会社の規模が驚くほど拡大していったHP
業界に多大な影響を与えた現存メーカー HP編で前回は1970~1980年あたりまでを紹介したが、そもそも1961年から1970年までの20年間にHP社の規模がどのくらい大きくなったのかをまとめたのが下表である。
1961年から1970年までの業績 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | 売上 | 純利益 | 売上成長率(前年比) | |||
1961 | 9400万ドル | 600万ドル | 56.1% | |||
1962 | 1億1800万ドル | 800万ドル | 25.5% | |||
1963 | 1億2300万ドル | 800万ドル | 4.2% | |||
1964 | 1億3500万ドル | 1000万ドル | 9.8% | |||
1965 | 1億6500万ドル | 1400万ドル | 22.2% | |||
1966 | 2億500万ドル | 1700万ドル | 24.2% | |||
1967 | 2億4500万ドル | 2000万ドル | 19.5% | |||
1968 | 2億7200万ドル | 2100万ドル | 11.0% | |||
1969 | 3億2700万ドル | 2600万ドル | 20.2% | |||
1970 | 3億5400万ドル | 2300万ドル | 8.3% | |||
1971 | 3億7800万ドル | 2400万ドル | 6.8% | |||
1972 | 4億8300万ドル | 3900万ドル | 27.8% | |||
1973 | 6億7300万ドル | 5100万ドル | 39.3% | |||
1974 | 8億9300万ドル | 8400万ドル | 32.7% | |||
1975 | 9億9000万ドル | 8400万ドル | 10.9% | |||
1976 | 11億2400万ドル | 9100万ドル | 13.5% | |||
1977 | 13億7400万ドル | 1億2200万ドル | 22.2% | |||
1978 | 17億5100万ドル | 1億5300万ドル | 27.4% | |||
1979 | 23億6100万ドル | 2億300万ドル | 34.8% | |||
1980 | 30億9900万ドル | 2億6900万ドル | 31.3% |
連載512回で1960年までの売上を記載しているが、1960年が6000万ドル程度、これが1980年には31億ドルに達しているわけで、この20年の平均成長率(CAGR)は8.3%にも達している。
年度別でみると、1961年の50%を初めとして、10%以上の成長率を記録したのが16年、うち12年は20%を超える成長率となっており、本当に驚くほどに同社が規模を拡大していったのがわかる。
当然これにあわせて人員も増えている。1960年の年次報告を見ると、1960年だけで500人を追加採用し、合計で3500名の従業員となり、うち2600人が親会社(HP本体)だったのが、1970年には合計で1万6000人(うち海外子会社が3370名)、1980年には合計でほぼ5万7000人(うち米国内が4万2000人)となっている。20年で16倍もの人員になっているわけだ。
当たり前であるが、売上の主体も次第に変わっていった。年次報告では1960年代まで部門別(製品カテゴリー別)の売上比率が掲載されていないので不明だが、1971年以降は大きく4つにカテゴリー分けした形で部門別売上が年次報告に掲載されている。これをまとめたのが下表である。
1971年以降の部門別売上 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
年度 | Electric data products | Electric Test & measurement products | Medical electronic equipment | Analytical instrumentation | ||
1971 | 9600万ドル | 2億2900万ドル | 3300万ドル | 1700万ドル | ||
1972 | 1億5600万ドル | 2億5900万ドル | 4300万ドル | 2200万ドル | ||
1973 | 2億5600万ドル | 3億2100万ドル | 5600万ドル | 2900万ドル | ||
1974 | 3億7200万ドル | 3億9700万ドル | 7500万ドル | 4000万ドル | ||
1975 | 3億8700万ドル | 4億4500万ドル | 9600万ドル | 5400万ドル | ||
1976 | 4億7100万ドル | 5億100万ドル | 1億1800万ドル | 6000万ドル | ||
1977 | 6億100万ドル | 6億1700万ドル | 1億3500万ドル | 8000万ドル | ||
1978 | 8億900万ドル | 7億8700万ドル | 1億7100万ドル | 1億800万ドル | ||
1979 | 11億5400万ドル | 10億4900万ドル | 1億9600万ドル | 1億2800万ドル | ||
1980 | 15億200万ドル | 12億3000万ドル | 2億5000万ドル | 1億5800万ドル |
HPの各部門 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
部門 | 概要 | |||||
Electric data products | コンピュータ部門であるが、HP 3000シリーズなどだけでなく電卓やHP 85のような小型マシン、さらにはCRTやレーザープリンターなど、コンピューターに関係するもの一式がここに含まれる。 | |||||
Electric Test & measurement products | 1970年代の途中まではTest, measureing and related itemといった名称になっていたが、HPの屋台骨であった計測機器部門である。 | |||||
Medical electronics equipment | 医療向け電子機器(心電図や超音波診断器など各種)を扱う部門。 | |||||
Analytical instrumentation | これも広義には計測ではあるのだが、たとえば化学プラントなどにおけるガス/液体の成分分析やサンプリング、研究所向けの機器といった、Electric Test & measurement productsとはやや系統の異なる計測機器関連を扱う部門。 |
上の表のままだと比率がわかりにくいと思うので、毎年の売上に占める各部門の比率をまとめたのが下のグラフである。
1971年の段階では、同社の屋台骨はまさしくElectric Test & measurement productsが占めており、Electric data productsは25%ほどで、柱の1本ではあるものの、大きな比重とは言えなかった。
ところがその後、同部門は急速に伸びていき、1978年には逆転。1980年の段階では売上の半分近くをElectric data productsが占めるという状況になる。
表でもわかるとおり、Electric Test & measurement productsも毎年順調に伸びており、1980年には12億ドルを超える売上を立てているので、こちらの伸びも決して悪くないのだが、Electric data productsはさらに大幅な伸びを示したということである。
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