さとうなおきの「週刊アジュール」 第108回
Azure App Service on LinuxのBasicプランで66%割引のキャンペーン価格
VMを同一データセンター内に配置する「近接通信配置グループ」がプレビューに
2019年08月20日 16時00分更新
こんにちは、さとうなおきです。「週刊アジュール」では、2019年7月14日~2019年7月20日の1週間に発表されたMicrosoft Azureの新機能から、筆者の独断と偏見で選んだトピックについて紹介していきます。
Azureの信頼性の進展
Azure CTOのマーク・ルシノビッチが、Azureの信頼性の現状についてまとめているので、ご一読ください。
Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure
「Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure」は、クラウドで成功するために必要なビジネス/テクノロジ戦略の作成、実装を支援する、実証済みのガイダンスです。
Microsoft Cloud Adoption Framework for Azureは、以前から「Azureアーキテクチャセンター」で公開されていましたが、今回、新たにウェブページが公開されました。
Azure Virtual Machines:48 vCPUのVMサイズ、近接通信配置グループ
IaaSの仮想マシン(VM)機能を提供するAzure Virtual MachinesのDv3、Dsv3、Ev3、Esv3、Fsv2、Lsv2シリーズに、これまで提供されていた32 vCPU、64 vCPUの中間に位置する、48 vCPUのVMサイズが追加されました。
Azure Virtual Machinesで、「近接通信配置グループ」(proximity placement groups)のパブリックプレビューが始まりました。
近接通信配置グループは、VM間のネットワークレイテンシを短縮するための、VMの論理グループ作成機能です。同じ近接通信配置グループ内に配置されているVMは、同一のデータ センター内に配置されます。
1つのリージョンには複数の可用性ゾーン(AZ)が含まれており、1つの可用性ゾーンには複数のデータセンターが含まれる場合もあります。そのため、同一のリージョン、同一の可用性ゾーンへのデプロイでは、一連のVMのデプロイ先が複数のデータセンターにわたる可能性があります。一方、近接通信配置グループでは、その可能性はありません。
現時点では、近接通信配置グループは、東日本、オーストラリア東部、インド中部を除くすべてのリージョンで利用可能です。
- 更新情報「近接通信配置グループのプレビュー開始」
- ブログポスト「近接通信配置グループの概要」
AzureネットワークMSPパートナープログラム
「Azureネットワークマネージドサービスプロバイダー(MSP)プログラム」が発表されました。これは、企業のお客様がAzure上のミッションクリティカルなアプリケーションを接続、運用、スケーリングできるようにする、マネージドクラウドネットワークの付加価値サービスを提供するパートナーを対象としたプログラムです。
AzureネットワークMSP パートナープログラムでは、ネットワークに特化したMSP、ネットワーク通信事業者、システムインテグレーター(SI)などのパートナーが、ネットワークに関する豊富な経験を活用して、Azureネットワークサービスを中心としたクラウド/ハイブリッドネットワークサービスを提供することができます。
Azure Virtual Network:IPv6
仮想ネットワーク機能を提供するAzure Virtual Networkで、4月に、IPv6のサポートがパブリックプレビューになっていました。
今回、このIPv6サポートに、次の新機能が追加されました。
- IPv6パブリックロードバランサー(IPv6正常性プローブ、アウトバウンド規則、複数のフロントエンド構成)
- インスタンスレベルパブリックIP
- Azure Portalでの、デュアルスタック(IPv4/IPv6)仮想ネットワークとサブネット、IPv6ネットワークセキュリティグループ規則、IPv6ユーザー定義ルート、IPv6パブリックIPの作成/編集/削除
詳細は、次のページをご覧ください。
Azure Resource Graph:GA
Azure Resource Graphは、Azure Portal、Azure CLI、Azure PowerShellで、Azureリソースをクエリする機能です。
Azure Resource Graphが、一般提供(GA)になりました。
Azure Security Center:ネットワークの推奨事項
Azure Security Centerは、Azureリソースのセキュリティの可視化と制御を行うサービスです。
Azure Security Centerで、新しいネットワークの推奨事項が追加され、既存のネットワークの推奨事項も改善されました。
Azure App Service:Linux向けBasicプランのキャンペーン価格
Azure App Serviceは、ウェブアプリ、ウェブAPI、モバイルバックエンドをホストするためサービスです。
Azure App Serviceで、5月のBuild 2019カンファレンスで導入されたLinux向け無料プランに続いて、Linux向けBasicプランに66%の割引が適用されるキャンペーン価格が導入されました。このキャンペーン価格は、2019年12月31日まで適用されます。
- 更新情報「Basic Linux App Service プランのキャンペーン価格のご紹介」
- ブログポスト「Making it easier to bring your Linux based web apps to Azure App Service」
Azure Kubernetes Service (AKS):可用性ゾーン
Azure Kubernetes Service (AKS)は、マネージドKubernetesサービスです。
Azure Kubernetes Service (AKS) の可用性ゾーン(AZ)サポートが、プレビューになりました。
現時点では、東南アジアリージョンなど、一部のAzureリージョンのみで利用可能です。
Azure Monitor:Azure Monitor for containersのPrometheus統合
Azure Monitorは、Azureにおけるフルスタックの監視サービスです。
Azure Monitor for containers(コンテナーに対する Azure Monitor)は、Azure Kubernetes Service (AKS)、Azure Container Instances上のコンテナーを監視する機能です。
人気の高いオープンソースのメトリック監視ソリューションであるPrometheusの、Azure Monitor for containersとの統合が、プレビューになりました。次の機能がサポートされています。
- Azure Monitorを使用して、Prometheusメトリックを収集する
- Prometheusメトリックと、Azure Monitor for containersによって収集されるその他のメトリックを併用して、AKSクラスターに関するエンドツーエンドの監視ビューを取得する
- Prometheusメトリックを視覚化し、アラートを作成する
詳細は、次のページをご覧ください。
- 更新情報「Azure Monitor for containers と Prometheus の統合のプレビュー開始」
- 更新情報「Azure Monitor for Containers with Prometheus support for AKS engines is now in preview」
- ブログポスト「Azure Monitor for containers with Prometheus now in preview」
Azure Container Registry:正常性チェック、ACRタスクのスケジュール設定
Azure Container Registryは、コンテナーイメージを格納するプライベートレジストリのサービスです。
Azure CLIで、Azure Container Registryの正常性チェックがサポートされました。最も一般的な接続の問題をテストし、環境の正常性に関する情報を取得できます。
ACRタスクでは、コンテナーイメージのビルド、CI/CDソリューションでの検証テストの実行、ルーチンタスク(古いイメージの消去など)を行えます。このタスクは、Gitコミットや基本イメージの更新でトリガーできます。
古いイメージの自動消去、自動テストなど、自動化されたジョブに対応するために、ACRタスクのスケジュール設定がサポートされました。
Azure DevTest Labs:リモートデスクトップゲートウェイ
Azure DevTest Labsは、VMベースの開発/テスト環境の用意を容易にするサービスです。
Azure DevTest Labsで、RDPポートを公開せずにVMに安全にアクセスできるように、リモートデスクトップゲートウェイを構成できるようになりました。
Azure Cognitive Services:Video Indexerのカスタム言語モデル
Azure Cognitive Servicesは、画像認識、音声認識、自然言語処理といった、AIを活用したAPIサービスです。
Azure Cognitive Servicesの1サービスである「Video Indexer」は、ビデオに対して、書き起こし、顔認識、文字認識、主要フレーム抽出、感情分析、翻訳といった機能を提供するサービスです。
Video Indexerは、カスタム言語モデルをサポートしています。
今回、カスタム言語モデルで、次の新機能がサポートされました。
- トランスクリプトの更新を使った、カスタム言語モデルの改善
- 字幕ファイルを使った、カスタム言語モデルの改善
詳細は、次のページをご覧ください。
Azure Bot Service:Direct Line Speechチャネル、Direct Line App Service Extensionなど
Azure Bot Serviceは、チャットボットの開発フレームワーク「Microsoft Bot Framework」ベースのチャットボットをホストするためのサービスです。
- ボットに音声サポートを追加する、Direct Line Speechチャネル(プレビュー)
- Direct Lineを独自の仮想ネットワークにデプロイする、Direct Line App Service Extension
- Bot Framework SDK 4.6(プレビュー):アダプティブダイアログをアップデート
- Bot Framework Python SDKをアップデート
- Bot Framework:新しい単体テスト機能
- Bot Framework:Bot Inspector
- Bot Framework:OAuthでエンタープライズアプリにシングルサインオンを行うウェブチャットのサンプル
- 仮想アシスタントソリューションアクセラレータのアップデート
詳細は、次のページをご覧ください。
Azure SQL Database:UTF-8サポート
Azure SQL Databaseは、SQL Serverベースのリレーショナルデータベースサービスです。
Azure SQL Databaseで、既存のUTF-16のサポートに加えて、UTF-8のサポートがプレビューになりました。
Azure Database for MariaDB:リージョン間読み取りレプリカ
Azure Database for MariaDBは、MariaDBベースのリレーショナルデータベースサービスです。
Azure Database for MariaDBで、マスターサーバーがあるAzureリージョンとは別の任意のAzureリージョンに最大5つの読み取りレプリカを作成できる、リージョン間読み取りレプリカのパブリックプレビューが始まりました。
Azure Database for PostgreSQL/MySQLでは、5月に、リージョン間読み取りレプリカがパブリックプレビューになっていました。
Azure Cosmos DB:.NET/JavaScript/Java V3 SDK、Cassandra API向けJava SDKドライバー拡張機能
Azure Cosmos DBは、複数のデータモデル/APIをサポートしたグローバル分散型のNoSQLデータベースサービスです。
Azure Cosmos DBの.NET、JavaScript、Java向けのV3 SDKが、GAになりました。これらのSDKは、前回紹介した新しいガイドラインが適用されたAzure SDKです。
- 更新情報「Azure Cosmos DB .NET V3 SDK の一般提供開始」
- 更新情報「Azure Cosmos DB JavaScript V3 SDK の提供開始」
- 更新情報「Azure Cosmos DB Java V3 SDK の提供開始」
- ブログポスト「開発者向け新機能: Azure Cosmos DB .NET SDK v3 の提供開始」
Azure Cosmos DB Cassandra API向けのJava SDKドライバー拡張機能が、プレビューになりました。このドライバー拡張機能によって、Azure Cosmos DB Cassandra APIでレート制限を処理するための開発者向け再試行ポリシーが提供されます。
Azure Database Migration Service:MongoDBからのオフライン/オンライン移行
Azure Database Migration Serviceは、データベースのAzureへの移行を支援するサービスです。
Azure Database Migration Serviceで、2018年12月に、MongoDBからAzure Cosmos DBへのオフライン移行がプレビューに、2月に、MongoDBからAzure Cosmos DBへのオンライン移行がプレビューになっていました。
今回、MongoDBからAzure Cosmos DBへのオフライン移行、オンライン移行が、GAになりました。
- 更新情報「MongoDB から Azure Cosmos DB へのオンラインおよびオフライン移行の提供開始」
- ブログポスト「MongoDB to Azure Cosmos DB online and offline migrations now generally available」
Azure Data Lake Storage:マルチプロトコルアクセス
Azure Data Lake Storageは、スケーラビリティ、パフォーマンス、コスト効率に優れたビッグデータ分析向けのデータレイクソリューションです。
Azure Data Lake Storage Gen2で、「マルチプロトコルアクセス」がパブリックプレビューになりました。
マルチプロトコルアクセスでは、Azure Blob Storage API、Azure Data Lake Storage Gen2 APIを使って、同じデータを管理できます。これによって、Azure Blob Storageの機能であるスナップショット、ソフト削除、データ階層化、ロギングなどを、Azure Data Lake Storage Gen2のファイルシステムでも利用できるようになります。
現時点では、このプレビューは、米国西部2、米国中西部リージョンでのみ、利用可能です。
- 更新情報「Azure Data Lake Storage のマルチプロトコル データ アクセスの公開プレビュー開始」
- ブログポスト「サイロ バスティング 2.0 - Azure Data Lake Storage のマルチプロトコル アクセス」
Azure Stream Analytics:Azure Event Hubs統合、Azure Data Lake Storage Gen 2出力、Parquetフォーマットなど
Azure Stream Analyticsは、リアルタイムストリーム処理サービスです。
Azure Event Hubsは、スケーラブルなイベント受信サービスです。
Azure Stream Analyticsで、次の新機能がサポートされました。
- Azure Event HubsとAzure Stream Analyticsのワンクリック統合(プレビュー)
- 新しいMATCH_RECOGNIZE関数によるパターンマッチング
- 期間を定義しないOVER句での集計(SUM、COUNT、AVG、MIN、MAXなど)
- Azure Data Lake Storage Gen 2への出力(プレビュー)
- Apache ParquetフォーマットでのAzure Blob Storage、Azure Data Lake Storage Gen 2への出力
- Azure Blob Storageへの出力での、マネージドIDベースの認証(パブリックプレビュー)
詳細は、次のページをご覧ください。
- 更新情報「Event Hubs からワンクリックで Stream Analytics と統合」
- 更新情報「Stream Analytics でパターン マッチング関数が利用可能に」
- 更新情報「Stream Analytics で集計による分析が利用可能に」
- 更新情報「Stream Analytics での Azure Data Lake Storage Gen 2 への出力のサポート」
- 更新情報「Azure Stream Analytics で Apache Parquet 形式のネイティブ サポート開始」
- 更新情報「Stream Analytics で Parquet 形式のネイティブ サポート開始」
- 更新情報「マネージド ID を使用して、Azure Blob Storage に対して Stream Analytics エグレスを認証する」
- ブログポスト「Stream Analytics の新機能 - ビッグ データ アプリケーションの開発時間を短縮」
- ブログポスト「Azure Stream Analytics now supports MATCH_RECOGNIZE」
Azure Sphere:19.07
Azure Sphereは、インターネット接続デバイス向けの組み込みの通信、セキュリティ機能を備えた、セキュアなアプリケーションプラットフォームです。Azure Sphereの認定を受けたパートナー企業のMCU(マイクロコントローラー)、LinuxベースのIoT専用セキュアOS「Azure Sphere OS」、Azureのセキュリティサービス「Azure Sphere Security Service」の3つで構成されています。Azure Sphereは、現在プレビュー中です。
6月にリリースされていた19.06に続いて、Azure Sphere 19.07のパブリックプレビューがリリースされました。このリリースでは、バグ修正、脆弱性CVE-2019-5436への対応が行われています。
- 更新情報「Azure Sphere 用更新プログラム 19.07 のパブリック プレビューの提供を開始 (評価用)」
- 更新情報「Azure Sphere (プレビュー) に対する最新の更新プログラムが Retail フィードで提供開始」
それでは、また来週。
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