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入力ラグ軽減でPCゲームの反応速度アップ!? 「Radeon Anti-Lag」の効果を検証

2019年08月30日 14時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ

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RX 5700およびRX 590でインプットラグを検証する

 それでは今回の検証環境を紹介しよう。ビデオカードはRX 5700とRX 590の2つを準備した。GPU Boundな状況で効くのであれば、パフォーマンスの低いRX 590の方で効果があることが予想されるからだ。もちろんRX 590と最新のRX 5700でインプットラグが違うことも考えられる。今回はそのあたりをチェックしたい。

 さらに比較対象として、ZOTAC製のRTX 2070およびGTX 1660カードを準備した。厳密ではないが、パフォーマンス的に近いGeForceと比べてAnti-Lagの効き具合を調べたい。GeForceには明確にラグ対策と銘打たれている機能はないが、NVIDIAはドライバーの設定で「レンダリング前最大フレーム数(PreRender)」を「1」に固定することでAnti-Lag相当の働きになると表明している。Anti-Lagと比較して効果があるのかないのかにも注目したいところだ。

 ドライバーはRadeonは19.7.5、GeForceは431.68を使用している。マザーのBIOSはAGESA 1.0.0.2 AAB対応の「F5l」で検証している。

検証環境
CPU AMD「Ryzen 7 3800X」(8コア/16スレッド、3.9~4.5GHz)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」(AMD X570)
メモリー G.Skill「F4-3200C16D-16GTZRX」(CPU定格で運用、8GB×2)
ビデオカード AMD「Radeon RX 5700リファレンスカード」、ASRock「Phantom Gaming X Radeon RX590 8G OC」(Radeon RX 590)、ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce RTX 2070 MINI」(GeForce RTX 2070)、ZOTAC「ZOTAC GAMING GeForce GTX 1660 AMP 6GB GDDR5」(GeForce GTX 1660)
ストレージ GIGABYTE「GP-ASM2NE6200TTTD」(NVMe M.2、2TB SSD)
電源ユニット Silverstone「ST85F-PT」(850W、80Plus Platinum)
CPUクーラー Corsair「H110i」
OS Microsoft「Windows10 Pro 64bit版」(May 2019 Update)

GeForce系の場合、NVIDIAコントロールパネルにある「レンダリング前最大フレーム数」を「1」にすることで、ラグを最小限に押さえることができる

 では検証の内容を見てみよう。今回は「Apex Legends」「Overwatch」「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」「Rainbow Six Siege」の4タイトルで検証した。Anti-Lagの効果を見るために、ドライバーのデフォルトの状態、VRR(FreeSyncもしくはG-SYNC)を効かせた状態、インプットラグ対策(Anti-Lagまたはレンダリング前最大フレーム数1設定)を有効にした状態、VRRとインプットラグ対策両方を有効にした状態の4パターンでテストした。リフレッシュレートはディスプレー側最大値である240Hzとし、V-Syncはどの条件でも無効とした。各条件においてそれぞれ12回の計測を実施した。

 以下のグラフはゲーム別に、全12回の平均値を比較するためのものである。どのゲームも解像度はフルHD、画質は一番上になるように設定した。OverwatchとRainbow Six Siegeはレンダースケールを100%(ドット等倍)としている。

Apex Legendsの平均インプットラグ。トレーニングステージにおいて計測

 今回の検証で最も劇的な効果が得られたのはApex Legendsだった。RX 590環境では、Anti-LagもFreeSyncもない状態では極めてインプットラグが長いが、Anti-Lagを有効にすると3分の1近くまで短縮。ただFreeSyncを入れても同様の効果が発揮されたので、Anti-Lagの効果というよりも、今回の検証環境特有の結果ともいえる。

 とはいえ、RX 5700でもデフォルト平均31.6msからAnti-Lag有効時25.35msに短縮しているので、確かに効果はあるようだ。今回は得られたデータに対しt検定も実施した。RX 5700のデフォルトに対し、FreeSyncだけ有効にした時は“有意傾向にある”程度の結果だったが、Anti-Lagを有効にした時のp値は極めて低く(p=0.00001程度)、統計的に差があると判断できる値であった。

t検定:平均値を対象とした検定手法のひとつ。今回の場合、グループ(ビデオカード)ごとの平均値の違いを検定している

p値:統計解析の結果を解釈する際の目安。p=0.05であれば、95%の確率で(今回の場合は平均値が違うという)仮説が正しいことを示す

「Overwatch」の平均インプットラグ。トレーニングステージで“アッシュ”を操作して計測

 今回の検証で分かったことは、インプットラグはGPUのパフォーマンスと関係がある、ということだ。RX 590よりもRX 5700の方が、GTX 1660よりもRTX 2070の方がよりインプットラグが短くなる。そして同クラスのGPUならば、Radeonの方が若干インプットラグが短い傾向にある、ということも分かった。

 さらにOverwatchの場合はAnti-Lagやレンダリング前最大フレーム数の設定は大きな効果が期待できないことも分かった。各GPUのデフォルト設定に対してのt検定結果で有意と判断できたのはRX 590のみ。RX 5700のインプットラグはわずかに短縮したが、有意であるとは言えないレベル。GTX 1660およびRTX 2070も同様にt検定で有意であるとは言えない結果となった。

PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDSの平均インプットラグ。トレーニングステージでFPSモード、UMP45を利用して計測

 PUBGの傾向もほぼ同様で、統計的に有意な結果が認められたのはRX 590のみ。GeForce系のレンダリング前最大フレーム数の設定を1にしても、インプットラグはほぼ変わらない。

Rainbow Six Siegeの平均インプットラグ。シチュエーションプレイの最初のステージを利用して計測

 Rainbow Six Siegeについては、前述の通り発砲時を見分けるのが難しいサンプルが多量に見られたため、結果がバラつきやすいゲームだということをまず強調しておきたい。これまで試した3種類のゲームにおいて、GeForceはレンダリング前最大フレーム数設定の効果がほとんど見られなかったが、このゲームではレンダリング前最大フレーム数を1にした方がインプットラグが短くなる傾向が認められる。

 t検定で統計的に意味のある結果といえるのはRTX 2070でG-SYNCとレンダリング前最大フレーム数の両方を有効にした設定のみ(p=0.04)で、GTX 1660の場合は有意な傾向がありそうとかろうじて言える(p=0.09)程度にとどまっている。Radeon勢はRX 590でAnti-Lagをオンにした時に統計的に意味がありそうな結果(p=0.05)が得られたが、計測の誤差も大きいので積極的に効果絶大と言うのは避けたいところだ。

Radeonの描画性能が低いモデルなら、より高い結果が期待できる?

 以上でAnti-Lagの検証は終了だ。計測の手間の割に曖昧な評価が多くて少々落胆した部分はあるものの、Apex LegendsやPUBGなどでは何もしていない状態に比べ、Anti-Lagをオンにすればインプットラグが統計的に意味のあるレベルで低くなったことが分かった。

 ただAnti-LagはどんなRadeonでも使える機能だが、今回の観測範囲ではより性能の低いRX 590で効きやすい傾向が見られた。これはGPU Boundな状況で効くというAMDの主張と一致する。Anti-LagをオンにしたRX 590のインプットラグよりも、Anti-LagをオフにしたRX 5700のインプットラグの方が断然短いことも確認できた(GTX 1660対RTX 2070でも同傾向)。高リフレッシュレートディスプレーを活かせる状況下では、Anti-Lagよりも素のGPUパワーが効くことが示された、といっていいだろう。

 まだ試せていないゲームも数多くあるし、ディスプレーもリフレッシュレート60Hz環境では試していないなど、どういう状況でAnti-Lagが有効なのかは全体像を掴めていない。あくまで今回観測した範囲では“統計的に意味のあるデータがとれなかった”ものもあるため、Anti-Lagはあくまでゲームを少し快適にする(かもしれない)機能のひとつに過ぎない、としか言えない。

 だが冒頭で述べた通り、ゲームの優位を作り出すのは努力と地道な効果の積み重ねである。Anti-Lagもその努力の一つとカウントしてよいのではないだろうか。

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