、スマートコントラクトのレイヤーは開発中です。ニューバランスとの取り組みは、このセトルメントメントレイヤーのみで、真贋保証ができる点が特徴です。

 具体的なイメージは以下の通りです。靴を買うと保証書の役割を果たすカードが付いてきます。靴には番号が振ってあり、モバイルアプリを使って、この番号から特殊なアドレスを生成できます(ADAアドレス)。カード(ADAカード)には、最小単位の仮想通貨(ADAはカルダノの仮想通貨)が入っています。その履歴はブロックチェーンに刻み込まれており、確かにニューバランスが送ったものだと証明できる仕組みになっています。

取材中は図で説明してくれた。左はニューバランス(NB)から発行されたADAカード。右は製品となるシューズ。シューズの番号をアプリでADAアドレスに変換。これをセットで扱うことで、ADAカードが本物と証明するシューズの番号はこれという関係をブロックチェーン上に刻める。

 靴の真贋は、このADAアドレスとADAカードのセットで保証します(このADAカードが本物だと保証している靴は、このADAアドレスを持つ商品だと関連付ける)。ここで靴自体が偽物にすり替えられたとしましょう。これ自体は可能です。ただし、仮に発行されているカードが100枚しかないとすると、本物だと証明できる商品の上限は100セットまでとなります。つまり、仮に偽物を作っても、100セット以上の商品を本物だと偽って流通させることはできません。100セットを入手して、100セットを偽物に差し替えて流通させたところで、利益にはなりません。これでは、やる意味がないですよね。

 本物のカードと偽物の商品という組み合わせ自体は作れるので完璧に真贋が保証できるわけではないですが、保証書となるカードは決まった数しか作れないため、一定の精度で真贋の保証ができます。一方、ブランド品のパッケージに入っている紙の保証書や証明書は簡単に偽物を作ることができました。紙の保証書をコピーして数を増やしたり、保証書自体の偽物を印刷することができます。

── 既存の仕組みに絞り込み、合理的な真贋保証をするということですね。

吉田 カルダノを真贋保証に導入したニューバランス商品は、「オムニ3」のうち、ロサンゼルス クリッパーズの人気バスケット選手であるカワイ・レナード選手をフィーチャーしたモデルになります。ニューバランスの取り組みはEMURGOではなく、カルダノの開発元であるIOHKとニューバランスの間で取り決められたものですが、EMURGOに対しても、すでにいくつかの問い合わせいただいています。既存の仕組みを利用して、比較的低コストに実現できる点が特徴で、マーケティング的な関連からも面白いという評価をいただいています。

2020年はカルダノにとって大きな1年になる

── 社長として2020年のビジョンをお願いします。

吉田 EMURGOは、カルダノプロジェクトの中で、カルダノの商業利用を進めていく役割を担っています。2020年はカルダノにとって大きな年なので、EMURGOにとっても重要な年になります。カルダノにおいては、今年から来年にかけてPoS(Proof of Stake)の非常に大きな山が訪れます。さらに来年の半ばもしくは下旬には、スマートコントラクトの機能がようやくリリースされます。われわれとしても、これは首を長くして待っていたチャンスです。一気にビジネスに応用できる範囲が広がりますし、カルダノの商業化を担うEMURGOの取り組みを広げられると思います。

 プレッシャーもあるのですが、やりがいもあります。カルダノのスマートコントラスト対応は関係者みんなが望んでいたところですし、そのスケーラビリティも含めた期待感もあります。ブロックチェーン業界への貢献を果たし、カルダノの存在感を高め、普及を加速させていくこと。これが2020年に向けた大きな目標ですね。

■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ