RPAというとデスクトップ業務の自動化の事例がよくみられるが、エンタープライズ向けRPAの英Blue Prismが取り組んでいるのがAIとの組み合わせだ。同社が5月、米フロリダ州オーランドで開催した年次イベント「Blue Prism World 2019 Orlando」ではその可能性を垣間見ることができた。
新しいビジネスプロセスを試せるコネクテッドRPA
Blue Prismは2001年創業のRPAベンダー。RPA(Robotic Process Automation)という言葉を編み出した古参企業だが、差別化を図るべく2019年はじめに「コネクテッドRPA」というコンセプトを打ち出している。そこでは主にAIなどの新技術との連携を進めることで、単にルーティンな作業を自動化するのではなく、新しいビジネスプロセスを自由に試すことができるプラットフォームを目指している。
コネクテッドRPAで重要になるのは、「Blue Prism Digital Exchange(DX)」とする拡張機能のマーケットプレイスだ。DXは2018年秋にローンチし、OCRのABBYYなどさまざまなサードパーティから拡張機能が提供されている。ユーザーは600以上の企業から3000人以上に及ぶとのこと。アダプタを利用してBlue Prismプラットフォームに組み込むことができる。
技術戦略担当トップのColin Redbond氏は、「技術のコンシューム(使用、消費)を簡単にする。スキルのダウンロード、プロセスへの統合を3クリックでできるようにする」と述べ、創造的なビジネスプロセスの設計と実装が簡単になるとした。
RPAの拡張の中で、Blue Prismがスポットを当てるのがAIの活用だ。デモでは、映画祭の会場前のレッドカーペットを歩くセレブを捉えた動画から顔を認証し、その人に関する情報を収集するという作業を自動化したロボットを見せた。利用したのはMicrosoftの画像分析技術である「Microsoft Azure Computer Vision API」とセレブ情報データベースサービスIMDbで、Blue Prismの「Process Studio」を使ってプロセスに組み込んだ。コードなしに作成できる上、ログが残るために時間が経過しても古いプロセスをどのように構築したのかなどを見ることができるのも特徴だ。
説明したChieng Moua氏(イノベーション担当バイスプレジデント)は、「無限のユースケースがある。すでに多数のユースケースがあるバックオフィスはもちろん、SAPからOracleにマイグレーションするなどのデータマネジメント、フロントオフィスも新しい事例が出てきている」という。
上記の動画からの顔認識はフロントオフィスの例となる。警備や保安サービスでのニーズが高いというが、動画からの認識としては、IBM Watsonのコンピュータビジョン技術を使った例も紹介した。水道などの重要インフラのメンテナンスの自動化で、人間がなかなか行けないところにドローンを飛ばしてパイプの動画を取得、Watsonを使って状態を分析して破損があれば担当者にメールなどで知らせるというロボットだ。
現場を理解している人が問題を解決できるプラットフォームへ
外部のAIの活用に加え、Blue Prism自身もAIの機能を開発している。4月に発表した「Blue Prism Decipher」は請求書データを読み込み重要な情報を検出して自動入力してくれるという機能だ。Redbond氏によると、パートナー企業の技術を使ってDecipherのワークフローをさらに拡張することも可能という。
Blue Prismは先にAI Labs(AI研究所)を立ち上げており、博士号を持つAIの専門家を起用し、AIがプロセスにもたらす可能性やRPAプラットフォームへの組み込みについて研究も進めている。こうした取り組みでBlue Prismが目指すのは、「アジャイルなオペレーション」をRPAで実現することだ。共同創業者兼CTOのDave Moss氏は、「顧客に近い人、オペレーションを担当している人――つまり、現場を理解している人が自分がやりたいことを記述して問題を解決するプラットフォームの構築」とBlue Prismのビジョンを説明した。