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麻倉怜士の「MIPTV 2019」レポート 第1回

日本のテレビ番組は世界に通じるのか? カンヌで見た「日本ドラマの実力」(前編)

2019年05月14日 09時00分更新

文● 麻倉怜士 編集ASCII

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(2)日本のテレビドラマがカンヌシリーズでノミネート

 ヨーロッパへのドラマ進出ではカンテレ(関西テレビ放送)の6話連続ドラマ『潤一(じゅんいち)』も大いに話題を呼んだ。MIPTVと併催のカンヌ国際シリーズフェスティバル「CANNESERIES|Festival International des Séries de Cannes」のコンペティション部門の正式出品作品に日本ドラマとして初めて選出されたのだ。

4月7日にパレ・デ・フェスティバル・コングレ大劇場での試写後の関係者挨拶。

 有名なカンヌ映画祭は映画対象だが、カンヌシリーズは、世界の連続ドラマを対象とする。各国から応募されたドラマの中から10作品がノミネートされ、作品賞、主演賞……などの各賞が選出される。運営はMIPTVとは独立して組織で行われているが、MIPTVと同時開催することで、ノミネート作品の国際流通を促進する狙いもある。2018年に始まったばかりのコンペティションだが、早くも国際的な評価を得つつある。

カンヌシリーズは大々的にPRされていた。パレ・デ・フェスティバル・コングレ。

 昨年は、前述した日テレ『Mother』の韓国リメイク版がノミネートされた。今回は正真正銘の日本ドラマ『潤一』だ。原作は、直木賞作家・井上荒野による第11回島清恋愛文学賞受賞作『潤一』。ミステリアスな青年・潤一が、16歳から62歳までの6人の女性の前にふと現れ、何らかの関係を持ち、ふと消えていくという、刹那の愛を描いた連続短篇集を映像化した6話シリーズだ。結果は残念ながら入賞には至らなかったが、正式ノミネートされたことで、今後に大きな成果が期待できそうだ。

日本ドラマ『潤一』のスタッフ、キャストがピンクカーペットに。

 筆者は、4月7日にパレ・デ・フェスティバル・コングレ大劇場で実施された試写に参加した。第1話「出産をひかえた妊婦、映子」、第3話「亡くなった夫の不倫を疑う未亡人」の2編が上映された後の、観客からの暖かい拍手が印象的であった。私が聞いた会場での感想は、ストーリーのユニークさ、女性の心理描写に対する評価、テレビドラマの枠を超えた映画のようなつくりや映像美など、普通のドラマとは違った作品であるという声が多かった

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